あなたの答えは、正解 です!

今週の解答

[ニュースに関する問題]

G8で米国の要人が「行き過ぎたドル安は是正すべき」と発言しました。あなたが自動車産業など輸出関連の日本株を保有している場合、どうするのがよいでしょう。

正解は・・・
(3)実際の値動きを見てからでも遅くないので、とりあえずは様子を見る

ドル安円高は、自動車産業などの輸出関連企業の収益悪化要因です。輸出とは国内で製造したものを海外で売ることですから、自国通貨が高くなると、製造コストが上がるだけでなく、自国通貨換算の売上が減少します。つまりドル円が110円から100円に下がると、国際的な(ドルで換算した)製造コストが約10%上昇し、1億ドルの売り上げが110億円から100億円に減少します。また、輸出入を伴わない海外現地生産分の利益送金も、1億ドルの送金が110億円から100億円に減少してしまいます。


ドル高円安はこれとはまったく逆の効果を持ちますので、輸出企業は円安分を(約10%)値下げして売り上げを伸ばすか、まったく値下げしないで利益幅を(約10%)拡大するか、いくらか(約5%)値下げして売り上げを伸ばしながら利益幅も(約5%)拡大するかの選択肢を得ることができます。収益拡大要因なのです。


要人の発言など、相場でのいわゆる「材料」が実際に価格を動かすかどうかは断定することができません。また動かすにしても、材料が本来の「意図する方向」通りに動くかどうかは分かりません。材料通りに動かそうとする「意欲」があっても、「事情」が許さねば動かないどころか、反対方向に動いてしまうのが相場なのです。したがってこの問題での正解は、(3)の「実際の値動きを見てからでも遅くないので、とりあえずは様子を見る」となります。


G8というのは、Group of 8(主要8カ国)の略で、日米英独仏までがG5、イタリアとカナダを加えてG7、そこにロシアを加えるとG8になります。G8の会議と言われるときは、主要8カ国の首脳会議、外相会議などもありますが、ここでは蔵相、経済相の会議だと思っていていいでしょう。したがって、この問題での要人とは、米国の財務長官か、それに準じる人物の意味になります。


この時、「行き過ぎたドル安は是正すべき」という発言だけで行動が伴わない場合を「口先介入」、米国だけで市場介入を行った場合は「単独介入」、他国も同時に介入した場合を「協調介入」と言います。市場へのインパクトは、この順番に強くなっていきますが、それでもドル高に持っていける保証はありません。市場介入の場合には介入額も重要で、ドル高に持っていける十分な量のドル買いを行えば目的は達せられますが、それが可能かどうかは分かりません。


たとえば、米国の単独介入の場合には、ドルを買う外貨が必要です。もし外貨準備高の範囲内での介入でドル安を止められなければ、他国から外貨を借りて、外貨売りドル買いを行わねばなりません。つまり、外貨の保有残高と信用枠(金額と期間)とが介入可能額の上限となります。米国だけでなく、どの国も市場介入で自国通貨を高くするには限界があるのです。一方、自国通貨を安くする介入は、自国通貨を印刷して外貨を買い続ければ安くなります。もっとも、そんなことをし続ければ、信用の失墜の面からもその通貨の価値が下がるでしょう。


協調介入では、自国通貨売り他国通貨買いの介入資金は豊富にありますので、各国が本気で介入すれば効果的だと言えます。とはいえ、米国自身が為替市場への介入には慎重で、これまでも十分な額の市場介入は控えてきました。


仮に要人の発言で効果的にドル高円安に向かったとしても、あなたが持っている輸出関連株が思惑通りに値上がりするかは分かりません。ドル高円安という「材料」通りに動かそうとする「意欲」があっても、「事情」が許さねば動かないどころか、反対方向に動いてしまうのが相場なのです。結局あなたが拠り所にできるものは、あなたが保有している株式の値動きだけです。この「意欲と事情」については、、新著『矢口新のトレードセンス養成ドリル Lesson1』で詳しく説明しています。

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プロフィール

【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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