あなたの答えは、正解 です!

今週の解答

[個別銘柄に関する問題]

買って間もない自分の銘柄が株式雑誌に待望銘柄と紹介されました。発売当日は出来高を伴い1日で15%ほど値上がりしましたが、その後は下落する一方で、もうすぐ利が消えそうです。どのようすればいいのでしょうか?

正解は・・・
(3)一旦手仕舞う

相場は様々な要因で動きます。今回の問題のように、有力なメディアに取り上げられれば、それだけで他の多くの銘柄から抜きんでて目立つ存在となります。その解説が説得力を持っていたなら、買いを集めて1日で15%の値上がりも可能です。しかし、株価を押し上げた買い手が、短期的なキャピタルゲインだけを狙っているとすれば、近い将来に売るために買ったに過ぎません。1日だけ上げて、その後は下落する一方だというのは、その当日から利食いの売りがでているのです。彼らは実のところ株式雑誌での解説を信じてはいません。利用しているだけなのです。あなたが材料を利用して良いところで買えたのなら、良いところで利食うべきでした。利が乗っているのなら、まだ間に合います。一旦手仕舞うことをお勧めします。正解は(3)となります。


相場は様々な要因で動きますが、市場の参加者を分析すると、大きく2種類に分けられます。保有をする人たちと、キャピタルゲインを狙って一時的に売り買いを行う人たちです。


株式市場で保有する人たちとは、創業者一族などオーナーシップが目的で保有している人、従業員持ち株会など会社と運命共同体的意識を持つために保有している人、他企業や金融機関との政策投資の一環として相互に株式を保有し合う、いわゆる「持ち合い」など、その銘柄だけを特定し実需的に保有する人たちです。また、年金基金による投資や、高配当や株主優待制度に惹かれての投資も、その銘柄だけを特定するわけではありませんが、長期保有によるメリットを享受しようとしています。


一方、デイトレ(日計り売買)とは、買ったものは基本的にその日のうちに売り戻し、売ったものはその日のうちに買い戻す売買です。目的はキャピタルゲインで、儲かりそうならどの銘柄でも構いません。株式だけでなく、債券や為替でもいいのです。デイトレではなくても、金融機関のディーラーやヘッジファンド、信用取引を利用する個人投資家なども、こうしたキャピタルゲインが主目的で市場に参入しています。投機だけが目的の、いわば仮需なのです。彼らも買えば保有しますが、その銘柄だけを特定する需要などないので、売り戻すことが前提の保有です。一時的な保有なのです。


実は、両者のこの違いが相場の価格変動をつくっています。このことは相場を理解するうえで最も重要なことなので、私がこれまで書いた10冊の著書全部で相当詳しく説明しています。

参照:http://www.geocities.com/dealers_web/bookshop.html

相場観を持ち売り買いを始めるにも、ポジションを持った後に始まるリスク管理も、すべてはこのことを理解するところから始まります。


一言で言えば、投資(実需)がトレンド(相場の方向)をつくり、投機(仮需)がボラティリティ(価格の変動)を与えています。したがって、保有する人が買えば、トレンドとして長く上昇することになりますが、キャピタルゲイン狙いの人が買えば、高騰した後に下落します。


たとえば、原油をはじめとした商品相場が急騰しています。中国など新興国の需要のためだと言われていますが、その実需の何倍もの量をヘッジファンドなどの投機筋が買っています。彼らはキャピタルゲインが欲しいだけで、原油そのものが欲しいわけではありません。つまり、いつか売るためだけに買っています。それでも簡単には急落しないのは、買っても買っても彼らのもとにキャッシュが入り続け、売る必要がないどころか、まだ買うものを探しているからです。商品相場が高いのは、実需があるというよりも、いわゆる過剰流動性、金余りのためなのです。そのことが分かっていると、商品相場の本格的な下落は、金余りがなくなってから、つまり短期金利が上昇して借り入れが困難となり、長期金利が上昇して運用資金を惹きつけるようになってからだと予測することができます。


今回の問題でも、株式雑誌が取り上げてから買いにくるのは、ほとんどがキャピタルゲイン狙いの投機資金です。上がれば利食い売りが出るのです。とはいえ、投機筋がずっと注目していたなら、下げたところには買いが入ります。つまり、あなたは投機的な動きに翻弄されてしまうことでしょう。(1)のように、「損少利大を心がけているので、そのまま保持する」つもりでいても、安値で損切らされるはめにもなります。また、(2)のように、「雑誌を見て買った人がいるので手仕舞い、空売りをいれてみる」と、いきなり持ち上げられることにもなります。もともと、雑誌を読まねば得られなかった利益です。一勝負終わったと手仕舞うのが賢明です。

見事正解だったあなたは・・・

油断は禁物、ほかのカテゴリの問題にも挑戦してさらにセンスを磨く努力を怠らないようにしましょう。

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プロフィール

【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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