あなたの答えは、残念ながら 不正解 です

今週の解答

[資金管理に関する問題]

株式の無期限信用取引で購入した銘柄が下落し、証券会社から追加証拠金(追証)の入金を迫られました。その場合に、もっとも適切な対処の方法は?

正解は・・・
(3)追証は避け、その銘柄を売却する。

まず、信用取引というものに馴染みがない方のために、簡単にご説明いたします。

信用取引とは、証券会社が顧客に金銭や有価証券を貸し付けておこなう株式の売買取引のことです。例えば、個人投資家が「ある銘柄を買いたいが、十分な資金が手元にない」といった場合には、投資家は証券会社に購入資金の約3分の1の委託保証金を預けるだけで、その銘柄を買うことができます。残金は証券会社が立て替える(信用の供与)のです。

あるいは、個人投資家が「ある銘柄の株価が値下がりしそうなので売りたいのだが、株式をもっていない」といった場合には、証券会社が自社の在庫や、機関投資家、あるいは証券金融会社から借りてきた株式を貸し付けることにより、売却を可能にします。この場合にも、個人投資家はもともとその銘柄を保有していないのですから、売却資金を受け取ることはなく、株式借入に際して株価代金の約3分の1の委託保証金を預けることになります。

信用取引には、証券取引所の規則によって決済の期限(最長6カ月間)や金利、品貸料の金額が決められている制度信用取引と、証券会社が独自に決済の期限や金利、品貸料の金額を決める一般信用取引とがあります。今日の問題の無期限信用取引は一般信用取引で、決済の期限に縛られない分だけ、支払い金利が高なっているのが普通です。制度信用取引は個人投資家保護のために規則で証券会社を縛っていますので、制度信用取引が可能な銘柄では、こちらの利用をお勧めします。

私は常に、自分が扱っている資金が投資資金なのか、投機資金なのかを明確にしろとアドバイスしています。投資資金とは差し当たり使う当てのない余裕資金で、最悪の場合にでも寝かせておける資金です。投機資金とは目先のキャピタルゲインを狙うための資金で、借入金や信用取引がその典型です。自分の運用資金がどちらに相当するかで、運用の仕方も変わるのです。

相場で売り買いするには、それなりの理由が必要です。人によって様々な理由が考え付くでしょうが、投資も投機も突き詰めれば、リターン(見返り)が欲しいということです。購入した株式が値下がりするということは、当初の思惑がはずれていることを意味しています。ここまでは、投資、投機ともに違いはありません。

しかし、株式会社が行う事業にも、開墾、種まきの時期や、肥料を撒いたり、雑草を刈ったりする時期がありますので、いきなり収益に結びつくとは限りません。そういった時期に、株価が値下がり続けることは珍しくありません。したがって、思惑がはずれたからといって、すぐにその会社を見捨てることに抵抗を感じる場合もあるでしょう。

そのような場合には、寝かせておける資金での投資ならば、持ち続けるという選択肢もあり得ます。もっとも、苦しんでいる企業に資金供与してサポートするつもりでもなければ、タイミングを間違えたことは事実ですので、いったんは売却して、損失の拡大を抑えるのが上策だと言えます。

今回の問題は無期限信用取引ですから、投機資金です。投機ではタイミングがすべてですから、信用取引による購入での値下がりは、追証を待たずに損切っておくのがベストです。ずるずると追証がかかるまで持ってしまったなら、それを潮時に自らその銘柄を売却し、その信用取引を終えるのが適切です。

追証に応じずに、無視していると、証券会社はその銘柄を売却して資金を回収します。実際に適用されるかどうかは分かりませんが、筋からいうと、売却損が委託保証金(証拠金)を上回った際に、その差額は投資家に債務が発生します。いずれにせよ、自分で売買の決断を下さない(2)は、最低の選択です。

(1)のように追証に応じると、投下資金を100%失っていながら、まだ同じ値上がり期待を抱き続けることになります。これは、相場の出口を見失っていることを意味しています。信用取引という、いわば借金で投機を行い、負けても負けても同じことを繰り返していると、いつか取り返しのつかないことになります。「初志を貫徹する」、「決して諦めない」といった前向きの姿勢と、「間違いを認めない」、「損をいつまでも引きずる」といった後ろ向きの姿勢とを混同しないようにしてください。いつも前向きでいるためには、リスク管理など自己の節制が必要なのです。

また、信用取引は現金の委託保証金の代わりに、保有株式を担保に行うこともできます。株式の銘柄によって、保証金に充当できる掛け目が違います。例えば、1,000円の銘柄、 1,000株の掛け目が70%だとすると、700,000円相当の株式を信用取引で売買できます。この場合に注意を要するのは、信用取引で買った株式の値下がりだけでなく、担保株式の値下がりでも追証がかかる可能性がでてくることです。限度一杯に相場を張っていると、信用取引、担保株式どちらかのわずかな値下がりでも追証が発生します。無視すると、担保株式の強制処分売りにもつながります。当然、全面安のような場合には、脆さを現します。

このように現物と、信用とのダブルでいっぱいいっぱい相場を張りたいと熱くなるときは、ある意味、危険な兆候なのです。それでもやりたい時があるとは思いますが、保有株式を担保にしての信用取引は利食いも損切りも素早く行うべきでしょう。追証がかかるまで持っていてはいけません。

残念ながら不正解だったあなたは・・・

実際に運用をする前に、ほかの「資金管理に関する問題」で、さらに勉強しましょう。

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【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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