今週の解答
[個別銘柄に関する問題]
あなたはチャートを意識してある株を買いました。買って数週間後、含み益が3割ほど出た頃に、まだ割安だっためか海外ファンドがTOBを表明しました。今後TOBが失敗し、株価が下落するかもしれませんが、さらに値上がりする可能性もあります。持ち株はどのようにすればいいでしょうか?
(2)買い遅れた投資家の買いで値上がりを想定し、買い増しをする
相場での上げ下げが5分5分の確率だとすれば、常々私は思惑とは違った2回に1回は速やかに損切り、狙い通りいった残りの1回で勝負しろと言っています。それで、損切りのコストは比較的小さく限定され、利食いゾーンの時にいかに利益を伸ばすかにエネルギーを使えるのです。今回の問題は利食いゾーンで材料が出た時の対応で、(1)はいわゆるドテン、(2)は買い乗せ、(3)はシンプルな利食いです。このケースでは、買い乗せで勝負に出る条件が揃っているので、正解を(2)買い遅れた投資家の買いで値上がりを想定し、買い増しをする、とします。
損切りコストは小さければ小さいほど良いに決まっています。しかし、あまりに小さな価格のぶれに、いちいち動揺して損切っていたのでは、なかなか大きな利益は狙えなくなります。そこで多少は余裕を持って、1回の損切り幅を7〜8%やられたら、と決めることにします。そして、利益を上げる時には、最低でもこの損切り幅を超えることを狙います。
相場に合理的にアプローチするには、損切り幅は7〜8%以下、利食い目標は15%以上などと考えるようにします。これで10回のうち5回損切り、5回利益を上げれば、差し引きで収益が残せるのです。今回のケースの3割の利益だと、4回分の損切りコストを賄うことができます。また、数週間で3割の利益は、数週間を5週間ほどと考えれば、単利でも年率300%ほどの利益となります。このように考えると、(3)のように、ここで利益を確定しても良いのです。
とはいえ、思いのほか相場をはずし続け、想定外に負けが込んでしまうこともあります。また、勝ったり負けたりの繰り返しで、なかなか思うように儲けられないこともしばしばです。相場も勝負ごとですから、勝てる時には、大きく勝っておきたいものです。
勝ちを大きくするポイントは買い乗せです。3割上がったところで同じ量を買い乗せれば、そこからの上昇では、いままでの2倍のスピードで利益が膨らんでいきます。もっとも同じことは、買い乗せた後に下がる場合にもいえて、ポジションが2倍になっていたなら、2倍のスピードで利益が減少していきます。したがって、買い乗せが間違いだったと気付いたなら、速やかにポジションを閉じる必要が出てきます。たとえば、1割下落したなら、もとからあったポジションからの利益が2割に減ったことと、買い乗せ分の損失が1割とで、都合1割の利益しか残りません。また、そこから5%下落したなら、当初の利益はすべてなくなります。
今回のケースでは、買い乗せ地点から通常の損切り幅7〜8%の下落でもそれなりの利益が確保できますので、リスク管理的には挑戦しやすいトレードです。また、海外ファンドは割安だと見てTOBをかけるのですから、TOB価格は時価よりも上のはずです。つまり、今より高く買いますよと名乗り出た買い手がいるのですから、通常株価はTOB価格に鞘寄せするように上昇します。少なくとも問題点が明らかになるまでは上がるとみていいのです。
材料的には勝負したいところ。リスク管理的には有利な勝負。ここは、やはり買い乗せです。
(1)日本で買収を行うのは難しいので、持ち株は売り、カラ売りをする、というのは、自分の思い入れだけで、高値での買収を考えるような大口の買いに売り向かうことです。無謀ではないですか?この銘柄には、まだ悪材料が出ているわけでもなく、下落の兆候も見えません。売るのは、株価が下落し始めてからでいいのです。
書籍
プロフィール
- 【監修】矢口新(やぐち・あらた)
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1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。
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