今週の解答
[資金管理に関する問題]
日経平均が暴落したにも関わらず、あなたは現金比率が高く、大きなダメージは受けませんでした。RSI、ボリンジャーバンドなど逆張り系のテクニカル指標では、多くの銘柄に売られ過ぎのサインが出ています。またチャートを見てもこれまで2、3カ月ごとに暴落しており、今回はその2カ月目に当たり、すぐに反転するようにも思えます。ここから買っても良いのでしょうか?
(3)頭は他人にくれてやり、反転を確認してから買いの注文を入れる
相場は常に波動をともなって動きます。したがって最も効率的なトレードは、波動の山で売って谷で買うことです。ところが、どこが山でどこが谷かは後になってから分かるのです。それらのことが理解できていたなら、前もって山や谷を予測するよりも、反転を確認してから、正しくは確認したと判断できてから、売り買いを始めるのが効率的だと分かります。つまり、(3)頭は他人にくれてやり、反転を確認してから買いの注文を入れる、が正解です。
売り買いの指示を出すテクニカル指標のほとんどは、この反転の確認に工夫をこらしています。たとえば、移動平均などは価格が反転した後は短期線、中期線、長期線の順に後追い反転を始めます。そして先に反転した短期線が中期線を、上から下に抜けばデッドクロス、下から上に抜けばゴールデンクロスと呼ばれ、それぞれ売り買いのサインとされます。すなわち、価格の反転からクロスまでが反転の確認に要する時間と値幅なのです。その上下の捨てる値幅分をフィルターと呼びます。
RSIなどは、短期間に大きく上昇、または下落すると、それぞれ買われ過ぎ、売られ過ぎのサインを出すようになります。RSIそのものは売り買いのサインにつなげるものではありませんが、買われ過ぎを表す数値が下げ始めてから、売り始めろという人がいます。つまり、買われ過ぎになったからといってすぐに売るのは危険なのです。
ボリンジャーバンドは、ヒストリカル・ボラティリティを目で見えるようにしたものとお考えください。たとえば、過去の実際の値動きを表わすヒストリカル・ボラティリティが16%の株があったとします。ボラティリティの表示は年率でなされるので、まず1日当りのボラティリティになおすことにします。
ここで「ある期間でのボラティリティが1%である場合、その期間を2倍にすると、ボラティリティは1.41421356%になる」という事実があります。つまり、√2になるのです。土日休日を除いた1年の立会日が約256日だとすると、√256は16ですから、年率のボラティリティを16で割ると1日分が出ます。すなわち、この株の場合だと、1日のボラティリティは1%になります。
この場合、オプションの理論に用いられている正規分布の確率論では、この株価は68.3%の確率で引け値が前日の引け値の上下1%ずつの変動幅に収まることになります。また、95.4%の確率で上下2%ずつの変動幅に収まり、そして99.7%の確率で上3%下3%の幅に収まることになります。
これがヒストリカル・ボラティリティが32%の株だと、1日のボラティリティは2%になるので、68.3%の確率で引け値が前日の引け値の上下2%ずつの変動幅に収まります。また、95.4%の確率で上下4%ずつの変動幅に収まり、そして99.7%の確率で上下6%ずつの変動幅に収まることになります。このことは、ヒストリカル・ボラティリティが32%の株が1日で6%以上下落したなら、ほぼ100%の確率で引け値では6%の内側に戻っていることを表わしています。大きく売られたなら、買って良いのです。
もっとも、標準偏差の両端の極端に確率の低いゾーンでは、極端に例外が多いとも指摘されています。つまり、株価の急落急騰時に確率を頼みに損切りを怠ると、あり得ないほどの確率が頻発して死んでしまうのが相場でもあるのです。
これらのことで分かるのは、問題の(1)逆張りで買った場合、下がり続けることも多いので避ける、(2)指標や日柄から考えて成功率が高そうなので買っていい、はどちらも一面では正しいのですが、正解とはできません。キャピタルゲイン狙いのトレードは、谷越えを確認してから買い、山越えを確認してから売るように努めればいいのです。
見事正解だったあなたは・・・
油断は禁物、ほかのカテゴリの問題にも挑戦してさらにセンスを磨く努力を怠らないようにしましょう。
書籍
プロフィール
- 【監修】矢口新(やぐち・あらた)
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1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。
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