今週の解答
[個別銘柄に関する問題]
あなたはデイトレードを始めようとしています。その際、最も避けるべきな銘柄はどれでしょう?
(2)時価総額が小さく、売買高が少ない銘柄
問題の主旨を明確にするために、まずはデイトレードとはどういうものなのか、そして、そのリスクを整理しておきましょう。
デイトレードとは、基本的にその日のうちに売買を完結し、損益を確定する取引です。デイトレードではポジションを翌日に持ち越さないため、夜中(オーバーナイト)に何かが起きて損が出てしまうというリスクからは免れます。このため、プロのディーラーも駆け出しの頃はオーバーナイトでポジションを持つことは禁止され、もっぱらデイトレードだけを行います。
いっぽう、長期保有が前提のファンドマネージャーたちの中には、「明日の動きは分からないが、1年後の株価の位置は分かる」などと言う人がいます。このように中長期の投資がより安全だとみなす人は、時間が価格のぶれを吸収すると考えています。実際のところ短期売買では、その価格のぶれをもろに背負ってしまいます。実は、短期売買のリスクは、非常に高いのです。同時に、短期売買では大きなリターンが狙えることを意味します。
デイトレードのような短期売買も、ずっと保有し続ける長期投資も、本質的なリスクは同じです。短期売買では、長期保有で起こりうる有事やスキャンダルなどのイベントリスクは減りますが、その代わり長期投資ならば誰も気にとめないようなつまらない噂などで動くリスクがあります。
デイトレードなどのキャピタルゲイン狙いの投機では、価格の変動幅がそのまま損益につながります。その損益を、損失の側からみればリスク、利益の側からみればリターンです。価格が動かなければ儲けることはできませんので、ボラティリティ(価格変動)の大きいものが、キャピタルゲイン狙いの投機に適していることになります。
1日あたりのボラティリティは、通常、年率で現されているボラティリティの数値を16で割ることにより得られます。 16とはルート256(約1年の取引日数)なのですが、詳しい説明は煩雑なだけですので、ここでは1年のボラティリティを16で割ると、1日分となるとだけ知っていてください。
つまり、デイトレードのリスク・リターンは1年間持つことの16分の1だと分かります。そして、1日当たりは16分の1なのですが、毎日(256日)デイトレードを繰り返せば、1年間持つことの16倍のリスク・リターンとなるのです。この辺りに、デイトレードと中長期投資のどちらのリスクが大きいのかと、意見が分かれる原因があります。
実際、短期間で大きな収益を残した人は、相当の速度で短期売買を繰り返しています。つまり短期売買では、長期投資ほどの値幅はとれませんが、同じ値幅を取るに要する時間が極端に縮まるので、時間効率ははるかによくなるのです。
デイトレードの持つ、これらの特質を理解したうえで、本日の問題を考えてみます。
(1)その日に決算の下方修正が発表された銘柄で、普通に考えられるのは、売られるだろうという事です。そして、大きく売られ過ぎたならば、買戻しが期待できます。つまり、デイトレードに適した「ボラティリティの大きなもの」という条件に当てはまります。こういった銘柄は、いったん売られた後は、買い戻されますので、自分もそのようなトレードを心がけるようにします。買い戻されているときに遅れて売ると、つかまる確率が高くなります。
(3)の信用取引で行うのはキャピタルゲイン狙いの投機ですから、残高の多い銘柄は売買の回転やボラティリティが高く、デイトレードにも適した銘柄だと言えます。
(2)のように売買高が少ない銘柄は流動性が低く、通常はボラティリティも小さいので値動きが悪く儲かりません。また、このような銘柄に大きな売り買いが入ると、値が飛んでしまって思った価格で売買ができず、思わぬ損失につながる場合があります。もちろん思わぬ利益にあずかれる場合もあるのですが、そういった運に頼っていてはデイトレードでの成功は望めません。
プロのヘッジファンドでも世の中を騒がすほど大きな損失のほとんどは、流動性を軽視したことから起きています。
書籍
プロフィール
- 【監修】矢口新(やぐち・あらた)
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1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。
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