あなたの答えは、残念ながら 不正解 です

今週の解答

[個別銘柄に関する問題]

投資目的で買った海運株が、ここ数日投機的な値上がりをしています。日によっては1日で10%〜20%程の値上がりもありました。1ヶ月で50%程の含み益があり、あなたは利確したくて仕方がありません。持ち株はどのようにすればいいでしょうか?

正解は・・・
(2)値動きが荒くなり、投資には適さない株になったので売却する

あなたが投資目的で海運株を買ったとして、当初の目標リターンはどれほどのものだったのでしょうか?目先のキャピタルゲインを追い求める投機ならともかく、じっくりと腰を据えた投資では、通常株価が2倍になるとは思っていないと思います。仮に、1年持てば2倍になると考えていたとしても、1カ月で1.5倍になったなら利食ってしまっていいのです。そして、増えた資金で別の投資先を探します。あるいは、当初の海運株が元の値段の120%近くにまで売り込まれたなら、また買えばいいのです。というわけで、正解は(2)の「値動きが荒くなり、投資には適さない株になったので売却する」となります。

私は自著で「投資と投機とでは扱う資金が違うので、運用方法も違ってくるべきだ」と勧めています。あなたが投資家なのか、あるいは投機家なのかを知る一番の方法は、時間的に余裕のある、当面は使う予定のない資金での運用なのか、信用取引を含めた借入金での運用なのかを問うことです。

余裕資金での運用は投資です。また、気に入った会社の株を持ちたい(部分的なオーナーになりたい)、あるいは株主優待制度に惹かれて、配当金を受け取りたい、などといった「保有」を前提とした購入は投資運用となります。一方の投機は、当初から売り戻しを前提とした買い、当初から買い戻しを前提とした売りで、狙いはその限られた期間内での「キャピタルゲイン」です。信用取引は、返済売り、返済買いがセットになっているので、典型的な投機となります。借入金による売買も、債務の返済日までに一勝負を終える必要があります。デイトレ(日計り)も、その日のうちに売買を完結させるのですから投機です。

投資では、株式の銘柄そのものを詳しく分析(ファンダメンタルズ分析)するのが基本です。インデックスなど株式市場全体に投資する場合でも、景気や企業業績を通じて株式市場そのものを分析し、他国の市場との比較や、債券、不動産、商品相場、現金など、他の投資物件との比較をもって投資判断の基準とします。

投機でも、対象物件そのものを詳しく分析することは間違いではありません。しかし、限られた時間内で収益を確定するには、もっと大切なのがタイミングです。そのタイミングを逃さないためには、時には対象物件を吟味する時間がないこともあります。また、投機の狙いはキャピタルゲインですから、ただ上がっている(他の人が儲けている)という理由だけでも十分に購入の動機になり得ます。したがって、最も注意しなければならないのは、値上がりの期待だけで投機筋が買っている相場に、投資尺度を無理やりに当て嵌めて、いつまでも上がり続けると思い込むことです。値上がり期待だけの相場にまともな材料はいりません。投機では、ときには材料は後からついてくることさえあるのです。

1カ月で50%の値上がり、1日で20%の値上がりというのは、投機資金の流入を暗示しています。投機資金の狙いはキャピタルゲインです。どこかで売るために買っています。自分がそういう相場に巻き込まれ、一喜一憂して疲れ果ててしまわないためには、いい加減なところで利食って、一抜けたとやるのが得策です。投機筋が一勝負を終えて、つまり買ったものを売り終えて、落ち着きを取り戻したところで入り直すのです。

残念ながら不正解だったあなたは・・・

実際に運用をする前に、ほかの「個別銘柄に関する問題」で、さらに勉強しましょう。

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【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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