今週の解答
[その他の問題]
テレビを見ていると、ある個人投資家が100万円を3年で1億円にしたというニュースがありました。海外でもこのようなケースはあるようです。個人投資家は、1年でどれくらいのリターンがあればいいのでしょうか?
(3)ほとんどの人が損をする世界なので、損をしなければ良い
達成目標を定め、目標が遠くなると焦りがでます。一方、早く達成してしまうと、今度は気の緩みが出ます。経営者やプロの資金運用者で社会のルールを踏み外してしまう人がいるのは、焦りや気の緩みが出るためでしょう。私は技術で何とかなるのは、逆に進んだ時の損を膨らませないで、トータルでそこそこの利益を残すことだけだと思っています。「運」用とはよく言ったもので、大儲けするには、運(相場の神様)の助けもいるのです。もっとも、そこそこの利益とはいっても、損失を抑えながら、収益機会を増やせば、それなりの利益にはつながります。しかし、そのためには適当な売買機会を逃さないシステムと、やり続ける時間と気力とが必要です。一般の個人投資家は、(3)の「ほとんどの人が損をする世界なので、損をしなければ良い」という気持ちでいて、チャンスの時だけ攻めるのがいいと思います。これでも、年率2、3割くらいはとれるでしょう。
プロには収益目標というものがあります。プロの資金運用者のなかで、もっとも絶対利益を追求し、もっとも規制の緩い(いわば、儲けるためには何をしてもいい)ヘッジファンドの、2006年の平均リターンは13%(参考資料:Hedge Fund Assets Rise 30% to $2 Trillion Worldwide)です。意外に低いでしょう?それでも、他の運用機関よりは高いらしく、ヘッジファンドへお金を預ける人は年々増え続けています。つまり、きっちりと収益目標を立てて、達成するためにルールの範囲ぎりぎりのことを行い、大きなレバレッジをかけていながら、たかだか13%のリターンしか上げられないのが、プロなのです。
プロと個人投資家とは違います。プロには説明責任がありますので、できないことも多く、また余計なこともしてしまいます。収益目標があるために、常にプレッシャーを感じ、待つことが苦手になります。運用者だけではなく、いまはプロの経営者も、短期的な利益追求に追いまくられ、資産を常に最大限に有効利用することを迫られています。なかなか長期的な視野が保てないのです。
100万円を3年で1億円にしたことはありませんが、相場の神様が微笑んでくれれば、十分に可能な数字だと思います。あるいは、損小利大を徹底し、売買の頻度を高めます。そして、儲けを次のトレードに全額注ぎ込むという複利効果を利用すれば、資産を100倍にするのに、3年もかからないでしょう。では、なぜ多くのプロは、13%前後のリターンしか上げられないのでしょうか?
ある国の株式市場が1年で10%上昇したというとき、それは年末同士など、ある一点の価格を比較して行います。つまり、2005年末で買って、2006年末で売ったとすればという、「保有」によるリターンを表してます。そして、そのリターンに、配当収入やオプション売却によるプレミアム収入、またその国の金利が低ければ為替ヘッジをして、金利差をスワップコスト収入にかえるなどして上乗せすれば、合わせて数パーセントのリターンをアップさせることができます。あるいは、値上がり率の良い銘柄により多くの資金を配分すれば、その分リターンは(リスクも)上昇します。そこに3倍のレバレッジをかければ、リターンを40%以上に上げることが可能となるのです。しかし、「保有」にこだわっている限り、10%上昇した市場から40%のリターンを上げるのは限界的です。そして、3倍のレバレッジはそれらが逆に進んだときには、3倍の損失となってしまいます。
ところが、1年で1%の上昇でも、あるいは下落でも、株価は大きく上下に振れているのが常です。3倍のレバレッジなどかけなくても、株価は上昇幅の数十倍も動いているのです。ディーリングの収益源はここにあります。つまり真正面から「価格の動き」というものに立ち向かうことが、100万円を3年で1億円にするための第一歩なのです。
私はもともと偶然に金融の世界に入りました。そして、業務としてディーリングを始め、純粋な疑問から「価格の動き」の本質を見極め、ディーリングの技術を高めてきました。したがって、私の目的はいわゆる「金儲け」ではなく、自分自身で「収益目標」を定めたこともありません。これくらいはいけるかな、という漠然としたイメージがあるのみです。しかし、目標がないと動きにくいという人には、「10回売買を繰り返して、必ずプラスにする」、「10回売買を繰り返して、10%のリターンを上げる」など、自分に無理のない範囲での目標を設定することをお勧めします。これが安定してくれば、売買頻度により、ある程度の収益の目処がつくようになります。このように損小利大を心掛けていて、相場の神様が微笑んでくれたなら、大化けすることになるのです。
見事正解だったあなたは・・・
油断は禁物、ほかのカテゴリの問題にも挑戦してさらにセンスを磨く努力を怠らないようにしましょう。
書籍
プロフィール
- 【監修】矢口新(やぐち・あらた)
-
1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。
メールマガジン
- 矢口新のメルマガ
さらに詳しく勉強してみたい方にはこちらの無料メルマガをおすすめします。
-
- 相場を知る・より安定した将来設計のために
投資運用の基本を押さえれば、やればやるほど上達します。自己責任の時代。相場で飯を食いたい。息の長い相場生活を送りたい。そんなあなたへ、相場のプロからひとこと、ふたこと。「生き残りのディーリング」の著者の相場解説!
- まぐまぐ!・有料メルマガ
-
- 相場はあなたの夢をかなえる─有料版─
ご好評のメルマガ「相場はあなたの夢をかなえる」に、フォローアップで市場の動きを知る ー有料版ー が登場。本文は毎週月曜日の寄り付き前。フォローアップは週2〜3回、ホットなトピックについて、より忌憚のない本音を語る。「生き残りのディーリング」の著者の相場解説!
-
【840円/月(税込)/毎週 月曜日(祝祭日・年末年始を除く)】