今週の解答
[ニュースに関する問題]
ゼロ金利政策の解除が秋以降に実施されると言われています。これにより最も株価が下がると予想される業種はどれでしょう?
(1)電力
政府が経済の舵取りをする方法に、大きく分けて財政政策と金融政策とがあります。財政政策では税金と公共投資とが大きな柱で、政府が直接その増減を担当します。一方の金融政策は中央銀行(日銀)が担当し、通貨の流通量と金利とで調整します。バブル崩壊後は景気を持ち直すために、金利を下げることと通貨の流通量を増やす(=通貨の量的緩和)試みとがなされました。量的緩和はこの春にいったん終わり、極限のゼロまで下げた政策金利はこの秋にも引き上げられる見通しとなりました。
金利が引き上げられると、企業の負債コストが上昇します。企業の負債コストは反対側から見ると、銀行の貸出金利収入ですから、その上昇は銀行の売り上げ増に通じます。銀行にも負債コストがありますが、利ざやビジネスですから、金利上昇は収益にプラスです。金利上昇が収益のマイナス要因となるところは有利子負債の大きなところなのです。
一般に電力やガス会社は有利子負債が大きいと言われています。東京電力のホームページを調べると、社債が4兆9052億円、長期負債が1兆3727億円、流動負債が2兆3298億円あります。これだけの借金をして当期利益の3103億円を上げています。流動負債の内訳が書いてないので省いても、社債+長期負債で6兆2779億円あります。政策金利1%の上昇が、そのまま負債コスト1%の上昇につながるわけではありませんが、金利負担が1%上昇すると、628億円の負担増となります。20%の収益圧迫要因です。
小売では、セブン&アイ・ホールディングスのホームページを調べました。社債、長短負債、CP(コマーシャルペーパー)、全部合わせて借入金は6874億円で、これで当期利益879億円を上げています。ここで1%の負債コストが上昇すると69億円の負担増です。8%の収益圧迫要因となります。
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プロフィール
- 【監修】矢口新(やぐち・あらた)
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1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。
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