あなたの答えは、残念ながら 不正解 です

今週の解答

[投資心理に関する問題]

出来高を伴い世界の主要株価指数が下落しています。日経平均も去年の最安値に近づいてきました。そういう状況で、あなたは去年のボーナスを使っていないことに気づきました。これを使う場合、どのような戦略がいいでしょうか?

正解は・・・
(2)安値を買えなくても、
相場が反転したのを確認してから買う

トレーディングの極意は、「谷越えを待って買い、山越えを待って売る」というものです。最安値で買って、最高値で売り抜ける、あるいは最高値で空売りして、最安値で買い戻すのは、痛快には違いありませんが、そうはうまくいかないものです。なぜなら、安値とは売られてきたから安値なのです。つまり、市場全体が弱気で、悪材料ばかりが取り沙汰されているときに買うことは至難の業です。同様に高値を売ることは、自分の判断だけを信じて、市場心理や買い材料に逆行することです。したがって(2)の、安値を買うことはあきらめて、相場が反転したのを確認してから買うのが正解です。

売り買いの指示を出すテクニカル指標は、相場が安値、高値から折り返して、ある程度すすんだところでサインを出すというものがほとんどです。一例をあげれば、テクニカル指標でもっとも一般的な移動平均線は、価格の動きを短期線、中期線、長期線の順番に追いかけます。相場が転換し、価格がいままでとは逆に進み始めると、短期線、中期線、長期線の順に転換を始めます。そして、価格を追って真っ先に転換を始めた短期線が、まだ転換には至っていない中期線を横切ることを、下から上ならゴールデンクロス、上から下ならデットクロスと呼び、それぞれ、買い、売りのサインとされます。価格が転換してからサインを出すまでの両端をフィルターと呼びます。

フィルターが小さ過ぎて、ささいな戻しでもサインにつなげてしまうと、いわゆる「騙し」が多くなり、売り買いが忙しくなってしまいます。いっぽう、フィルターが大き過ぎて、確認に時間をかけ過ぎると、サインを出した頃には、上げ下げサイクルのほとんどが終わっているようなことになります。売り買いの指示を出すテクニカル指標は、つまるところ、このフィルターの大きさをどうとるかが決め手となります。ディーラーの経験がものを言うところなのです。

他の選択肢も検討してみましょう。

(1)の、最安値で買うために分割で買い下がるのは、安値の目処がある程度わかっている場合には有効です。たとえば、大きな手掛かりとなる前の安値で相場が折り返すことを見越して、その少し手前から分割して買うという戦略は、うまく行けば大きな収益に繋がります。もちろん、前の安値で今回も折り返すなどという保証はどこにもないわけですから、下抜けした場合の対処方を考えておく必要があります。ここで損切りさえ忘れなければ、自分が取る最大のリスクは限定されることになります。あまり細かく分割し過ぎず(最大で3分割でいいと思います)、下抜けしたときの損切りを徹底するという条件さえつければ、これを正解にしてもいいのです。少なくとも(2)より簡単で、誰が行っても差が出ないはずです。

(3)は、いわゆる「休むも相場」を決め込むことです。ところが、相場が不安定だから危ないというのは、本当にそうなのでしょうか?私は常々、大底が抜けてやられるのも、上昇トレンド内のささやかな揺り戻しにやられるのも、やられる値幅が同じなら同じリスクだと言っています。つまり、急落後のいまになって「休むも相場」を決め込んでいる人は、急落前のリスクをどう見ていたのでしょうか?上昇トレンドを信じて高値圏で買うことのほうが、実はもっと大きなリスクであったわけです。不安定を認識して用心深くリスクを取る方が、安定していると信じて油断しているより安全なのです。

トレーディングでは値動きが大きい方が、収益のチャンスが広がります。大底が抜けてやられるのも、上昇トレンド内のささやかな揺り戻しにやられるのも、やられる値幅が同じなら同じリスクなのですが、大底で買うほうが格段に大きなリターンが望めるのです。

リスク管理を徹底していれば、負けることを恐れる必要はありません。その負けは儲けるためのコストだと割り切るのです。その考えでは、下げ相場を見越しての空売りも収益チャンスに結びつけられますが、今回の問題は使っていないキャッシュの運用ですから、どこで買うかを考えるのが正しい選択です。

残念ながら不正解だったあなたは・・・

実際に運用をする前に、ほかの「投資心理に関する問題」で、さらに勉強しましょう。

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プロフィール

【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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