今週の解答
[個別銘柄に関する問題]
業績が思わしくないという理由で、あなたが空売りしていた銘柄が1ヶ月月間下げ続け、利益が30%を超えてきました。ところがある日、投機筋と思われる買いが入り、出来高を伴って8%ほど値を上げました。業績が改善する見通しはありません。このような場合、どうするのが良いでしょうか。
(3)ひとまず手仕舞う
この銘柄がいつから下げ始めたのか、また高値からどれだけ下げているのかは分かりませんが、あなたが1ヶ月前に売ったとこらからでも3割下げています。同じペースで下げ続けたなら、後2、3カ月も経たずに株価はゼロになってしまいます。単なる業績の悪化ぐらいで上場企業が簡単に潰れるものではありません。これはいかにも行き過ぎで、いつ自律反発が入ってもいいような状態でした。ここは、(3)の「ひとまず手仕舞う」のが、まずは正解です。
ただし、場合によっては他の選択肢も正解になりえます。
売り手には「売らなくてはいけない人」と「売らなくてもいい人」とがいます。「売らなくてはいけない人」とは、この会社の株主であった人たちで、会社の業績に失望したり、急な資金ニーズができたために換金売りする人たちです。一方、あなた自身が空売りしていることでも明らかなように、悪材料があると「売らなくてもいい人」まで売ってきます。あなたは持っていた株を売ったわけではありませんから、いつかどこかで必ずその株を買い戻さねばなりません。つまり、あなたのような「売らなくてもいい人」たちがある程度以上に増えてくると、相場はその人たちの買い戻しによって反転するようになります。それを自律反発と言います。
問題文の「投機筋と思われる買い」は、空売りの買い戻しかも知れませんし、自律反発を引き出すための仕掛けの買いかも知れません。自覚のあるなしに関わらず、キャピタルゲイン狙いのあなた自身も投機を行っているのですから、自律反発の流れに沿って買い戻しをすればいいのです。その流れが強いと相場は本格的に反転します。その場合は、(1)の「値動きに従い、ドテンで買いのポジションを取る」のも、悪くはないでしょう。
とはいえ、8%も反発してしまった後から買って、そのまま利益が出せるかどうかは分かりません。下げ続けていたために、売りのタイミングを逃していた人たちが、戻り売りをかけてきます。その売りの勢いと、買い戻しの勢いとの力比べが始まるのです。売りの中心が「売らなくてはいけない人」であった場合には、反発は投機筋の買い戻しだけで終わります。つまり、戻り局面では実需筋の大きな売り物が出てきて、相場はまだまだ下がるのです。30%の利益から8%を失っても、利益は22%残っています。戻りがこの程度だと思えるのなら、(2)の「投機的な値動きは一時的なものなので、空売りをしたままにする」でもいいのです。
このように、利食いに関しては絶対に正しいというものはありません。あなたの性格や投資スタイル、相場観に合ったものでいいのです。
拙著『実践 生き残りのディーリング』第92項では、「利食い千人力 −簡単に利食うな、確実に利食え−」と題して、次のように述べています。
「利食いは限定してはなりません。損切り幅の2倍で利食うというのは、あくまで最低限の目安です。利食えるからと千人力を発揮していては、コストをカバーして儲けを残すことはできません。利食いは、反転の兆しが見えるまで引っ張る気持ちが必要です。どこまでやられるかわからないから、損切りオーダーを入れるのと同様の発想で、どれだけ儲かるかわからないのに、利益を限定してしまうことはないのです。とはいえ、忘れてはならないのは、評価益は絵に描いた餅にすぎないことです。確定してこその利益です。せめて一部だけでも確実に利食うことを勧めます」
ここで大事なのはチャートなどを検討して、どこで利食うかを明確にしておくことです。大き目の目標株価を決めて、さすがにここまで来たら利食うという点と、トレーリング・ストップのように、ここまで戻ってしまったら利益を確定するという風に、2段構えにしておきます。この時のトレーリング・ストップは、その時点での最低限の利益確保なのですから、利益を伸ばす方向には動かしても、決して減らす方向には動かさないようにします。明確な基準が持てない人は、テクニカル指標のパラボリックを参考にしてもいいでしょう。
どれを選んでも場合によっては正解だからといって、利食いは安易だと思わないで下さい。いわば、損切りが生活のための必要最低限なコストだとすれば、利食いは自由や文化的な生活を味わうための一段上の行為なのです。社会のルールを守っている限り、どのような味わい方をしてもいいのですが、どのように振舞うかで人間性が見えてしまいます。損切りに惑わされる段階は早く卒業して、利食いと真剣に向き合う段階に進んで下さい。
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プロフィール
【監修】矢口新(やぐち・あらた)
1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。 著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。 新著『実践・生き残りのディーリング』は4月12日発売。
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