今週の解答
[個別銘柄に関する問題]
ある日、新聞を読むと自分の持ち株が上場来の最高値をつけたというニュースがありました。含み益は3割ほどで、出来高を見ると落ち着いていて、投機的な上げではなさそうです。どのようにするのがいいでしょうか?
(3)買い増しをする
利の乗ったポジションを背景に、さらにポジションを増やすことを「買い乗せ」といい、大きく儲けるためのポイントです。他の選択肢のどれを正解にしても、それなりに筋の通った解説はできますが、買い乗せるには絶好の条件が揃っているので、あえて攻めの答えを正解としました。相場での勝負は、今日の問題のように利が乗っているときに、相場が自分の思惑通りに行っているときにするべきものなのです。逆に行った場合は、もちろん、速やかに損切ります。
「勝ちを大きくするための急所は、買い乗せです(売りから入った場合には、売り乗せ)。利食いを引き延ばすだけではありません。さらに買いを膨らませて、攻め続けるのです。
相場の天底で全額を注ぎ込むのは容易ではありません。また、常に底がどこかを試行錯誤し、損切りを繰り返しながら探してゆくわけですから、全額をいきなり注ぎ込むのは得策とは言い難いのです。
しかし、いったんトレンドを確認したなら、小さな額などで張っていてはらちがあきません。そこで行うのが買い乗せです。当然買いコストは上がってしまいますので、そこから下がれば利益は減ります。しかし、ゼロになるまでには手仕舞うことができるしょう。買い乗せして、そこから上がれば、ポジションが大きい分だけ利益も大きくなります。リスクが少なくて、期待利益が大きいという、絶好の攻め場なのです。
買い乗せのタイミングは、抵抗線を抜いてゆくときです。ふつう、抵抗線の近辺では反発の兆しがあるものなのですが、ここでの利食いを慎重にこらえ、抜けたと見るや買い乗せで勝負に出るのです。下げ相場では支持線を破るときが、売り乗せのタイミングとなります」。(拙著からの引用)
今日の問題には、判断のポイントなりそうな言葉をさりげなく散りばめてあります。上場来高値、含み益3割、出来高平凡、非投機的、などです。
高値更新はテクニカル的には買いシグナルです。とはいえ、実際のチャートを検証してみればよく分かりますが、その買いシグナルはいわゆる「騙し」で、その後に売られるケースの方がむしろ多いのです。そして、さらに詳しくチャートを検証してみると、売られる場合の多くは出来高が急増していることに気付きます。つまり、投機的に買われて高値を更新すると、高値更新が達成感につながるケースが増えるのです。今回は出来高が平凡で、投機的な感じがありませんから、すなおに買いシグナルに従い、どこまで上がるのかを楽しみにしてみましょう。
私は、常々、自分の枡で相場を計るなといっています。相場とはトレンドや転換点を見極めて売り買いするべきもので、自分のコストがどこにあるかなどは、相場の動きには関係がないのです。今日の問題でも、含み益3割を判断の材料にするのは的外れだという見方もできます。その意味では、1)のそのまま保持、を正解だとしてもいいのです。
とはいえ、相場には勝負の側面があります。勝負にあたっては、資金力や含み益の大小は大きな意味を持ってきます。含み益1割で買い乗せするのは危険ですが、3割なら、勝負してみる価値があるとなります。
買い乗せて、次にするべきことは、転換点の暗示に注意を払うことです。うまく上昇してから転換点がくれば、ポジションが大きい分だけ利益も大きくなります。しかし、高値更新で自分が買い乗せしたところが、実は転換点であった場合には、速やかに損切らねばなりません。仮にポジションが2倍になっていて、1割の下落で損切りしたなら、当初のポジションの利益が2割に減ったことと、新規ポジションでの1割の損失とで、ネットでは約1割の利益が残ります。ここで、当初の含み益3割が利いてきたのです。
では、2)の利益確定は間違いなのでしょうか?
利食いの強いところは資金力が増えることです。世の中に投資物件は自分が投資している銘柄だけではありませんので、増えた資金力を自由に有効に活用できる可能性を得ることができます。私は夢を追い過ぎて、利食い損ねてしまう傾向があるので、確定してこその利益と自分を戒めています。近日に出版される拙著の改訂版「実践・生き残りのディーリング」にも、第5章92項に「利食い千人力 ―簡単に利食うな、確実に利食え―」と題した項目があります。上記の買い乗せの説明も、第3章57項「買い乗せは2回まで」からの引用です。出版されたら、この講座でも告知しますので、買ってくださいね。
見事正解だったあなたは・・・
油断は禁物、ほかのカテゴリの問題にも挑戦してさらにセンスを磨く努力を怠らないようにしましょう。
書籍
プロフィール
- 【監修】矢口新(やぐち・あらた)
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1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。
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