「相場力ＵＰ」に役立つ矢口新の『トレードセンス養成講座』

出来高とは、売買株数のことです。もう１つ似たような指標に、売買金額があります。値がさ株（株価の高い株）を売買すると売買金額がかさみますので、売買金額上位の常連銘柄には値がさ株が多くなる傾向があります。

一方、比較的少額な資金でも、低位株（株価の低い株）を売買すれば、より多くの株数を売買することができます。したがって、出来高上位の銘柄には低位株の方が顔を出しやすくなります。ここでお気付きでしょうが、両方の上位に顔を出す銘柄は、人気が非常に高まっていることを表しています。

ある銘柄が低位から中位、値がさへと上昇していく過程で、出来高に変動がなければ、売買金額は自然に上昇していきます。いっぽう、株価が上昇しているのに売買金額に変動がなければ、出来高が減少していることを意味しています。

このように、出来高は資金の流入、流出を暗示していることから、相場の「エネルギー」を表してくれます。株価の位置と、そのエネルギーとを複眼的に判断することで、相場の強弱を推し量ることも可能です。これらのことから、相場の出来高と株価の関係は次の４つに大別できることになります。

１）株価上昇＋出来高大＝多くの資金が流入：相場が強い
２）株価上昇＋出来高小＝流入資金が増えていない：弱さを内包
３）株価下落＋出来高大＝資金が流出：相場が弱い
４）株価下落＋出来高小＝流出資金に歯止め：強さを内包

このように出来高で相場のエネルギーを推し量ることは、市場全体にも個別銘柄にも適用することができます。

問題の「個別銘柄の出来高が前日比で急増」することだけでは、エネルギーの高まりは分かるのですが、株価の方向までは分かりません。出来高があるということは、同数の売り手と買い手とが存在した結果だからです。ここでチャートなどを持ち出して調べたいのが株価の位置です。この急増が株価の上昇過程で起きていたなら、上記の「出来高と株価の関係」通り、基本的には買いサインです。いっぽう、株価の下落局面で起きたなら、基本的には売りサインです。

とはいえ、何事にも行き過ぎは禁物で、上げ下げのトレンドがしばらく続いた後で、いきなり出来高が急増したなら、エネルギーを出し尽くした可能性がでてきます。そういった出来高の急増で得たものが、結局は長い上ひげ（高値は更新するが、高値より相当下で引ける）、長い下ひげ（安値は更新するが、安値より相当戻して引ける）だったとすれば、狼狽買いや狼狽売りが出た可能性が高く、相場は相当の確率で反転することになります。

また、出来高の大きな価格帯は、売り買いのエネルギーを蓄えていることから、株価の下にあればサポート、上にあればレジスタンスとして作用するとみなされています。