今週の解答
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これまで相場がうまくなかった知人が、システムトレードで利益が出せるようになったと言っています。システムトレードというのは市販や、自分で作ったエクセルのプログラムで過去の値動きを検証し、最適な売買を行う方法だそうです。あなたは今のところ大きな損失もなく、相場の世界で生き残れています。自分もシステムトレードを使うべきでしょうか?
(3)システムトレードを勉強し、
参考にはするが、頼らない
相場での価格の動きには普遍的なものがあります。また、各商品の値動きには固有の癖らしきものがあるので、各市場のディーラーたちはその癖をよく理解して、相応に儲けることができています。したがって、過去の値動きを十分に分析し、勝ち組のディーラーたちの思考や経験をそれなりに反映したシステムなら、その自動売買は有効だといえます。また、システムは「わかっているけど実行できない」という人間の弱さを持たないので、思った通りの行動が取れず、いつも自分の行動に言い訳ばかりしているような人には有効です。
しかし、システムトレードの短所は、まさにその長所にあります。すなわち、売買の指示を出すトリガー(引き金)ポイントにくると、多くのオーダーが有無を言わせず自動的に執行され、必要以上に値が飛んでしまいます。人間が判断している場合には、考えられないような不利な価格でも、システムトレードでは売り買いを始めてしまうことになるのです。また、どんなシステムにもバグやエラーがつきものです。システムが出したありえないような指示を否定できるのは、ディーリングを熟知する人間だけです。その意味で(3)システムトレードを勉強し、参考にはするが、頼らないのが正解です。
自分なりの方法で相場に取り組み、それなりに結果を出している人にとっても、システムを学ぶことは相場力アップに有効です。たとえ、コンピューターやエクセルを使いこなすことができなくても、システムがどこで売買の判断を下すのかを知ることは、値動きの普遍的なパターンを知ることにつながり、自分の売買判断の参考になるのです。有効なシステムの指示なら、そのまま自己の売買につなげることもできるでしょう。
ところが、システムとしての完成度の高さは、売買のパターン化につながってしまいます。いつも決まったパターンで売買が執行されるようになると、その逆を利用されることにもなります。そうなると、売ってはやられ、買ってはやられを繰り返すことになります。
また、相場の動向が変わると、市場から多くのベテランディーラーたちが一斉に姿を消すようなことがあります。相場の動向の変化は、多くの場合、市場への新規の参入者がもたらします。どの市場にも常に新しい血が流れ込んできていますので、ある時点で有効であったシステムが、陳腐化してしまうことは避けられません。
私がまもなく立ち上げる株式ファンドも、銘柄の選択はシステム的に行います。とはいえ、そのシステムは絶え間なくアップデートし、その指示に従うのは、私のコンセプトに適合した場合だけです。その判断は、私と私のコンセプトに精通した少数の人間にしか下せません。人間の良さはファジーなところです。人が集まって作り、変数が多すぎる相場においては、システムはあくまで参考にしかならないのです。
書籍
プロフィール
- 【監修】矢口新(やぐち・あらた)
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1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。
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