今週の解答
[資金管理に関する問題]
損切りが続き、気がつけば総資金の15%を1ヶ月で失ってしまいました。買った株は下がり、売った株は上がりと散々な状態であなたは自信を無くしています。どのようにすればいいでしょうか?
(2)調子が悪いので、小さめのポジションを取る
負け続けて、損切りコストがかさみだしたときの対処の仕方には、損切り点を早める、もしくは金額を減らすということが挙げられます。
もう1つ、(3)「相場のことはしばらく忘れて、同僚と飲みにでも行く」のように、相場に入る回数を減らすというのも可能です。しかし、売り買いのポイントに価格が来ていて、それを見逃すのでは意味がありません。私は、相場に入る回数というのは、相場の方で決めてくれるものと思っています。機会利益は常に追い求めていなければならないのです。
また、損切り点を早めるのもどうかと思います。損切り場所は本来、チャートポイントの外側に多少の余裕を持って置くべきで、それをさらに縮めるのは危険なのです。相場には相場の事情がありますから、自分の事情でレベルをいじくるべきではありません。したがって、(2)「調子が悪いので、小さめのポジションを取る」というのが、正解です。
負けが込んでいるときの対処には、金額を減らすことでコストを下げることが1番です。コストが半分になれば、生き残れるチャンスが2倍になります。3分の1になれば3倍になります。このように、脇を固く締めて逆風の時を食いつなぎ、機が熟すのを待つのです。プロのスポーツ選手でも、スランプの時には基本練習などのルーティーンワークを黙々とこなす、と言っています。
相場で長く生き残っているプロとは、連戦連勝の負けないディーラーだと思う人がいるかも知れません。仮にそうした人がいるのだとすれば、その人の運用成績はどのようなものだと思いますか?負けないのですから、年率に直せば簡単に数百%、数千%の運用益になってしまうことでしょう。しかし、運用のプロが集まっているヘッジファンドでも、2006年の平均リターンは18%ほどでしかありません。レバレッジを目一杯かけてそんなものなのですから、負けないのだとすれば、ものすごく小さな利益を狙っていることになります。
実のところ、生き残っているプロは、勝ったり負けたりの繰り返しの中から、より多くを残そうとしています。相場での知識や経験が増えると、確かに勝率は高まりますが、それでも五分五分の確率で、出来るだけ多くの収益を残そうと心がけます。つまり損小利大、思惑とは違ったときの損切りを早めにし、思惑通りの相場で大きく取ろうとするのです。とはいえ、今回の問題のように、買ってはやられ、売ってはやられで、損失が積み重なってくると、さすがにこたえてきます。
負けが込むというのは、相場に乗り切れていない証といえます。にもかかわらず、(1)「悪いことの後は良いことがあるので、大きいポジションを取る」のように、自分が金額を増やした時点から事態が好転する、と考えるのは全く論理的ではありません。相場に限らず、ある状況が一定期間続いているときには、その状況がもうしばらく続くという前提のもとに、物事を進める方が無難なのです。
状況の変化に対してアンテナを高くしてください。絶えず注意を怠ってはならないのはもちろんですが、まだ状況に変化の兆しもみえないのに、思い込みによってその方向に走り出すのは賢明ではありません。たとえ先見の明があったとしても、時期尚早ということがあります。相場でも乗り切れていないときはつまり負けが込んできたなら、順風が吹いてくるまで殻を固くしてじっと待つ忍耐が必要なのです。
焦らないことです。明日を読むという相場の仕事は、明日を信じることでもあるのです。
見事正解だったあなたは・・・
油断は禁物、ほかのカテゴリの問題にも挑戦してさらにセンスを磨く努力を怠らないようにしましょう。
書籍
プロフィール
- 【監修】矢口新(やぐち・あらた)
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1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。
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