『国際政治経済塾』

投資のチャンスを確実にモノにするには、世界にアンテナを張り巡らし、お金の流れを機敏に察知する必要があります。元外交官の経験を活かし、一見違う視点で、世界の政治とお金の関係を、リアルタイムで説明します。

追い詰められたフランスのシナリオ「原子力ビジネス」という打ち出の小槌

自然エネルギーへのシフト。その「裏」で動くもの

太陽光、風力、地熱、バイオマス…。近年、世界的に注目を集めているのが自然エネルギーだ。温暖化ガスを多く排出する火力発電から自然エネルギーへのシフトが各国政府によって後押しされている。そして今年12月には、一連の動きのハイライトともいうべき、地球温暖化対策会議“COP15”が控えているのである。京都議定書の批准を避けた米国でさえ、オバマ大統領が叫ぶ“グリーン・ニュー・ディール”の掛け声の下、自然エネルギーへと大きく舵を切ったように見える。


こうした流れが勢いを増す中で、欧州では今週(6月28日より始まる週)、エネルギー関連のイヴェントが複数開催される。ドイツにおけるバイオマス会議、英国のバイオガス展示会、そしてフランスではエネルギー・気候変動保障会議。オバマの米国に劣らず欧州各国も、自然エネルギーへの動きを先導しようと先を争っているかのようである。「これからは何はなくとも自然エネルギーだ!」と言われんばかりの勢いである。


だが、本当だろうか?そう見えるだけではないのか?この疑問には正当な根拠がある。実は脚光を浴びる自然エネルギーの裏側で密やかに、しかし着々と動きを見せるエネルギーの“潮目”が存在するのだ。――原子力である。


去る5月、オバマ米政権はアラブ首長国連邦(UAE)と原子力協定を締結。あれほど自然エネルギーをうたいあげていたはずのオバマだが、何食わぬ顔で中東における原子力事業の拡大にいよいよ踏み出した。これはこのコラムで我が研究所がかねてより予測分析していたラインの動きだ。米国だけではない。中東・北アフリカ地域では、複数の大国によるアプローチにより、今では10ヶ国以上で原子力発電導入に向けた動きが見られる。世界的に見ても2008年末時点で42基が建設中、81基が計画中。世界中で原子力発電推進が加速していると言っても過言ではない。

サルコジ仏大統領の“驚くべき政策宣言”

このような観点から東京・国立市にある弊研究所で世界の“潮目”をウォッチしていたところ、次のような気になる報道が地球の裏側から飛び込んできた。フランスのサルコジ大統領が国民に向けた演説で「緊縮財政はとらない。増税もしない」と発言したというのだ(6月22日付 独ドイチェ・ヴェレ参照)。


“金融メルトダウン”が冷め止まぬ中、欧州各国は危機的な財政状況に陥りつつある。そうした中で緊縮財政をとらないとなれば、大幅な財政赤字の拡大・国家債務の急増を招く。対応策として一般的に行われるのが増税だが、サルコジ大統領はそれすら否定しているのである。通常では考えられない政策をフランスは打ち出したということだ。


増税をせずに財政支出を拡大するためには、何か他の収入を得る手段を講じる必要がある。そのような強みをフランスは持っているだろうか?農業大国?文化大国?しかし、これらの特徴は、フランスの現状を覆すほどの増収を保証するものでは全くない。


では、他に何がありうるだろうか?――ここで直視すべきなのが、ここに来て一般にはあまり報じられないが、フランスは「核大国」であるという事実なのだ。


フランスは米国に次ぐ世界第2位の原子力発電大国だ。かつては自国内でウランを産出し、現在でも国内発電量の約80%が原子力発電によるものと言われる。また、原子力企業としては世界最大のアレヴァ社を擁してさえいる。世界で原子力シフトが進む中、フランス勢が増収を図るとすれば、この原子力分野が第一に挙げられよう。「核大国」としてのフランスが今後、表舞台に立つ可能性が見えてきた。

今、アジアにも向かう原子力エネルギーの“潮目”

まさに今、世界中で生じつつある、こうしたエネルギーを巡る“潮目”を含め、激動の世界を巡る情勢について私は、来る7月4・5日に東京、浜松、静岡、25・26日に福岡、広島でそれぞれ開催する「IISIAスタート・セミナー」でお話する予定だ。御関心を持たれた皆様は、ぜひ会場に足をお運び願いたい。


ちなみにフランスによる原子力ビジネス拡大の動きは、我が国を含む東アジア地域にも及ぶと考えられる。去る5月23日、フランスで加工されたプルサーマル用MOX燃料(ウラン・プルトニウム混合燃料)が九州電力の玄界原子力発電所に到着したことは、記憶に新しい。


またフランスは中国にも接近を図っている。サルコジ大統領自らが原発の“トップ・セールス”を行った結果、2007年11月に契約を締結したのである。2008年8月の北京オリンピック前後には、チベットの人権問題を巡って対立する局面もあったが、今年に入ってサルコジ大統領が「チベットは中国領」と発言、事実上「詫び」を入れた形となっている。石炭依存からの脱却を図る中国に対して、改めてフランスが大きく食い込むシナリオも考えられる。


「自然エネルギー讃歌」の大合唱の陰で、したたかに原子力ビジネスを展開する「核大国」フランス。彼らが日本を含むアジアで巻き起こす原子力という古くて新しい“潮目”から、私たち=日本の個人投資家・ビジネスマンは今後もますます目が離せない。

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2009年06月30日 22:00 | 米流時評

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『計画破産国家アメリカの罠―そして世界の救世主となる日本』

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