あなたの答えは、残念ながら 不正解 です

今週の解答

[個別銘柄に関する問題]

気になっていた株の出来高が増加し、上昇トレンドに入ったようです。しかし、この株は東証2部の銘柄で買い気配と売り気配の差が離れており、成行で注文を出すと、3%ほど不利な価格で約定してしまいそうです。どのように対応すればいいでしょうか?

正解は・・・
(3)買い気配に近い価格で指値注文を出す

相場が上がると思っているのに、コストをけちって乗り遅れてしまったなら、何も得られないで終わります。2倍に(100%)上がるかもしれない銘柄に、3%をけちるのは馬鹿げていると思えます。とはいえ、3%上のオファー(売り気配値)で買っても、動かずにポジションを閉じる場合、今度は3%下のビッド(買い気配値)で売らねばなりません。これでは株価がまったく動かなくても3%の損失となってしまいます。3%のハンディを背負っての勝負は、得策とは言い難いのです。場合によっては(2)の「トレンドに乗り、成行で注文を出す」というケースを否定するわけではありませんが、まずは(3)の「買い気配に近い価格で指値注文を出す」ということでより有利なコストでの勝負に持ち込みます。

また、(1)の買い気配と売り気配に大きな差がある銘柄は、細心の注意を払って扱いたいですが、トレードしてはいけないとまでは言えません。

私はここで「勝負」という言葉をつかっています。相場の解説はエコノミストやアナリストなど頭脳の優秀な人が行います。ディーラーでも、銀行や証券、商社などの本部で働き、新聞やテレビなどでコメントを述べる人は理路整然と話しますので、相場をあたかも学問のように思われる人もいることでしょう。しかし、実際の現場は怒号が飛び交い、過剰なストレスで十二指腸潰瘍を患う人も出る修羅場です。会社員なのに、職場で先輩が後輩に鉄拳制裁をしたり、あるいは部下が上司に真っ向から食って掛かることも珍しくありません。ディーリングルームとは、なかなか人間味のある所なのです。

エコノミストやアナリストが、どんなに適切な投資物件を解説してくれても、実際に売り買いするのが生身の人間である以上、恐怖や欲、喜怒哀楽から逃れることはできません。また、市場には「売り手」と「買い手」がいて、彼らの事情や意向は真っ向から対立しています。投資物件としては誰が見ても魅力的である商品にも、必ず「売り手」がいるのです。「買い手」の側でも、そんなに良い商品ならば、早く買いたい、多く買いたいと競争が起こります。そんなとき、自分に有利な取引を行い、キャピタルゲインを上げるためには、押したり引いたり、飛び込んだりと、相場の持つ「勝負」の側面に注目する必要があるのです。

勝負を有利に進めるには、コストをできるだけ低く抑える必要があります。上がりそうだからと高値を買うことは、より高く売りたい人の術中にはまることになります。幅があってもビッドとオファーがあるということは、そのビッドでは、買いたい人が多くても、そのオファーではまだ売りたい人が多いのです。そこであなたがまず行うべきことは、ビッドの内側に自分のビッドを入れることです。このとき、市場が何の反応も示さなければ、あなたはそのビッドを入れたままにしておきます。いずれ、その価格で買えることでしょう。

予想される反応の1つは、もっとも高いビッドであるあなたの価格を、誰かがいきなりたたいてくることです。上昇トレンド入りしたと見えるということは、しばらくぶりの高値を更新したのですから、その期間でもっとも高い価格で売りたい人が出てきても不思議ではありません。そして、その売りが多くの売りを引き出す引き鉄となり、そのまま株価が下落することもありえます。

あるいは、あなたのビッドに合わせて、他のビッドが並んでくることも予想されます。高値を買うのは嫌だが、なんとか買いたいと思っていた人のビッドを、あなたのビッドが引き出してしまうのです。

そのとき、ビッドが上がったために、いままであったオファーが逃げたり、オファーを買いにいく動きが出ることもあります。いずれの場合も、あなたの行動により市場のバランスが崩され、買いたい、売りたくないというムードが支配するようになるのです。

ここからが勝負です。ビッドが上がり、オファーが買われるというように、相場に動きが見えたときには、他の人も動揺し始めますので、そのまま上がる可能性が出てきます。あなたが買うことも選択肢に入ってきます。もっとも、その辺りで買いたい人の買い物が一巡してしまうと、なにしろ、しばらくぶりの高値なのですから、売りたい人はいくらでもいます。勝負なのですから、勝つか負けるかは分かりません。逆に行ったら、すかさず損切るのみです。

しかし、動いてもいないときには、高いオファーを買っても、誰もついてこず、何も起きないことが多いのです。出来高の少ない株式、FX取引のマイナー通貨、期先(満期日が遠い)や実勢価格から離れた行使価格のオプションなど、動きが少なくてビッド・オファーの離れたものを売り買いしたいときは、その少し内側に自分のビッド・オファーを入れるのが良いでしょう。

残念ながら不正解だったあなたは・・・

実際に運用をする前に、ほかの「個別銘柄に関する問題」で、さらに勉強しましょう。

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プロフィール

【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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