今週の解答
[資金管理に関する問題]
あなたが中長期的な資産作りを目指しているとします。もっとも適切なポートフォリオの組み方は以下のどれでしょう?
(2)いくつかの投資物件に分散させる
投資の世界に「絶対」は禁物です。いかに業績が安定し、将来性が見込める企業であっても、景気や会社の運命には山や谷があります。また、突然のトラブルに見舞われる可能性も否定できません。あなたが1つの会社の運命と一蓮托生を決め込むことはないのです。中長期的に、しかも安定的に資産を運用していきたいのであれば、リスクは適当に分散しておくのが望ましいのです。
分散投資とは、1つ目の投資は相場観など主観でおこない、2つ目はそのリスクを打ち消す方向で客観的にデータを分析しておこなうものです。いわば「反対方向に動くものを組み合わせる」ことです。
あなたが会社員であれば、1つ目の投資はあなたが勤めている会社です。あなたはその会社からのリターンで生活しています。そこで自社株を買うと、会社の業績に連動してリターンが変動します。うまくいけば、ボーナスが増え、株式の評価益も膨らみます。しかし、万が一倒産すれば、あなたはすべてを失う可能性があるのです。
そのリスクを分散するには、他社の株を保有すること。それも同じ業界や近い業界ではなく、極端にいえば、あなたの会社が潰れるようなときに、大きく値上がりが期待できる会社の株を買うことです。それが分散投資の基本的な考え方です。
ある投資物件を保有し続ける場合、一蓮托生を避けるためには、リスクを適当に分散させる必要があります。しかし「反対方向に動くもの」を完璧に組み合わせると、1つの収益をもう1つの損失が打ち消し、結局は何も残りません。また、国内外の株式、債券、不動産などできるだけ多く分散させても、多くのものがお互いを打ち消しあうだけで、思ったほどのものは残らないでしょう。
また、多すぎるリスク分散は「知らないものには投資しない」という、投資の鉄則にも抵触する恐れがあります。その鉄則を守るだけでも、投資物件は相当に絞り込めるはずです。
具体的に、個人のポートフォリオには何銘柄が適当でしょうか?もと教師をしていたアナリストの友人は、教え子と同じで、銘柄も20を超えると残りはいい加減な対応になると言っていました。これは個人がどれだけ銘柄を分散させるかの参考(上限)になるかも知れません。
それらの銘柄がすべて日本株なら、米ドルの金利商品を付け加えることでリスク分散ができます。また、アメリカの相場師列伝に残るような投資家の多くは、もっとも効率的なポートフォリオは5銘柄から10銘柄の間だと語っています。彼らの場合は必ずしも「反対方向に動くもの」にはこだわりません。それぞれの銘柄に相場観を持って向かいます。彼らにとってのリスク管理は損切りなのです。
書籍
プロフィール
- 【監修】矢口新(やぐち・あらた)
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1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。
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