今週の解答
[投資心理に関する問題]
株式の短期トレードを始めて半年ほどになりますが、損切りの連続で儲けられず、相場に向いていないのではとも思っています。今後、どのようにするのがよいでしょうか?
(3)損切りの仕方が株に向いていないかもしれないので、他の方法や、為替など他の商品を試してみる
大量に寝かせることができる資金と、卓越した相場観やリサーチ力、普通の人では得られない情報を有する場合を除いて、もっとも有効なリスク管理は損切りです。とはいえ、所詮は上げ下げ五分五分の相場で、半年間も損切り続きというのは、どこかで何かを間違えているのです。ここは、(3)の「損切りの仕方が株に向いてないかもしれないので、他の方法や、為替など他の商品を試してみる」というのが正解となります。
売買の頻度にもよりますが、損切りを行っていながら、半年も負け続けるというのは大変なことです。通常は資金も神経も擦り減ってしまいます。儲けていないのに、こういう言い方は変に聞こえるかも知れませんが、その執念と忍耐力は相場に必要なものです。(1)のように、個人投資家が始めてから半年ほどで諦めてしまうのは、もったいない気がします。向き不向きが分るほど、相場を知っているとは到底思えません。
プロのディーラーは駆け出しの頃、3カ月から半年ほどチャンスを与えられ、それで結果が出せなければ相場から強制的に退場させられることになります。とはいえ、通常彼らには身近に手本となる先輩たちがいて、あれこれとディーラーとしての基本動作を叩き込んでくれます。また、一通りのノウハウも見て覚えることができます。すべてのチーフディーラーが比較的短期間のうちに若手の素質を見抜けるのかどうかは疑問ですが、いわば濃縮した3カ月から半年であり、ディーラー予備軍はいくらでもいますので、儲けられない人に他の職種のチャンスを与えるのは、それなりに合理的なのです。
損切りとは、相場が思惑とは違ってきたときに、それ以上損失を膨らませないために行うものです。(2)のように、損切りが大切だからといって、半年も負け続けているのに、ひたすら同じ事を繰り返すのは本末転倒です。損切りは収益を上げるためのコストなので、必要だとはいえ、損失が大きいと意味がないのです。
勝ち負けが五分五分の相場で収益を残すには、損を小さくして利益を大きくしなければなりません。たとえば、損切りは5%やられたら行い、利食いは10%までと引伸ばせば、確実に収益を残すことができます。ところが、上下に7〜8%振れる相場があったとしたなら、レベルが近い損切りだけがついて、まったく利食えないことになります。なにごともバランスなのです。言われたことを機械的に行っていて、それでうまく行くとは限りません。
半年間負け続けるというのは、その銘柄や商品のボラティリティに対して、損切り幅が小さすぎる可能性があります。あるいは、利食い目標が遠すぎて、利食えないまま損切りに引っ掛かることもあるでしょう。そのような場合には、ボラティリティの小さな銘柄や商品を探すことと、利食い目標に届かずとも相場が折り返し始めたなら利食うことが、解決の糸口となるかも知れません。
あるいは、レンジやチャンネルの上限近くや抵抗線の手前で買い、レンジやチャンネルの下限近くや支持線の手前で売ると、損切り点、利食い目標を同じ幅で見ていても、損切りがつく可能性の方が大きくなります。これは、相場がしばらく進んだ後に、つまり煮詰まってから売り買いの決断をするためで、このように遅れてきたバスにばかり乗っていると損切りを繰り返すことになってしまいます。
通常、儲けるためにはその逆をやり、レンジの下で買って、上で売るようにするのです。そして、抵抗線や支持線が完全に抜けたと判断できた時に損切ります。この精度を高めていけば、損切り幅より、利食い幅の方が大きくなり、あなたのトレード成績は好転するようになってきます。
見事正解だったあなたは・・・
油断は禁物、ほかのカテゴリの問題にも挑戦してさらにセンスを磨く努力を怠らないようにしましょう。
書籍
プロフィール
- 【監修】矢口新(やぐち・あらた)
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1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。
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