今週の解答
[ニュースに関する問題]
インフレ懸念が台頭し、金利の引き上げが確実となりました。あなたは、金利敏感株といわれる電力会社の株式を保有しています。いま売れば、そこそこの利益が出るのですが、利上げにどう対応すればいいでしょう?
(3)下げ始めてから売る
企業にとって、負債コストは業績を左右する要素の1つでしかありません。どんなに有利子負債の残高が大きなところでも、株価が上昇している時に売る必要はありません。株価が下落し始めてから、あるいは頭打ち感が出てきてから売ればいいのです。
東洋経済新報社の資料によると、有利子負債が1兆円を超えている日本企業は29社あります。主な業態は電力会社、商社、ノンバンクなどです。
有利子負債残高1位の東京電力は、2位以下を大きく引き離し、 2006年3月末の時点で6兆6千億円近くの有利子負債があります。ここで負債コストが0.25%上昇すると、約165億円の収益悪化要因となります。同社のこの期の経常利益は3972億円ですから、165億円は多いとも少ないとも言えます。
いっぽうで、電力会社にとって利上げが収益のプラス要因となることはありませんので、利上げがトレンドとなり、1%、2%と上がっていくと、この4倍、8倍のコスト高となりますので、大きく収益を圧迫し始めます。
商社も有利子負債の大きな業態ですが、商社はコストに見合う投資物件が見込まれて、はじめて借入を行います。つまり、負債コストがどんなに上昇しても、それ以上の収益が見込まれている限り、収益の悪化要因とはなりません。とはいえ、負債コストが上がるにつれて、コストに見合う投資物件が減っていきますので、バランスシートは縮小傾向を辿ります。結果的に収益力が落ちてきますので、やはり利上げは収益の悪化要因となります。
ノンバンクは銀行などから借入れた資金を、消費者などに又貸しして収益を確保します。この借入金利が上昇するいっぽうで、貸出金利に上限などがあると、当然のことながら収益は板ばさみとなって悪化します。
量的緩和、ゼロ金利といった時代には、有利子(信用と期間のリスクのみにかかるコスト)で借りた資金を、どこで運用しても収益があがるというハードルの低い時代でした。逆の面からは、どこで運用しても収益が上がりそうにないので、負債コストのハードルを限界的に下げたという見方もできます。そして、そういった資金が商品相場や新興国の株式、先進国の住宅産業などに流れ込み、ちょっとしたバブルを形成しました。
現在、世界のほとんどの国の金利は利上げ基調にあります。日本のゼロ金利政策も2006年7月に解除されました。そんな中で、世界的に株価は上昇基調です。基本的に金利上昇は収益の悪化要因ですが、それだけで売ることはありません。チャートをよく見て、高値を更新できなくなってきてから売っても、遅くはないでしょう。
見事正解だったあなたは・・・
油断は禁物、ほかのカテゴリの問題にも挑戦してさらにセンスを磨く努力を怠らないようにしましょう。
書籍
プロフィール
- 【監修】矢口新(やぐち・あらた)
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1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。
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