あなたの答えは、残念ながら 不正解 です

今週の解答

[資金管理に関する問題]

あなたの証券会社の口座には1,000万円あります。300万円程でポジションを新規建てする場合、どのように仕込むのが戦略上有利でしょうか?流動性は気にしないものとします。

正解は・・・
(1)一括で注文する

トレーディングは、ある意味、戦国時代などの「戦」に通じます。戦力の小出しは、その局面の重要度を低下させることにもつながり、儲けても勝つには至らず、損を出してもあまり負けた気がしないのです。そして、ずるずるといたずらに戦力を消耗してしまいます。

本気を出して、達成感のある勝利を得るには、全額をつぎ込むのがベストです。しかしそうすると、今度はピンポイントでタイミングを捉えないと、やられたときの傷が大きくなります。それなりに満足のいく勝ちを狙いながら、リスク管理のやりやすさ、次の手の自由度を考えると、新規のポジションには、資金の3分の1から半分くらいまでを当てるのが適当です。この問題のポイントは、 300万円の一括注文を入れても、まだ700万円ほどの資金が口座に残っているということです。つまり、一括でポジションを作っても、余力が使っている資金の倍以上あれば、買い増しなどの次の手が打てるのです。

1,000万円の資金力がある人にとって、300万円というのはそれなりの金額です。思惑通りに動いた場合には、それなりの満足感がありますし、逆に行った場合の損切りも速やかに行えます。これが100万円くらいですと、利食いも損切りも遅れがちとなり、メリハリの利いた運用ができないのです。

相場の動きを、次の4つのケースに単純化してみます。(わかりやすくするため、手数料などは考慮しません)

A)そのまま上がる
B)ある程度上げてから下がる
C)ある程度下げてから上がる
D)そのまま下がる
ここで、B)C)のある程度を1割としておきます。

1)1,000円の株を3,000株一括で買うケースと、2)1,000株ずつ3分割して買うケースを考えてみます。

A)のケースではどちらも儲かりますが、このままですと、2)は1)の3分の1しか儲かりません。買い乗せも、当初の株数1,000株にこだわっていたなら、2回乗せてやっと1)と同じ株数です。コストはその度に上がります。また扇型に、乗せる株数を増やしていくと、買いコストは常に市場価格に近付きます。
例えば、1,000円の株が、1,100円、1,200円の節目を超えて、1,300円になるケースを想定します。1)は1,000円で3,000株仕込み、1,100円で3,000株買い乗せました。コストは1,050円ですから、 1,300円になると、250円X6,000株で、150万円の利益です。2)は1,000円で1,000株仕込み、1,100円で1,000株買い乗せ、1,200円で1,000株買い乗せました。コストは1,100円ですから、200円X3,000株で、利益は60万円です。買い乗せを1,100円で2,000株、1,200円で3,000株とすると、コストは1,134円となり、166円X6,000株で、利益は99万6,000円となります。

結果としても、1)の方が2)より優れていますが、1)の方がリスク管理も容易です。たとえば、株価が1,200円で折り返した場合などは、1)では比較的簡単に利益を確定できるのに対して、2)はコストが近いためにリスク管理が難しくなります。買い乗せない場合でも、一括の場合の方が、分割よりも気持ちの上でうまく利食えるのです。

B)のケースでは、1)なら1,100円でうまく利食えれば、100円X3,000株ですから、30万円の利益となり、総資金1,000万円の3%で、それなりの金額です。2)はうまく利食えても1%でしかないのですが、もともと分割して買う意識があると、買えてないという気持ちから、うまく売れないものなのです。1)なら1,080円くらいで利食えるものが、2)だとほとんど利益が出せないようなことも起こりがちです。

C)のケースでは、1,000円の株価が900円に下げてからの反発ですので、1)はどこかでいったん損切ることがベストです。そして、損切ったなら、どこかで入り直すために相場を注視します。2)は、1,000円、950円、900円で1,000株ずつ、コスト950円で3,000株ですから、株価がそのまま上がれば、大きな利益が出ます。1)でも、損切り、買い直しをうまくやれば、コストを950円以下にすることも可能ですが、多くの場合そこまでは望めません。

D)のケースでも、1)はどこかでいったん損切ることがベストです。そして、損切ったなら、どこかで入り直すために相場を注視します。2)は、1,000円、950円、900円で1,000株ずつ、コスト950円で3,000株をどこかで損切らねばなりません。1)の場合は1,000円のコストを若干下回ったところから、損切りの意識が始まりますが、2)では、900円を若干下回ってからその意識が始まります。その時のコストは950円なので、実はあまり猶予はないのですが、もともと100円幅で買いレベルをみていますから、値幅に対する感覚はおおらかです。1割以上の損失を意味する850円レベルでも、なかなか損切れないことと思います。うまく損切れない人は、入り直しもうまくできないものです。

相場はトレンド通りに一直線には進みません。株価は必ず上下に振れます。一括でのポジション作りは、その振れに対して、注視することとリスク管理で対応します。分割でのポジション作りは、振れを受け入れてしまうことで対処します。受け入れた分だけ、リスク管理は曖昧になってしまいます。

分割が一括に勝るケースは、C)ある程度下げてから上がるケースのみですが、これは当初のエントリーポイントを間違えた結果です。A)、B)のように、エントリーポイントを当てた場合のメリットよりも、間違えた場合のメリットの方が大きな手法を採り続けていると、鋭敏なプライス感覚は、いつまでたっても身につかないと言えます。

残念ながら不正解だったあなたは・・・

実際に運用をする前に、ほかの「資金管理に関する問題」で、さらに勉強しましょう。

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プロフィール

【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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