あなたの答えは、残念ながら 不正解 です

今週の解答

[投資心理に関する問題]

あなたはテクニカル指標をもとに短期トレードを行っています。しかし、サインに基づいて売買しても、「騙し」の場合が多くなかなか利益を上げられません。今後はどうするのが良いでしょうか。

正解は・・・
(1)騙しはつきものなので、損切りを心がけ積極的にトレードする にスタンスを決めず、値動きに従う

テクニカル分析とは過去のデータを素材に、相場の状況を様々な観点から、売られ過ぎ、買われ過ぎなどと見やすく提供するものです。なかには状況提供だけにとどまらず、買いサイン、売りサインにつなげるものもあります。過去のデータは、その銘柄が実際にたどった過去の軌跡ですから信頼に足るものですが、必ずしも未来の株価を決定するものではありません。いわゆる「騙し」も多いのです。テクニカル指標はそれなりに当てにはできるが、裏切られもするということで、この問題の正解は、(1)の「騙しはつきものなので、損切りを心がけ積極的にトレードする」、となります。


信頼できるデータをもとに仮説をたて、実際に運用してみることを試行錯誤といい、何かを達成したければ欠かせない試みです。どんなに素晴らしく思える相場観でも、実行に移さなければ単なる物語です。様子見では儲けることができないだけでなく、トレーディングの力もつきません。(2)を正解とすることはできません。


一方のファンダメンタルズ分析とは、マクロ経済の数値や企業の財務諸表をもとに、投資対象そのものを分析することです。分析そのものがいかに緻密であっても、その投資対象が市場でどう評価されるかについては、多くの場合は理論とは到底呼べないような無理なこじつけが行われています。アナリストは投資対象には詳しくても、相場のことは知らないのです。またファンダメンタルズ分析にも、マクロ経済の数値や企業の財務諸表に統計上のミスや解釈の違いなどといった「騙し」が多く見られます。


ファンダメンタルズ分析が得意な人がテクニカル分析を学べば、投資対象の市場での評価に敏感になり、儲けることができるようになるかもしれません。しかし、テクニカル分析に向いていないと思う人が、ファンダメンタルズ分析に転向しても、ますます相場が分らなくなるだけでしょう。(3)も不正解です。

テクニカル分析については、拙著『リスク管理・資金運用』に詳しくまとめていますので、参照してください。同書は2005年9月に出版されたものですが、「はじめに」の部分は今読んでもなかなかよく書けています。ウェブページでご覧ください。

ここでは、第6章「テクニカル指標による売買の判断(Essence of Technical Analysis)」から、以下の部分を引用します。


投機勘定では、テクニカル指標がより有効に使えます。


チャートとは、過去から現在における値動きの忠実な記録です。投機が最も注意を払うべきなのは値動きですから、チャートは最も信頼のおける売買の判断材料を提供してくれます。


その銘柄がたどってきた過去の軌跡を、何の偏見やバイアスもなく受け入れるには、寄り値、高・安、引け値だけの「素」のチャートが一番です。


うどんやそばでも、そのものの味を味わうには素うどん、かけそば、もりそばなどが一番です。


「うどんにはゴボウの天ぷら、そばには海苔が最も相性がいい」などとは思っても、そういった組み合わせでは、組み合わせたものの出来不出来が、うどんやそばの味わいを左右してしまいます。


たとえば、天ぷらの嫌いな人が天ぷらうどんしか食べたことがなければ、うどんの印象は悪いでしょう。

「チャートは当てにならない」などという人は、「素」のチャートに親しまれ
ることをおすすめします。当てになるもならないも、チャートが教えてくれる
その銘柄の歴史には嘘がありません。


「素」のチャートには、バーチャートとローソク足がありますが、どちらでも構いません。うどんやそばにたとえるなら、ローソク足には、ネギなどの薬味がついています。

「素」のチャートをわかりやすく説明するために、うどんやそばを用いました。しかし、これらとチャートに何らかの操作を加えたテクニカル指標とには、根本的な違いがあります。


うどんやそばに加えた素材は、うどんやそばに栄養価など別のものをもたらしますが、移動平均などのテクニカル指標は「素」のチャートが持つ情報量に何も加えてはいません。単にある情報をほかの情報よりも強調しているだけなのです。


つまり、あえて「バイアス」をかけているのです。


たとえば、雑誌などで人のプロフィールを見るときに何を見ますか?経済誌とグラビア雑誌とでは、同じようなプロフィールでも強調する情報が違いますよね。


ある情報をほかの情報より強調するということは、あるいはもっと重要であるはずの他の情報を見えにくくすることでもあるのです。


より複雑に見えるテクニカル指標ほど、1つのものが強調されるように単純化されています。うどんやそばにソースをつけて食べれば、素材の持つ味わいが消えてソース味だけが残ります。


もちろん、カレー味でもソース味でも一向に構いません。テクニカル指標も、あなたの投資・投機スタイルに合っているのならば何でもいいのですが、一方で、素材の味わいが損なわれていることを心に留めておいてください。


ここでいう「1つのものが強調されるような単純化」とは、移動平均を例に取ると寄り値、高・安、引け値の4本値から、引け値だけを取り出し、25日など期間も限定してしまうことです。そうすることによって、移動平均は過去1カ月ほどの終値だけを強調し、あるいはより重要かも知れない高値、安値を消し去っています。


同書では様々なテクニカル指標を解説していますが、私はテクニカル・アナリストではありませんから、細かな数式や個々の指標の独特な言い回しには興味がありません。料理を味わう者(資金運用者)の立場から、どのように素材を料理しているのか、どのように味わえばいいのかだけを解説しています。つまり、移動平均なら移動平均が持つ思想や、意味を説明し、実用的な使い方を提示しています。


テクニカル指標でのサインは売り買いの手掛かりにすぎません。先のことは誰にも分かりません。どんなに強気、弱気でも、上げ下げの確率は五分五分だと思っていた方がいいのです。相場が思惑とは逆にいったなら、速やかに損切ります。そして、思惑通りの相場で、どこで利食うかが勝負なのです。

残念ながら不正解だったあなたは・・・

実際に運用をする前に、ほかの「投資心理に関する問題」で、さらに勉強しましょう。

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プロフィール

【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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