あなたの答えは、残念ながら 不正解 です

今週の解答

[個別銘柄に関する問題]

日経平均株価が3日連続で暴落し、市場全体がほぼ総崩れの様相となっている中、ある銘柄の株価はあまり下げませんでした。調べてみると、2桁増益を続けるなどファンダメンタルズもよく、チャートも上昇基調です。しかし、2、3年前と比べると株価は既に5倍近くになっています。このような銘柄に投資をする際のスタンスとして、最も適切なのはどれでしょう?

正解は・・・
(1)長期的にはこれ以上の大幅な値上がりは期待できないので、チャートを基本に短期トレードの対象とする

2桁増益を続けている会社はファンダメンタルズ的には申し分がありません。こういう会社が割安になった時に買うのが、長期投資の秘訣です。ところが、こういう会社が割安に放置されていることは少なく、多くの場合は既に高く買われています。値上がる銘柄には、値上がり益だけを期待する投機家も入っています。2、3年で5倍という株価は、相当数の投機家の存在を暗示しています。彼らは(高く)売るために買っていますので、どこかで大きく売られるリスクが高まってきています。この問題の正解は、(1)の「長期的にはこれ以上の大幅な値上がりは期待できないので、チャートを基本に短期トレードの対象とする」となります。


1,000円の株価の会社が2桁増益を続け、50円の配当をすれば、その配当益回りは5%です。ところが、値上がりしたその会社の株を、たとえば5,000円で買ったとすれば、配当益回りは1%にしかなりません。つまり、投資金額に見合わない割高株となってしまいます。株価は年率で3桁の上昇をしていても、それなりの規模を持つ上場会社が3桁の増益を達成するのは極めて困難ですから、株価とファンダメンタルズとはどこかでかい離します。仮に3桁増益の会社があったとしても、株価はそれ以上に買われ、同じようにかい離してしまうのです。(2)のようにファンダメンタルズ的にはいいものであっても、割高なものはもはや金融商品としての魅力を持ちません。株価収益率(PER)は、そのことを見る指標です。


相場は投機と投資とで成り立っています。投資とは保有資産の運用ですから、じっくりと保有できますが、資金量に制限があります。対する投機は、キャピタルゲインを狙って借入金によるレバレッジをかけますので、(値上がりし続ければ際限がないほど)資金量は豊富ですが、いつか返さねばならないという時間の制限があります。投機はある時間枠のなかで売るために買い、買い戻すために売っているだけなのです。つまり、投機家の買いにより上げたものは下げ、下げたものはいずれ上がります。しかし、その「いずれ」が実現するまでに、しばしば株価は投資家が耐えられないところまで行き過ぎます。(3)のような裁定取引は、投機的な動きに逆らいますので、しばしば大きな損失につながってしまうのです。


投機家が支配している相場は、投機家の都合に左右されるようになります。彼らの都合とは、究極的には作ったポジションをできるだけ短期間でうまく利食いたいということです。今回の問題のように買われてきた銘柄ならば、どこで利食うかが関心事です。つまり、どこで何を材料に売るかを考えています。あなたがそのような相場に参入するのなら、あなたも投機家となって、短期トレードに徹する方がいいのです。


短期トレードとは、この株価が下げ始めたならとりあえず売ってみる。大きく下げたなら(初押しは)買ってみる。そして思惑とは違い、売っても下げなければ買い戻す。買って下げれば売り払うというような、機動的な値動きだけに順じたトレードです。それには、ファンダメンタルズの良し悪しはほとんど関係なく、チャートが頼りになるのです。

残念ながら不正解だったあなたは・・・

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【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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