あなたの答えは、残念ながら 不正解 です

今週の解答

[資金管理に関する問題]

あなたは老後に備えるためのポートフォリオを検討しています。その際、最も適切ではないのはどれでしょう。

正解は・・・
(1)最終的には生活費として日本円に替えなければいけないので、円高のリスクを考慮し、外貨は極力避ける

老後に備えるためのポートフォリオを構築する際には、時間の経過が与えるリスクをどのように軽減するかが課題となります。


(2)はポートフォリオに株式だけでなく、債券を組み込むことで、成長率とインフレリスクとのバランスを取ることができます。また、流動性が低いものには換金リスクがあります。


(3)の株式の中での銘柄分散は、景気変動による倒産を含む株式のパフォーマンスのばらつきを防ぐことができます。


それに対して、(1)は、円高リスクだけを考慮し、円安に振れるリスクには無頓着です。したがって、老後に備えるためのポートフォリオとしては、(1)が最も適切でないことになります。


リスクを分散させるには、より関連性のないものを同時に保有するのがいいのです。あなたが日野自動車の社員なら、自社株に投資して一蓮托生となるよりも、トヨタ自動車株がいいでしょう。いえ、同じグループのトヨタ自動車よりはホンダのほうがリスク分散になります。いえいえ、同じ自動車関連よりもより遠い業界のものがいいのです。


つきつめれば、日野自動車株が下がるときに、相当の確率で上がる銘柄を持てばリスク分散ができます。それが1社だけでなく、多くの違う動きをする銘柄を組み合わせたほうが、あるいは投信や預金、債券、保険など他の金融商品や、不動産、外貨などを組み合わせたほうが、もっとリスクが分散されます。これが「分散投資」の考え方です。


では、老後のためのポートフォリオに、どれくらいの外貨を組み込めばいいのでしょうか?


先だって国際通貨基金は、日本において今の勢いで少子高齢化が進み、労働力人口の不足が深刻になると、経済成長率が低下し、2020年ごろには経常収支が赤字に転落しかねないと警告する報告書を発表しました。経常収支が赤字になると、どのようなことになると思いますか。


日本は過去30数年にもわたって経常黒字を続けてきました。経常黒字というのは、貿易やサービスでの外貨収入が外貨支払いを上回ることですから、外貨売り円買いというかたちで円高トレンドをつくります。その結果として、円レートは対ドルで30年余り前の約3倍、20年余り前の約2倍となっています(過去10数年ほどに限ると、為替介入による外貨準備高の急増や金利差を利用したキャリートレードなどで円安圧力がかかり、円は4分の3ほどに安くなっています)。


これが赤字となってしまうと、今度は支払いのための外貨が必要となり、円安圧力となるのです。スーパーパワーのアメリカでさえ、財政、経常の双子の赤字でドルが売られ続けたのですから、日本が双子の赤字になれば200円、300円といった円安も想定内になってきます。経常赤字というのは、外国からの輸入に頼ることでもあるので、物価の上昇でいまの生活レベルが維持できなくなります。110円ほどでも、ガソリンや食料品の値上がりが実感できるのですから、ドル建て商品がここから2倍以上に値上がりすると、どうなってしまうことでしょう。


余裕資金を円だけで持っている人は、何があっても「お国(政治家や官僚)」を100%信じ続けるという人です。外貨が資産の10%を占める人は、それでも90%は「お国」を信じている。半分くらいなら信じられるという人は、余裕資金の半分を外貨で持ってもいいかも知れません。それがヘッジというものであり、自分で自分を守るということなのです。


老後を日本で過ごす私たちは、ポートフォリオも円をコアにするべきです。使う当てのある通貨で資産を持つのが基本だからです。しかし、円安に進んだときの備えもしておくのが賢明です。老後のポートフォリオが日本株中心なら、外債を組み込むことだけでもリスクヘッジとなるのです。


この問題については、拙著『実践 生き残りのディーリング』「18. 年金資産に外貨は必要か?」で詳しく述べています。

残念ながら不正解だったあなたは・・・

実際に運用をする前に、ほかの「資金管理に関する問題」で、さらに勉強しましょう。

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【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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