あなたの答えは、残念ながら 不正解 です

今週の解答

[ニュースに関する問題]

株を保有中の会社が決算発表を延期することになりました。良くも悪くも驚きの決算発表である可能性があります。現在、多少の含み益(10%前後)があります。保有中の株はどのようにすればいいでしょうか?

正解は・・・
(1)リスク回避のために全部売る

トレーディングはメリハリです。キャピタルゲイン狙いの短期勝負では、大きなイベントの前ではどちらにでも動けるように、ポジションを軽くしておくのがプロの常識です。その意味では、(1)と(2)のどちらを正解にしてもいいのですが、決算発表が延期されたということで、下へのリスクが大きいと考えて、(1)リスク回避のために全部売るを正解としました。(3)では、せっかくの含み益が、損失に終わる可能性が高まります。

10%の含み益があるということは、決算の数値が良いとみて、買われてきた銘柄です。買われてきた銘柄は、決算発表を機に、材料出尽くしで売られる傾向があります。その決算発表が延ばされたのですから、誰かの売りが引き鉄となり、発表前にも急落する可能性が出てきました。このような場合には、発表延期にまつわる悪い噂が飛び交うものです。ここは、いったん利食っておいて、 10%の利益で増えた資金を背景に、次の動きに備えたいものです。利食いでは、手元に大事な戦力が大きくなって帰ってくるので、今後の動きの自由度が高まるのです。そして、また上向き始めたと判断できたなら買い戻せばいいのです。

ところが、そうは言っても(などとは言ってはいけないのですが、そうは言っても)、いったん利食ったものを、すぐに買い戻すのはなかなか難しいものです。そうするには、強烈なアドレナリンを必要とします。そこで、その銘柄から離れてしまわないために、(2)半分は売り、もう半分は保有したままにすることや、「つなぎ売り」が選択肢のなかに入ってきます。

つなぎ売りとは、利が乗った銘柄を保有したままで、信用取引で同じ銘柄を(先物がある商品は先物を)空売りすることです。合理的な行動という観点からは、つなぎ売りに意味はありません。売買手数料が余計にかかるだけでなく、品借り料などの信用取引の費用もかかります。現物株の担保価値の掛け目を超えた部分に関しては証拠金もかかります。

まだ上がると思えば信用で売るのは間違いですし、下がると思うならば現物を売り払うのが一番です。迷うならば、一部だけでも現物を売って利食えばいいのです。それでも、私はときどき、つなぎ売りを行ないます。なぜなら、そこで売ってしまったなら買えなくなる自分を知っているからです。1からやり直すだけの、精神的なエネルギーが足りないのです。

つなぎ売りする信用での売り建ては、現物の6、7割にします。そのまま上昇された場合の担保価値の掛け目ということもありますが、現物を持ったままでいるということは気持ちのうえで「ブル」のほうが勝っています。また、つなぎ売りの目的は経済の合理性ではなく、冷静さを取り戻すための精神の安定ですから、比率そのものにあまり意味はありません。

私の経験では、つなぎ売りをすると、そこから相場が上がっても下がっても予想された動きのように思えてきます。上がれば現物で利益が出る代わりに、少ない比率ですが信用で損が出ます。儲けは減っているのですが、まだ現物を抱えていてよかったという気持ちが起こります。下がればその反対に損失のほうが多いのですが、利食い損ねたという気持ちを信用の利益が多少なりとも補ってくれるのです。

何よりもいいのは、上がれば信用で損が出るために、信用の売り建てを買い戻そうとなり、結局は現物だけのロングでまだ上が狙えるのです。下がれば現物の利益がどんどん減るので、信用での利益を救いに現物を売り払うことができます。結果的に、信用の売り建てだけが残り、下を狙うことができます。いずれの場合でも、いったんポジションをゼロにすることに比べ、少ないエネルギーで相場を継続することができます。

お気づきですか?私は経済的な合理性のないつなぎ売りを、上がっても下がっても「良いほうに、良いほうに」解釈して利用しています。それで気持ちが楽になり、相場の出入りに要する精神的なエネルギーを節約しています。しかし、人によっては同じ展開を「悪いほうに、悪いほうに」と考えるでしょう。上がれば売らなければよかった、下がればつなぎ売りではなく現物を売ればよかった、となるからです。また、つなぎ売りでは、現物買い・信用売りともに大事な戦力を消費しているので、他のことをする自由が大きく奪われています。したがって、合理的に考えれば、悲観的に見る人のほうが正しいのです。

つなぎ売りより、半分だけ利食うほうが、経済的な合理性には適います。とはいえ、メリハリをつける意味でも、また今回の問題のように好材料とみなされていたものが先延ばしされたような時には、全部利食ったほうがいいでしょう。

残念ながら不正解だったあなたは・・・

実際に運用をする前に、ほかの「ニュースに関する問題」で、さらに勉強しましょう。

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プロフィール

【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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