今週の解答
[個別銘柄に関する問題]
株式投資をはじめたあなたはチャートや新聞のニュースを参考にいくつかの銘柄を買いました。その後、半年ほど経って、新しい株を買いたいと思っていますが、現在持っているどの株を手仕舞えばいいでしょうか?
(1)マイナス15%ほどの含み損が出ている銘柄
これは、難しい問題です。なぜなら、あなたの株式投資は必ずしもうまくいってないからです。それでも、(1)マイナス15%ほどの含み損が出ている銘柄を売るのを、正解にする理由は、これがあなたの思惑とは一番かけ離れて、損失を出しているからです。相場で、思惑とは違った方向に株価が動き始めたなら、すみやかに手仕舞うのが鉄則です。その意味で、これを最良の選択としました。
この「トレードセンス養成講座」の目的は、あなたを採点することではなく、あなたに相場というものを理解していただいて、実際の相場でのあなたのトレード力をアップすることです。したがって、問題を深く考えていただくために、こんな3択を提示しました。これは株式投資を始めた誰もが遭遇する、一見ありきたりの問題のようでいて、この3択は相当のベテランでも難しかったと思います。
ここにはありませんが、ベストの選択はこの3銘柄をすべて売り払って、新しい銘柄を買うことです。今回の投資はうまくはいかなかったものの、こうすることで損失を最小限に抑えて、心機一転、新しい投資に向かえます。つまり、15%のマイナスと15%のプラスを同時に閉じることで、損益をかなり相殺でき、この半年間のリターンをゼロに近づけることができました。ゼロリターンは他の機会利益を放棄して、資金を寝かせてしまったのですから、投資としては失敗です。とはいえ、資金の減少だけはなんとか食い止めることができたのです。
ここでお気付きでしょうが、(1)の損失を数パーセントに抑えていたなら、プラスの方が大きかったはずです。つまり、株価が思惑とは違った方向に動き始めたはやい時期に、損切っておけば利益が出せたのです。そして、その資金を新しい投資に当てることができました。
ほかの選択肢もみてみましょう。(2)プラス15%ほどの含み益が出ている銘柄は、確かに利益が出ていますが、半年で15%というのは、値動きが悪すぎるように思えます。思惑通り値上がりしているので、持ち続けることに異存はありませんが、新しい株を見つけたとき、利食って、乗り換えるのも1つの方法です。少なくとも資金は増えるのです。売るべきではないというほど、魅力のある銘柄だとは思えません。
(3)全く値動きのない銘柄は、持っていることに意味を見出せない銘柄です。 先日の問題のように、動かなくても辛抱するにしても、半年は長すぎます。もっと積極的に銘柄を探して、乗り換えたほうが結果がついてくると思います。
損をできる限り小さく抑えるいっぽうで、利益は貪欲に追求する「損小利大」は、トータルで利益を残すための有効な手法です。それには、損は小さければ小さいほどいいのです。また、利益を膨らませるには待つことも必要ですが、時間をかければ利益が膨らむわけではありません。今回の投資は、おそらく投資後1、2カ月くらいで手仕舞っていた方が、よりよい結果が得られたことと思います。
書籍
プロフィール
- 【監修】矢口新(やぐち・あらた)
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1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。
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