あなたの答えは、残念ながら 不正解 です

今週の解答

[個別銘柄に関する問題]

次の外国人持ち株比率が高いA、B、Cの3社のうちで、最も長期保有に向いているのはどれでしょう。

正解は・・・
(2)海外の年金基金の比率が高いB社

他の要素を除き外国人持ち株比率だけで見た場合、株主がどのような資金で株式を購入しているかを知れば、それが長期保有が目的なのか、キャピタルゲインが目的なのかを推測することができます。

(1)はいわゆる「黒い目の外人」と呼ばれるもので、外国人持ち株比率に数えること自体が疑問視されるものです。長期保有がもっぱらの企業間の(企業買収防衛策などの)政策投資や日本の機関投資家は実名で株主となりますので、黒い目の外人はヘッジファンド的な動きをすることが多いと思われます。

(2)の年金は典型的な長期保有です。

(3)のヘッジファンドは預かり資金にレバレッジをかけて運用します。レバレッジの部分はもとより、預かり資金も長期の安定資金とは呼べません。彼らは値上がりすれば利益確定のために売り、値下がりすれば自らの判断による損切り売りか、顧客の解約による売却に迫られます。

したがって、長期保有に向いているという観点からは、この問題の正解は(2)以外にはありません。

では、どのようにして外国人持ち株比率の中身を知るかですが、慣れるしかないというのが実情です。

海外の年金基金やミューチュアルファンド、ヘッジファンドが、実名で株主となることはほとんどなく、多くの場合は信託口、トラスティといった株式の保管業務を行う会社に委託します。大体どのようなネームが多く出てくるかを知るために、東洋経済新報社が提供しているオンラインの会社四季報で主な会社の株主欄をみてみます。もっとも、デイトレーダーなど短期勝負の売買では、持ち株比率に現れるほどの期間も保有しませんので、その点には注意が必要です。

まず、トヨタ自動車を参照します。

■トヨタ自動車
【株主】  [単]335516名<06.3> 万株
自社(自己株口) 36,824 (10.2)
日本トラスティ信託 30,414 (8.4)
日本マスター信託 21,520 (5.9)
豊田自動織機 20,002 (5.5)
日本生命保険 13,257 (3.6)
ヒーロー&カンパニー 12,352 (3.4)
ステート・ストリート・バンク&トラスト 11,618 (3.2)
資産管理サービス信 10,169 (2.8)
東京海上日動火災 8,382 (2.3)
三井住友海上火災 6,516 (1.8)
<外国>26.5% <浮動株>5.0%
<投信>3.3% <特定株>47.8%

下から2段目の<外国>とあるのが、外国人持ち株比率です。右の<浮動株>が小口の株主が所有している比率です。その下の<特定株>は長期保有の安定株主の比率です。最上段の<06.3>で、2006年3月末の時点の数値だと分かります。

比較のために、新日本製鐵と東芝をみます。

■新日本製鐵
【株主】  [単]419967名<06.3> 万株
日本トラスティ信託 48,544 (7.1)
日本マスター信託 36,935 (5.4)
ステート・ストリート・バンク&トラスト 33,030 (4.8)
日本生命保険 20,092 (2.9)
資産管理サービス信 19,824 (2.9)
みずほコーポ銀行 18,260 (2.6)
自社(自己株口) 15,867 (2.3)
明治安田生命保険 14,117 (2.0)
三菱東京UFJ銀行 13,463 (1.9)
住友金属工業 12,351 (1.8)
<外国>21.1% <浮動株>23.1%
<投信>4.0% <特定株>34.1%
■(株)東芝
【株主】  [単]354341名<06.3> 万株
日本マスター信託口 19,808 (6.1)
チェース(ロンドン) 13,773 (4.2)
日本トラスティ信託口 12,938 (4.0)
第一生命保険 10,875 (3.3)
日本生命保険 10,254 (3.1)
日本トラスティ信託口4 5,823 (1.8)
自社持株会 5,379 (1.6)
三井住友銀行 5,000 (1.5)
日本興亜損害保険 4,630 (1.4)
三井住友海上火災 3,695 (1.1)
<外国>22.0% <浮動株>33.3%
<投信>3.0% <特定株>28.8%

<浮動株>、<特定株>などには大きな差がありますが、<外国>は20%台の半ばまでですから、この辺りが一般的な外国人持ち株比率と考えてよさそうです。

ネームをみると、ヒーロー&カンパニー以外は、日本トラスティ信託、日本マスター信託、ステート・ストリート・バンク&トラスト(ステートSBT)、チェース(ロンドン)、保険会社、大手銀行など大口株主として一般的にみられるネームばかりです。これらの銘柄で<外国>の数値が上昇すると、外国人による「長期保有」が増えていると好感していいかと思います。

外国人持ち株比率の上昇は、一般的には「国際的に広く認知された」ということです。しかし、単に投機の対象として外国人持ち株比率が高くなるケースもあります。

以下に4社、先ほど挙げたトヨタなどの銘柄に比べて、外国人持ち株比率が非常に高い銘柄(40〜60%)を挙げています。この4社を比較し、「投機の対象」となっている銘柄の目安のつけ方を見ていきましょう。

■山水電気
【株主】  [単]43774名<06.3> 万株
バリカン・インベストメンツ・コーポレーション 27,238 (19.9)
モルガン・スタンレー・インターナショナル 13,914 (10.2)
ハイテック・プレシジョン・プロダクツ 12,208 (8.9)
GサックスInt'l 6,950 (5.0)
日本証券金融 6,134 (4.5)
KBCインベストメンツ(香港)AAT821010 3,570 (2.6)
ナカミチ・マレーシア 2,749 (2.0)
大和証券 1,121 (0.8)
赤井電機 1,000 (0.7)
BONY・GCM 914 (0.6)
<外国>41.1% <浮動株>22.7%
<投信>0.5% <特定株>55.6%
■野村ホールディングス
【株主】  [単]197449名<06.3> 万株
日本トラスティ信託口 10,747 (5.4)
日本マスター信託口 8,680 (4.4)
デポジタリー・ノミニーズ・インコーポレーション 8,397 (4.2)
ステート・S・BT 8,246 (4.1)
自社(自己株口) 5,982 (3.0)
ステートSBT505103 5,479 (2.7)
チェース(ロンドン) 4,434 (2.2)
日本トラスティ信託口4 2,628 (1.3)
三菱UFJ信託銀行信託口 1,930 (0.9)
日本生命保険 1,900 (0.9)
<外国>43.6% <浮動株>10.6%
<投信>3.9% <特定株>29.7%
■ソニー
【株主】  [単]666286名<06.3> 万株
モクスレイ&Co. 14,507 (14.4)
チェース(ロンドン) 4,178 (4.1)
日本トラスティ信託口 3,971 (3.9)
日本マスター信託口 3,684 (3.6)
ステート・ストリート・バンク&トラスト 2,801 (2.7)
ステートSBT505103 1,730 (1.7)
住友信託銀信託B口 1,156 (1.1)
三菱UFJ信託銀行信託口 919 (0.9)
三井住友銀行 838 (0.8)
BNPパリバアービトラージSNC 832 (0.8)
<外国>50.1% <浮動株>23.4%
<投信>3.6% <特定株>34.7%
■(株)アイ ビー ダイワ
【株主】  [単]14066名<06.3> 万株
HSBCアジアInt'l 8,660 (20.3)
ユニオンバンケプリベ 2,651 (6.2)
シティグループグローバルM(シルクルートInv.) 2,063 (4.8)
エスアイエス・セガ・インターセトル 2,054 (4.8)
シティグループ・グローバルM(スノブ・クロスビー) 1,582 (3.7)
チェース(ロンドン) 1,031 (2.4)
MスタンレーInt'l 989 (2.3)
畑崎広敏 780 (1.8)
HSBCセキュリティーズ・サービシィズ(Lux.) 601 (1.4)
ドイツ銀行 427 (1.0)
<外国>60.7% <浮動株>18.4%
<投信>0.0% <特定株>49.1%

4社のうち、野村ホールディングスとソニーは、上記のトヨタなどと多くのネームが重なります。また<投信>の比率も似ています。

いっぽうで山水電気とアイ・ビー・ダイワでは、見慣れたネームでもモルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックス、 HSBCセキュリティーズなど証券系が多く、キャピタルゲイン狙いの、投機的な臭いがします。

外国人持ち株比率を見るときは、数字だけでなく内容にも目を配りましょう。その内容によって同じ「外国人による保有」でも意味合いがまったく違ってきますし、あなたのトレードにも大きく影響するでしょう。

残念ながら不正解だったあなたは・・・

実際に運用をする前に、ほかの「個別銘柄に関する問題」で、さらに勉強しましょう。

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【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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