相場復習ノート
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ダウ、過去最大の下落。“金融崩壊”の悪夢が再来する?

いったんは落ち着きを取り戻したかに思われていた世界の株式市場に、再び激震が走りました。9月29日(現地時間)、米議会で金融安定化法案が否決されたためです。それを受け、NYダウが過去最大の下げ幅を記録、30日の日経平均株価も大幅安で寄り付きました。


今回は、緊急レポートとして、このニュースの解説をお届けしたいと思います。

NYダウ、過去最大の下げ幅を記録

29日のニューヨーク市場のダウ工業株30種平均は、前週末比777ドル68セント(6.98%)安で取引を終え、05年10月27日以来の安値を記録しました。777ドルという下げ幅は、同時多発テロ発生時などを上回り過去最大です。


なぜここまで大きく下げたのか。その原因は、前週末の米政府と議会幹部の協議で、可決されるであろうと予想されていた金融安定化法案が、米下院で否決されたことです。


29日の午前7時、ブッシュ大統領は「金融安定化法案は金融システム危機が経済全体に波及することを避けるのに役立つ」「早急な法案通過が金融市場に強いシグナルを送る」と表明。それを受け、同法案が可決されるという予測が強まっていました。


しかし、13時すぎに米下院で投票が始まり、13時半すぎに反対票が予想以上に多いことが伝わると、法案通過が不透明であるとの見方が強まり、ダウは一気に700ドル超下げました。そして、同法案は否決され、その影響が米株式市場のみならず、世界中に波及することとなったのです。


30日の東京市場では、日経平均株価が大幅安で寄り付いた後、一時は、1万1,160円まで値を下げ、年初来安値を更新。全面安の展開で、前日比544円安の1万1,199円で午前の取引を終えました。


金融安定化法案の否決は、11月の選挙を控え、税金の投入に対して慎重になった議員が予想以上に多かったことが原因とみられています。ブッシュ大統領は「下院での法案否決に失望」と述べ、ポールソン米財務長官やブラウン英首相なども失望の念を表明しています。

金融機関の救済に税金を投入すべきか?

金融機関の救済に関しては、「税金を投入し、なぜ金融機関を救う必要があるのか」という命題が持ち上がります。かつての日本も同様です。


税金は国民が働き、稼いだ中から納める貴重なお金。公的資金を投入するというのは、その貴重なお金を使うことです。私がUFJグループに所属し、公的資金を受け入れたときは、グループ社員に対して「飲み屋などで騒がないように」というお達しが出ていました。


当時は、取材の際も冒頭に「UFJグループが国民の方々にご心配をおかけして申し訳ございません」と陳謝してからディスカッションに移る、という流れになっていました。


日本の場合は03年に公的資金投入が決まり、結局は51兆円が投入されました。しかし、もっと早い段階から公的資金投入の重要性を説いていた政治家がいました。総理大臣および大蔵(財務)大臣を歴任した故宮沢喜一氏です。


宮沢氏は92年から、公的資金を投入しなければ大変なことになると訴えていましたが、その声はかき消されてしまったのです。もし、傷の浅い早いうちに公的資金を投入していたらどうなったか…。


もちろん、「たられば」の話ですので、誰にも答えは分かりません。ただ、公的資金の重要性に気づきながらも、国民の意向・反応を考え、なかなか踏み切れなかったという経緯があったことは事実です。


私は今回のサブプライム問題に端を発する金融危機からの脱却のためには、最終的には公的資金の投入が必要になるであろうと、様々な媒体を通じてお伝えしてきました。


しかし、結果として法案は否決され、ポールソン財務長官の打ち出した、公的資金投入による不良資産買い取りを柱とする金融安定化策は暗礁に乗り上げる形となりました。

未曾有の金融危機、バフェット氏から学ぶべきこととは?

今回の金融安定化法案の否決により、米国の、そして世界のマーケットが再び危機的な状況に陥ったことは確かです。


たとえば、米金融大手各社の29日の株価を見てみましょう。シティグループは前週末比約12%安、メリルリンチの買収を決めたバンク・オブ・アメリカ(バンカメ)は同17%安、JPモルガン・チェースも同約15%安と、軒並み大きく値下がりしています。


確かに危機は危機です。しかし、歴史を振り返り、その教訓を活かしながら今の動きを見ると、違った見方も可能になります。


かつて日本でも、りそなホールディングス(8308)が国有化された03年5月前後、財務体質に問題のなかった三菱東京フィナンシャル・グループ(当時)の株価も大幅に下落しました。健全であるはずの金融機関も、不健全な金融機関と同様に株価が下落してしまったのです。


米国で今起こっているのも同様のことだと考えられます。


日本の歴史を振り返れば、「健全な金融機関ですら、全体に引っ張られて大きく下がった。これからも大きく下がるのではないか」と捉えることもできるでしょう。一方で、その後の株高の展開を踏まえ、この危機を好機と捉えることも可能です。


実際、米国の今の危機的な状況を好機と捉えている人物がいます。それは、世界一の資産家となった投資家ウォーレン・バフェット氏です。


バフェット氏は、ゴールドマン・サックスが発行する50億ドル分の優先株を購入し資本参加することを決めました。その際、米経済専門テレビCNBCとの電話インタビューで、「ゴールドマンを信頼している」と語りました。


私はバフェット氏に近い考えを持っています。そして、すでに経験した日本の金融危機の状況に照らし合わせて、リーマン破たんの直後から米金融機関、とりわけ財務体質が良好であり、米当局とも近いバンカメ、JPモルガン、シティグループは「投資妙味が高いのではなか」と様々な機会にお伝えしてきました。


意見の分かれるタイミングでしょう。パニックに押しつぶされてしまう投資家も続出する可能性があります。だからこそ、過去を振り返り、理論武装してマーケットに接することが必要なのだと考えます。

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プロフィール

木下晃伸(きのしたてるのぶ)

経済アナリスト、フィスコ客員アナリスト。1976年愛知県生まれ。南山大学法学部卒業後、中央三井信託銀行、三菱UFJ投信などを経て、現在は株式会社きのしたてるのぶ事務所代表取締役。(社)日本証券アナリスト協会検定会員。著書『日経新聞の裏を読め』(角川SSコミュニケーションズ)発売中。

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マネー誌「マネージャパン」ウェブコンテンツ。ファンドマネジャー、アナリストとして1,000社以上の上場企業訪問を経験した木下晃伸が株式投資のヒントを日々のニュースからお伝えします。「株式新聞」連載をはじめ雑誌掲載多数。

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