あなたの答えは、正解 です!

今週の解答

[投資心理に関する問題]

最近あなたは、為替取引をはじめました。まだ慣れていないので、ファンドが行っているキャリートレード(金利の安い通貨を借り、金利の高い通貨で運用する手法)をはじめとするプロの手法を試してみようと思います。ビギナーがファンドの手法や戦略を真似ていいものでしょうか?

正解は・・・
(1)下手なうちはプロを真似るのがよい

子供が言葉を覚えるのも、スポーツのやり方を学ぶのも、最初は真似ることから始めます。プロのディーラーに手取り足取りで教えてくれる人はいません。駆け出しの頃は先輩ディーラーの隣に座り、様々な雑用をこなしながらディーリングを見て覚えます。個人投資家がプロのやり方を学び、真似ることは上達への近道です。その意味で、(1)下手なうちはプロを真似るのがよい、を正解としました。

とはいえ、キャリートレードが手法と言われるほどの取引かどうかは疑問です。キャリートレードとは、単なる高金利狙い、あるいは利回りアップのための為替投機に過ぎないからです。

キャリートレードでは、低金利通貨を借りてきて、高金利通貨で運用します。たとえば、2%の金利で円を借り、それを売って、6%の金利のドルを買います。ドルを買えばドル金利を受け取ることができるので、一定の運用期間後にドルで年率6%の金利を受け取り、円に換えて年率2%の金利を支払います。元本となる運用資金あたりで、年率4%の利益が出ます。

ところが、運用期間が終わったときの為替レートが4%以上円高になっていれば、為替差損が発生します。その為替差損を回避するために、たとえば1年間の運用の場合に1年後の日付でドル売り・円買いの為替予約と取ることにしましょう。その場合、1年後のドル円レートは、今日のドル円レートのちょうど4%、ドル安・円高になっているのです。為替の先渡予約では金利で損をする側が、為替レートで得をして、双方が納得するようになっています。双方が納得しなければ取引は成立しません。この金利差を反映した価格調整幅が「スワップレート」なのです。

低金利通貨売り・高金利通貨買いで金利差を取るキャリートレードでは、このように金利差が価格差で相殺されてしまうような意味のない為替予約は行なわないので、為替リスクがついてまわります。すなわち、金利差が目当てのキャリートレードといえども、相場観が必要なのです。とはいえ、投機的な売買でのキャピタルゲインが差し引きネットでゼロだったとしても、ドル買いから入って、ドルを保有している(ドルロングのままで夜を越す)形をとれば、1年で4%の金利差が稼げることになります。

ヘッジファンドなどがキャリートレードを行うのは、この4%の金利差に大きな魅力を感じているからです。いま、米ドル建てのジャンク債に投資しても、米国債の利回りに2%ほどの上乗せ金利しか得られません。ヘッジファンドは、信用リスクや流動性リスクが大きいことを承知の上で、ジャンク債の上乗せ金利2%が欲しくて投資しているのが実情です。ここで円キャリートレードで米ドルのジャンク債を買えば、米国債での運用利回りに6%の上乗せ金利が得られるのです。これは魅力的です。リスクマネーがあって、金利差がある限り、キャリートレードは続きます。

個人投資家が行う外国為替の信用取引は、金利の高い外貨を保有(外貨ロング)している限り、そのままキャリートレードを行っているのと同じです。スワップポイント狙いの為替取引は、実は大手ヘッジファンドが行っているのと同じキャリートレードなのです。

他の選択肢もみてみましょう。

(2)のように、損をしてまで、自分の手法を確立することはありません。そういう人は、自我を捨てて、上手い人の真似を始めたときから、損失が利益に変ります。自分の手法とは、利益を追求していくなかで確立されていくものです。

(3)は多くの人が同じ動きをして、ポジションが偏り過ぎたときには有効です。なにごとも行き過ぎると反動があるものですが、投機的なポジションは膨らみ過ぎると必ず閉じられるからです。しかし、そういった逆張りは、ビギナーにはリスクが大き過ぎます。素直に、経済の合理性にかなったポジションを取るのがいいでしょう。

見事正解だったあなたは・・・ 油断は禁物、ほかのカテゴリの問題にも挑戦してさらにセンスを磨く努力を怠らないようにしましょう。 ニュースに関する問題 個別銘柄に関する問題
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プロフィール

【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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