あなたの答えは、残念ながら 不正解 です

今週の解答

[個別銘柄に関する問題]

今後、金利が上がり、苦戦するといわれる消費者金融業界ですが、四季報を見ると外国人持株比率が増加している会社が目立ちます。この情報で利益を出そうとする場合、どのような方法がいいのでしょうか?

正解は・・・
(1)情報はあてにならないので、チャートでトレードをする

相場へのアプローチには様々な方法があり、これだけが絶対正しいというようなものはありません。とはいえ、外国人に日本の実情は分からない、あるいは外国人は日本株買いの主役なので従うなどと、売り買いの手掛かりとしてしまうのは、あまりにも心許ないでしょう。チャートは少なくとも過去の値動きの忠実な記録です。その記録をもとに値動きの癖やトレンドを見出してトレードするのが、この3択の中では唯一のまともなアプローチです。(1)が正解となります。


金融業とは、低い金利で調達した資金を、より高い金利で貸出し、その利ざやを取るものです。このように資金を右から左に流して利益を得ることについて、虚業のごとくみなす人もいますが、製造業のようにモノをつくるにも、商社や小売業などのようにモノを右から左に流すにも、元手となる資金が必要です。実体経済のなかで、資金の調達機能を専門化したものが金融業だと考えれば、その役割の大きさは否定できないことと思います。


米銀は個人の預金などで調達した資金を、古くから企業貸出や個人貸出で運用しています。企業貸出という産業金融ではそれほどの高金利は取れませんが、ロットが大きいことと、貸し倒れリスクが少ないことでビジネスの安定がはかれます。いっぽうの個人貸出という消費者金融ビジネスは、より高い金利を得ることが出来ますが、貸し倒れ、延滞などのリスク管理が大変です。そのため、米国では個人信用情報機関や債権回収会社(サービサー)などのインフラが発達しています。


日本の場合は、銀行などの大手金融機関は扱いやすい産業金融に特化し、消費者金融はもっぱら市井の貸金業者などが行ってきました。


現在、消費者金融業者は、そうした市井の小さな貸金業者を含めて全国に1万3,000社ほどあるといわれています。一部の最大手と呼ばれるところを除いては、一般に規模が小さく、年売上高5億円以上で大手消費者金融業者と呼ばれ、100社近くあります(全従業員は3万人弱)。彼らは主として銀行などの大手金融機関から借入れた資金を、より高利で個人向けに貸し出しています。


日本では、こうした住み分けが行われてきたわけです。そして、消費者の生活レベル、家計の財務内容の向上とともに、消費者金融業者も大きく成長してきました。


ここにきて、日本の消費者金融業界は創業以来の試練ともいうべきものにさらされています。銀行などの大手金融機関が、成長著しい個人マネーに注目し始めたことと、いわゆる「グレーゾーン金利」の撤廃です。


2009年末をめどに、出資法の上限金利(年29.2%)は、利息制限法の上限金利(年20.0%)に引き下げられることが決まりました。また、個人に対する融資が原則年収の3分の1以下に制限する総量規制が導入され、複数の業者からの借り入れを把握するための信用情報機関が創設されることになっています。


つまり、これまで自らが管理していた貸し倒れ、延滞リスクを当局がある程度管理してくれるようになります。リスクを取ることで儲けていた業界が、リスクを取ることを制限されるのです。


金融庁が発表した2005年度の貸金業統計によると、グレーゾーン金利が適用された消費者向け無担保融資の残高は、全融資額15兆5,798億円に対して11兆4,095億円と、73.1%を占めています。その大半ともいえる貸出の金利収入が減少するわけですから、大幅な減収は避けられません。また、調達金利も上昇基調ですので、利ざやは更に減少します。それらを反映して、上場している大手の消費者金融関連株は下げ基調となっています。


もちろん、この法律は借り過ぎや、支払い金利の負担に耐えられない利用者を保護するためのものですが、同時に業者には小さな利ざやでもより安全な貸出を推奨するもので、規模のメリットを追及せざるを得ず、業界再編にもつながるものです。また、どうしても借入が必要な人が借りられずに、いわゆる闇金融に走ることも考えられます。闇金融業者はもともと「法外」な利息を取っていますので、法の下での金利が下がり借入が困難になるほど、ビジネスチャンスが広がるでしょう。


外国人がこれらの株に注目しているのは、もともと消費者金融に馴染みがありノウハウがある、日本の個人マネーに注目している、業界再編を見込んでいる、株価が悪材料を織り込んできている、などが要因かと思われます。それが正しいかどうかは簡単には分かりません。私はチャートを手掛かりにするのがいいと思います。

残念ながら不正解だったあなたは・・・

実際に運用をする前に、ほかの「個別銘柄に関する問題」で、さらに勉強しましょう。

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【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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