今週の解答
[その他の問題]
会社の同僚に相場で儲けていると評判の人がいます。その人と偶然同席した時、儲け話を聞かされました。どのように聞くのがいいでしょうか?
(3)他人の儲け話は参考にならないので聞き流す
相場での儲け話を自慢する人がいます。なかには、具体的に銘柄や売り買いの価格、金額までをも話す人がいます。プロのディーラーの中にも、そういう人はいます。相場に限らず、手柄話というのは人に聞いて貰いたいものです。私も人に聞いて貰いたいようなエピソードの1つや2つはあります。相場に関したことではありませんが…。
自慢話というのは、聞き手となっている人に、自分が認められたいからするものです。つまり、あなたの関心を引きたいわけですから、無下に扱えば逆に嫌われてしまいます。社内に敵をつくる必要はありませんので、表向きには聞いてあげればいいのです。話を盛り上げるために、儲かった銘柄や情報の出所を聞くのもいいでしょうし、初心者の頃の苦労話や失敗談を聞くのもいいかもしれません。しかし、他人の儲け話は自分のトレードの参考にはならないので、聞き流すのが本当は正解です。
考えてみてください。プロ野球の選手で、生涯500本以上のホームランを打ったような人が、ホームランの自慢話をするでしょうか?その人にとってはホームランは期待に応える義務のようなものですから、どんなに打っても手柄話にはなりません。彼が自慢気に話すとしたら、送りバントを成功させた話や、盗塁、捕殺など、普段の自分に求められていない手柄だと思います。彼の話はエピソードとしては面白くても、自分のプレーの参考にはなりません。
プロのディーラーで儲け自慢をする人は、まだ駆け出しで、酸いも甘いも噛み分けるという域には達していない人です。また、元プロのディーラーで儲け自慢をする人は、不完全燃焼で現役を終えた人か、いまの境遇がつまらなくて昔を懐かしんでいる人です。
ディーラーは経験を積めば積むほど、収益や具体的な売り買いに対しては寡黙になっていきます。どういうわけか、そういうことを人に話すと、そのときからうまくいかなくなることが多いのです。それでなくとも、生々しい儲け話はスマート(粋)ではありませんし、手の内をさらけ出すのは得策ではありません。彼らが相場の話をするときは、技術や手法か、相場観など、未来の話だけです。過ぎたことを自慢してもつまりません。相場は過去のものではなく、今から先のものだからです。
相場は結果がすぐに現れますので、ともすれば結果に目を奪われ勝ちです。ちまたに溢れている本の題や副題にも、いくら儲けたというものがあります。しかし、そういった本に価値があるのは、儲けた結果にあるのではなく、儲けるに至った考え方や手法なのです。それを熟読し、自分の資金や性格、トレーディング環境に合ったものを厳選し、実際の相場で試してみて、初めてその本を活かすことができます。結果に引き摺られて、同じことを真似るのなら、むしろ害悪です。
拙著「生き残りのディーリング」で、「勝ちに不思議な勝ちあり、負けに不思議な負けなし」という野村克也氏の言葉を紹介しています。相場も同様で、運や勢いで大勝ちすることがあっても、不運などで大負けすることはなく、大きく負けるときはリスク管理が未熟だからなのです。そして、技術や手法の裏付けのない不思議な勝ちを重ねるごとに、妙な自信だけがついて、儲け自慢が始まります。誰かに認めて貰いたいのです。しかし、そうした「間違った収益」は負債に等しいといえます。なぜなら、どうしてもリスク管理がおろそかになり、将来の大損につながるからです。
見事正解だったあなたは・・・
油断は禁物、ほかのカテゴリの問題にも挑戦してさらにセンスを磨く努力を怠らないようにしましょう。
書籍
プロフィール
- 【監修】矢口新(やぐち・あらた)
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1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。
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