あなたの答えは、正解 です!

今週の解答

[資金管理に関する問題]

あなたは朝、ある銘柄に買い注文を入れてから出勤しました。昼休みになり、注文内容を確認すると、1桁多く注文を出しており、満玉に近い約500万円のポジションを取っている状態でした。ただ幸いにも5%程度の利が乗っています。このような場合、どうするのがよいでしょうか?

正解は・・・
(1)間違いなので、利が乗っている今のうちに急いで手仕舞う

相場では常にチャンスを追い続け、リスク管理を徹底していれば、いつか風が吹いて大儲けにもつながるものです。ツキがない時には、なかなか思うようには収益が上がりません。誤発注で儲けがでるのは、ツキがあるといえば言えますが、この場合のツキは5%の利益で良しとしましょう。正解は、(1)間違いなので、利が乗っている今のうちに急いで手仕舞う、となります。


日経平均やTOPIXでの5%の上昇といえばそれなりの大きな動きですが、個別銘柄では前場に5%ほど上げる銘柄など毎日いくつもあります。それは単なる価格の「ゆらぎ」である場合が多く、必ずしも上昇トレンドを暗示するものではありません。「ゆらぎ」故に、後場にはそれ以上下げてしまう銘柄も少なからずあるのです。1桁大きなポジションで5%だということは、いつものポジションならば50%の利益に相当します。せっかくのまとまった利益なのですから、そのツキを大事に頂きましょう。


日頃慣れていない額のポジションを取ると、冷静な判断ができなくなります。間違いでの1桁大きなポジションは、人から冷静さを奪うのに十分な額です。冷静さを失ってしまうと、思い通りの時には無暗に強欲になって突っ込んでみたり、逆にいっても強気のままで突っ張っていながら、急に怖くなって底値を売ったりしてしまうものです。


プロのディーラーでもポジションが大きく、損益の額が彼の器量を超えてしまうと、覚醒レベルでいう「フェイズ4」の状態に陥ってしまいます。「フェイズ4」については、拙著『実践・生き残りのディーリング』の第72項で以下のように取り上げています。


72. 修羅場に慣れる

柳田邦男のノン・フィクションの記述によると、人間の覚醒レベルにはフェイズ1からフェイズ4までの四段階があるそうです。


フェイズ1は寝ている状態。フェイズ2は寝ぼけている、あるいは居眠りに近い状態。フェイズ3は覚醒して最も意識がはっきりしている状態。フェイズ4
は緊張が過ぎて頭に血が上り、かえって大脳の処理能力が落ちている状態とのことです。居眠り運転による事故は覚醒レベルがフェイズ3からフェイズ2に落ちることから発生し、パニックによる混乱はフェイズ3からフェイズ4に上がることから発生するというのです。


相場でも、自分が常にフェイズ3の状態でいられるようにするのは当然です。しかし、プロのドライバーでさえしばしば居眠り運転の事故を起こすように、常に安定した精神状態、冷静な判断力を保ち続けることは容易ではありません。


相場の現場は、はた目にはフェイズ4の状態かもしれませんが、毎日相場と付き合っている私たちにとってはその状態が常態で、したがってフェイズ3でいられます。相場つきの具合によってはフェイズ2にまで落ち、話し中の受話器を持ったまま居眠りしてしまうこともありました。慣れたドライバーにとっては、高速道路での走行が最も眠いように、当初はフェイズ4であったものが、フェイズ3に、そしてフェイズ2にまで落ちてしまうのでしょう。


この覚醒レベルには個人差があり、人によってはフェイズ4に価するものが、ある人ではフェイズ2であったり、また人によってはフェイズ3でいられる幅が非常に大きかったりすると思います。いずれにせよ、個々の参加者にとっては、いかに自分がフェイズ3の状態で長くいられるかの訓練も必要となるでしょう。また、同じフェイズ3の範囲内でも、自分のポジションがアゲインストかそうでないかで、フェイズ4寄り、フェイズ2寄りと振れるでしょう。私たちは最後の最後、ぎりぎりまで冷静でいられることが要求されています。


しかしどんな人にでも、その人にとってのフェイズ4があるはずです。そんなときは当然冷静ではいられません。また、相場のなかでフェイズ4に至るときは、ポジションを持っているときに決まっているので性質が悪いのです。相場が逆に行き損切りそこねたとき、あまりにうまく行き過ぎて有頂天になっているとき、流動性の欠如により手をこまねいているときなど、最も冷静な判断が要求されているそのときに、フェイズ4に至ってしまっているのです。パニックになっているのです。


フェイズ4への対応は喧嘩慣れではないでしょうか。興奮で頭に血が上り、怒りや恐怖で身体がわなわな震えているときでさえ、どこかに冷静な自分を残して、やるべきことはやる。頭が興奮状態なら、身体のどこかを冷静に保つ。身体のどこかが興奮状態なら、頭を冷静に保つ。そのためには、物事を理屈で理解していること。そして、多くの経験を積み、修羅場に慣れておくことが必要です。


日頃50万円のポジションで売買していたなら、500万円のポジションでも冷静さを失う恐れがあります。人間はすぐに環境に慣れてしまうので、あなたもいずれは億円単位、数十億円単位の売買でも動揺しなくなる時が来るかもしれません。しかし、誤発注での10倍のポジションは、損益にかかわらず早く閉じた方がいいでしょう。

見事正解だったあなたは・・・

油断は禁物、ほかのカテゴリの問題にも挑戦してさらにセンスを磨く努力を怠らないようにしましょう。

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プロフィール

【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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