今週の解答
[個別銘柄に関する問題]
あなたが購入のタイミングをはかっている銘柄が、買い残が積み上がりながらしばらく続落し、数日間横這った後、安値を抜いたことをきっかけに通常の数倍の出来高を伴って急落しました。ここであなたがとるべき行動は?
(1)絶好の買い場が到来したと判断し、
その日のベストのタイミングで買う
私は常に、自分が扱っている資金が投資資金なのか、投機資金なのかを明確にしろとアドバイスしています。投資資金とは差し当たり使う当てのない余裕資金で、最悪の場合にでも寝かせておける資金です。投機資金とは目先のキャピタルゲインを狙うための資金で、借入金や信用取引がその典型です。自分の運用資金がどちらに相当するかで、運用の仕方も変わるのです。
投資を判断する尺度は様々ですが、あえて一言で表すならば、投資した資金に見合うリターンが得られるかどうかということになります。どんなに安全でかつ成長が見込まれる企業であっても、株価が買われ過ぎていて、投下資金に比べてのリターンが小さければ見送った方がいいのです。そういった銘柄は投資尺度を超えた魅力、すなわち値上がり期待だけで買われていることが多く、その期待が続かなければ売られてしまうからです。
もっとも効率的な投資とは、狙っている銘柄がたまたま売られたところを買うことです。上昇トレンドが確認できる相場で押し目を買うことだとも言い直せます。
今日の問題での株価の下落は、いたずらに値上がり期待だけで買われていた銘柄が辿る典型的なパターンです。良い銘柄を買いたいのは投資家だけではありません。良い銘柄は値上がりが期待できるので、投機家も買いにきます。買い残の積み上がりは投機資金の大きさを表しています。
借入金や信用取引での買いは、上がっている時はいいが、下げ始めると持ちこたえられないのです。「通常の数倍の出来高を伴って急落」は、追証が払えずに投げたことを暗示しています。狼狽売りがでているのです。投資家がここで買わなければ、決して割安な銘柄は買えません。仮に上昇トレンドが崩れていても、せめて打診買いくらいはするべきでしょう。
投機資金ではどうでしょうか?投機資金の目的はキャピタルゲインです。キャピタルゲインを取るには、売りでも買いでも関係がなく、トレンドすらも決定的な要因とはなりません。投機ではむしろ他人のパニックにつけこんで、買い向かい、売り向かった方が、効率よくキャピタルゲインを得られることが多いのです。
今日の問題は典型的な狼狽売りのパターンです。このような展開の日は、多くの場合、長い下髭をつくることになります。その日の安値から相当値を戻して引けるのです。つまり、その髭のどこかで買っていたなら、その日のうちに利食えることを意味しています。あなたがすべきことは、下げ止まりを判断して、勇気を出して買うことなのです。しばらく続落の「しばらく」が数カ月に及んでいたなら、そのまま中期トレンドが反転することもしばしばです。
(2)、(3)では、何のために購入のタイミングをはかっていたのかと言いたくなります。相場をやる以上、どこかで売買の決断をしなければなりません。私などは、こういうタイミングを待ち続けているのです。
書籍
プロフィール
- 【監修】矢口新(やぐち・あらた)
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1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。
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