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あなたは成長が見込める資源国への投資の一環として、南アフリカ・ランドを買うことを考えています。ドルやユーロに比べて金利が高いことも魅力ですが、あまり馴染みはありません。一般の投資家がこうした馴染みのない国の通貨で取引をしてもよいでしょうか。

正解は・・・
(1)(2)(3)全て

リスク管理はポジションを取った後に始まります。ただし、オプションなどを組み込んだ仕組み商品や、サブプライムなどのローン証券化商品のように、流動性が極めて低い商品はリスク管理が困難です。特に、流動性を提供すべき業者のほとんどが買ってしまった商品などは、売りたい時に買い手が見つからなくなりますので、効率的なリスク管理ができなくなります。リスク管理が難しいと前もって分かっている商品に、手を出すことはないのです。


しかし、南アフリカ・ランドは一国の通貨で、それなりに活発に取引されています。格別にリスク管理が難しいという訳でもないでしょう。ここは、(1)、(2)、(3)のすべてを正解としておいて、それぞれの場合について述べたいと思います。


投資家にはそれぞれ自分に合った投資スタイルがあります。ある人は世界中を旅して回り、将来性が見込める物件が割安に放置されているのを見定めて投資しています。その目は常に世界中に開かれていて、どこかに面白い物件がないかと探し求めています。その人はドル円などの主要通貨の取引も行っていますが、もう1つうまく行かないようで、収益の大半は他人の目には危ない(=リスク管理が難しい)と思われる物件から上げています。とはいえ、その人は自分で現地に出かけて、出来るだけ多くの情報を得て投資しています。私などの目から見ると、その人の投資は開放型で、自由で大胆で楽しそうです。


私のスタイルは何というか、いわば閉鎖型で、価格の変動要因やリスク管理を突き詰めていきます。私にとっては、このように価格の動きを常に見ている職人芸的な投資も楽しいのですが、いつか時間と余裕ができたら、世界中を旅する開放型もやってみたいと憧れます。いずれにせよ、(1)の「情報が限られているので取引は避けたほうがよい」は、どちらにも当てはまるでしょう。


では、どこまでが十分な情報か。どこまで行っても投資収益を保証するような情報は得られないとなります。確実な収益を得るには、安く売ってくれる人と、高く買ってくれる人を同時に握っていることが必要で、このように売り手と買い手とを(手数料を貰って)結びつけることをブローキング、その人をブローカーと呼び、投資やディーリングとは別物です。


あるいは、投資収益をほぼ確実にする情報は、多くの場合はインサイダー情報なので活用することができません。そうでない場合には、自分が一番先に情報を得て、まだ安いうちに買っておく必要があります。これも現実的とは言えません。


一方、世界で最も情報が公開されていると見なされているアメリカ政府の、例えば、連銀の金融政策を左右しうる消費者物価指数にしても、サンプリングに取るモノの価格が正確に取られているか、あるいは、そういったサンプルが本当に消費者物価の実体を表しているかは疑問です。仮にサンプルに採用されたいくつかのモノの価格が、採用時点では消費者物価の全体像を反映していたとしても、時間とともに重要性をなくしていくモノが出てくることは避けられません。いずれにせよ、仮にすべてのデータ、すべての情報を100%正確に押さえていたとしても、そのことと投資収益とは別物なのです。結局のところ、投資収益に直結するのは価格以外にはありません。


ポジションを取る前に行う情報集めも、リスク管理でのキーとなる流動性も、絶対的に安全というべきものはなく、相対的なものです。つまるところ、さじ加減といったバランス感覚が必要なのです。


日本円から南アフリカ・ランドに投資する場合には、ランドにまつわる情報だけでなく、円を取り巻く環境にも注意を払う必要があります。中長期の円の動きは、積み上がる貿易黒字による円買いと、個人の外貨投資や投機筋の円キャリートレードでの円売りとのバランスで決まっていると言ってもいいのです。実需の円買いは事情ですが、投機の円売りは意欲です。サブプライム問題で傷ついた投機筋の意欲が減退すると、有無を言わせぬ事情の円買いが勝って円高となります。


(2)の「資源が豊富なうえに高金利なので、中長期の投資目的で保有するのがよい」のは、割安で買えたときに当てはまります。資源が豊富なうえに高金利(資源が豊富なので資金を集めるために高金利)というのは、投資物件としては悪くないので、投機筋が勢いを盛り返し円安に向かえば、大きなリターンが見込めます。


また、投機的なトレードに最も適したものは、流動性が高く、価格変動の大きなものです。南アフリカ・ランドは、ドル円などの主要通貨に比べ流動性が低いですが許容範囲であり、値動きもよいので、(3)のように投機的な売買をしても差し支えはないといえます。


ただ、流動性で勝る主要通貨でも最近は価格変動が大きく、リスク管理のやりやすさを考えると、あえてランドの取引をする必要はあるのかは、検討したほうがよいでしょう。

見事正解だったあなたは・・・

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プロフィール

【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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