あなたの答えは、残念ながら 不正解 です

今週の解答

[投資心理に関する問題]

スイングトレーダーのあなたは信用取引を含めた大きなポジションを持っていて、含み益が30%ほど出ています。1日の変動幅は月給を超えるほどです。ところが来週から海外出張の予定が入りました。どのようにすればいいでしょうか?
※スイングトレーダー:数日から数週間程度の短期売買を行うトレーダー

正解は・・・
(2)一旦利益を確定させる

ここまでくると、もはや生き方の問題です。いろいろな考え方があるでしょうが、私の、生き残るための「トレードセンス養成講座」では、(2)の、一旦利益を確定させる、が正解となります。利益を確定すれば、資金力が増えます。海外出張の間は、相場から離れて仕事に集中できます。二兎を追うものは一兎を得ず。中途半端が一番いけません。

私は創成期の東京外為市場や、シンガポール、ニューヨーク、ロンドンといった海外市場で相場を学びました。その頃の外為市場や、海外のディーラーたちが、いまの人たちよりも優れていたとは思いません。実のところ、相場師として、私に外国人コンプレックスは皆無です。しかし、そこで教えられ、自分のスタイルとして定着したのが、メリハリをつけるということです。

当時は、今ほど運用競争が過酷ではなく、先行者利得もありましたので、古き良き時代だともいえました。何が良かったのかというと、クリスマス前後の休暇が1カ月近くもあるのは魅力的でした。長い夏休みもありましたね。その期間はもちろんポジションを取りません。完全に相場から離れ、心身ともにリフレッシュしてから、休暇明けを迎えたものです。

休暇中の時間は、本を読むのもよし、旅行をするのもよし、日頃の不義理を埋め合わせることに使ってもよいのです。相場から離れることを恐れる必要はありません。相場は実社会の動きや、経済活動と密接につながっているので、感受性さえ保っていたなら、何をしていても相場に役立つのです。むしろ、時々はポジションを持たずに、相場から離れることがいいのです。

私は著書やセミナーで、「ポジションを持たねば始まらない」と、積極的に相場を張ることをすすめています。個人が相場にたずさわる究極の目的は、自分の可能性を広げることです。知識が増え、経験が増え、資金が増えることのメリットは、その後の自分の可能性が広がることです。しかし、なにごとにも両面があります。ポジションを持つと、どうしても視野が狭くなってしまうのです。自分の利害に沿った側面から物事を見始め、多様な見方を捨てて、結論を急ぎます。そして、儲けることだけが目的となると、一部の人たちのように大儲けをしても、信用をなくしたり、社会のルールを踏み外してしまうことにもなります。それでは、自分の可能性を狭めてしまうのです。

回答を振り返ってみましょう。
(1)の「利を伸ばすためにも現地からアクセスして相場を見る」
気持ちは分かりますが、そこまでしていると、キリがなくなってしまいます。相場は短期決戦ではなく、長期にわたる戦いです。その方が、自分の可能性が大きく広がるのです。長く戦うためには、自分のペースで、無理なく戦う必要があります。エネルギーは、ここぞというときのために、蓄えておくのです。

(3)の「左遷を覚悟で出張を拒否する」
これは、もはや軸足を会社ではなく、投資に置いていることを意味します。1日の変動幅が月給を超えるポジションを抱えていたなら、会社よりも投資に魅力を感じるようになっているのも肯けます。しかし、投資生活のほうが、会社勤めよりも、本当に自分の可能性が広がるのでしょうか?一般に、会社勤めの方が、いろいろな人と出会い、いろいろな場面に遭遇します。また、とくに若い人にとっては、他人の下で働く時期を持つという実生活での経験は貴重なものです。先輩や同僚、後輩との、あるいは取引先との人間関係も、一生を通じて自分の財産となり、可能性を広げます。

専業の個人投資家はいつでもはじめられます。そして、一度なってしまったなら、会社勤めに戻るのは困難になります。焦ることはないのです。突然の海外出張を理由に、会社を辞めることなどありません。辞めないのなら、中途半端に左遷など覚悟せず、全力で仕事に打ち込むべきです。仕事を中途半端にしかできない人が、投資で成功するとは思えません。


※ダイヤモンド社の月刊誌「ZAi」の3月号(発売中:http://www.fujisan.co.jp/Product/5770)に、私の「株のトレード力養成講座」が特集されています(P124〜143)。3択問題29問とその解説、トレード力をアップするための要点、矢口式相場の格言6カ条など、私の話をもとに、ダイヤモンドの記者が図解入りでうまくまとめてくれています。なかでも私のイラストは、あまりにも感じが出ていると身内の人間には大受けしています(まぐまぐのイラストの方が、私は気に入ってます)。

同号は「確定申告」の特集号で、ほかにも一目均衡表などの「チャート教室」もあり、保存版です。全国書店、キオスクなどにもありますので、ぜひお求めください。600円です。

残念ながら不正解だったあなたは・・・

実際に運用をする前に、ほかの「投資心理に関する問題」で、さらに勉強しましょう。

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プロフィール

【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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