あなたの答えは、残念ながら 不正解 です

今週の解答

[その他の問題]

利上げ観測のもと、円が上げ足を速めたので、日銀が100億ドル規模の円売りドル買いの市場介入を行ないました。あなたが取る新規のドル円ポジションとして、適切なのはどれでしょう。

正解は・・・
(2)日銀の為替介入に順張りし、
円売りドル買いのポジションを取る

利上げ観測を材料に積みあがっていた円ロング・ドルショートのポジションが、日銀介入をきっかけに巻き戻されるのを狙って、円売りドル買いで攻めます。また、100億ドルという介入額は、それだけでもドルの押上げを期待できる規模です。


日銀と一緒に円売りドル買いをしても、逆にいけば損切りするしかありません。それが怖くて、大きなイベントの時に様子見をしてしまうと、ドルが下がればやっぱりと手が出せず、ドルが上がってももう遅いと手が出せません。大きなイベントのときは、少額でもいいから手を出す癖をつけていないと、大きな動きについていけなくなります。


実は、通貨当局の市場介入に対する市場参加者の対応は、時代と共に変遷してきています。 1985年9月のプラザ合意でのドル売りの協調介入では、当局の思惑通りに為替レートは動きましたので、市場参加者も素直に当局と足並みを揃えた人が儲かりました。ここでは、マーケットの動きにも、日銀介入にも順張りでよかったのです。


プラザ合意の頃、240円あたりだったドル円は、翌年には200円を割り込んできます。通貨当局はその動きに対応して、早くも1986年3月には、今度は一転してドル買い介入を始めます。このドル買い介入は88年の暮れまで続きますが、その間、ドル円は199円台から120円くらいにまで下落します。この頃の市場参加者は、日銀がドルを買ってくれるから十分にドルが売れるのだ、とうそぶいていたものです。すなわち、マーケットの動きには順張りですが、日銀介入には逆張りがよかったのです。


1995年4月にドル円は80円を割り込みます。その前の2年間も日銀はドル買い介入をします。ドル円レートは、1993年4月には114円台ですから、ここでも、マーケットの動きには順張り、日銀介入には逆張りがよかったことになります。


1995年4月以降の市場介入は、桁違いの介入額をつかったこともあり、当局の思惑通りにレートが動くようになります。そして1998年8月にはドル円は148円くらいにまで上がります。つまり、日銀の介入に順張っていれば、マーケットの動きとなったのです。


こう書くと、通貨当局の市場介入に対して、どのように対応していいのか分からなくなるかも知れませんが、実はそうでもないのです。市場の需給、資金の流れを見ていくと、流れに沿った市場介入はすぐに成功するので順張りでいいが、逆行する市場介入は結果的に成功しても時間がかかるので、逆張りがいいのです。


プラザ合意後の円買いドル売り介入が成功した背景には、日本の膨大な貿易黒字がありました。貿易黒字というのは実需の円買いが実需の円売りを上回っているということです。それが膨大だということは、膨大な量の円買いが実需筋から出ているのです。そこに加えて、通貨当局が円を買うのですから、更に円高ドル安が進むことになります。


半年後に通貨当局は行き過ぎた円高を止めに入りますが、今度は実需の円買いに逆らった市場介入です。また、その頃の介入は口先だけや、実弾を伴っていても実需と比較すれば少額でしたので、流れを止めるのに2年近くかかりました。その後、ドル円は160円くらいにまで戻りますが、貿易黒字は拡大を続け、ついには80円を割り込むことになります。


1995年4月以降の市場介入には為替レート以外の動機があったのですが、ここでは触れません。重要なのは、2カ月ほどで貿易黒字の1年分に相当するくらいの大規模な円売りドル買い介入を行ったことです。実需のドル売りを全部買い取れば、それ以上のドル売りはショートポジションが積みあがるだけとなります。これで流れが変わりました。


通貨当局による市場介入も、外貨準備を積み上げるという資金の流れです。ここにほとんどゼロ金利の円から、より高金利であるすべての通貨に資金が流れることが加わり、貿易黒字からの円買いを完全に吸収できる構造ができあがってきました。


昨年の1月くらいからは目立った介入はなく、過去1年半くらいのドル円は基本的に110円−120円に挟まれた動きをしています。これは実需の円買いと、外貨投資の円売りとのバランスが取れている状態かと思われます。ここで大きな売り買いが入ると、相場はその方向に動きます(参照:あなたが保有する株に、いきなり仕手らしき買いが入りストップ高まで暴騰しました。どのように対応するのがもっとも適切でしょう)。その大きな売り買いが通貨当局の場合ですと、簡単には売り戻し買い戻しをしないことから、もっと大きなインパクトを市場に与えます。市場介入への順張りが機能する下地があるのです。

残念ながら不正解だったあなたは・・・

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【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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