あなたの答えは、正解 です!

今週の解答

[投資心理に関する問題]

あなたはこれまで余裕資金を預貯金のほかに日本国債で運用してきましたが、食料品などの値上がりに金利が負けるようになってきたので、株式運用に挑戦しようかと考えています。しかし、株式市場は全体的に軟調で、なかなか購入に踏み切ることができません。このような時、どうするのが良いでしょうか。

正解は・・・
(2)初心者は空売りには手を出さず、軟調な中でも値上がりしそうな銘柄を探し購入する

株式市況のニュースを聞いていると、市場全体の上げ下げに加えて、値上り銘柄数、値下り銘柄数などと言っています。つまり、多くの銘柄が下げていても、上げている銘柄は必ずあるので、株式市場では買いだけでも十分に儲けることができます。正解は、(2)の「初心者は空売りには手を出さず、軟調な中でも値上がりしそうな銘柄を探し購入する」となります。


市場全体の動きと個別銘柄の動きは必ずしも一致しません。一致しないどころか、例えば先週の木曜日(2008年6月5日)は、有力225銘柄の日経平均がマイナス94.45(− 0.65%)、東証一部上場の全ての日本企業の時価総額を表すTOPIXでもマイナス-6.02(−0.42%)だったにもかかわらず、値上り銘柄数が1014銘柄、値下り銘柄数が590銘柄でした。つまり、下げ相場だと思って空売りしたなら、3つのうち2つでやられてしまったことになります。


約3分の2の銘柄が上げているのに、日経平均やTOPIXがマイナスなのは、時価総額の大きな有力企業が売られ、中小型株が買われたことを表しています。市場が軟調でも、中小型株を買っていれば、かなりの確率で儲けることができたのです。


個人投資家のB・N・F氏は、7、8年で資産を100倍以上にしたことでマスコミにも登場していますが、空売りはしないとの噂です。噂の真偽はもちろん分かりませんが、私はその通りだと思います。大きな資金を扱っての空売りは、余り効率的だとはいえないからです。


まず空売りするには、売るための株を借りてくる必要がありますが、大量に借りられる銘柄が売りたい銘柄であるとは限りません。また、東京市場にはアップティック・ルールという空売り規制(最終約定価格より低い価格の売り注文を出してはいけない)があり、実際的に空売りするには売り値を買って貰う必要があります。つまり、買われている時には空売りできるが、売られている時にどんどん売り進むことができません。このことは、大量に空売りしたい時は同等以上に大量の買い注文に向かう必要があることを意味します。いつもいつも大勝負をかける必要があるのです。

この時の大量の買い手が自分と同じような投機筋である場合には、どちらが長
く持ち続けるかの力勝負になります。ところが、買い手は自分のペースで買い
上げたのに比べ、売り手の自分は相手が買ってくれたから売れたという主導権
を取られた状態にあります。決して分のいい勝負ではありません。


また、この時の大量の買い手が長期保有前提の投資家や、会社買収狙いの株式保有、持合いなどの政策投資である場合には、どんなに売り向かってもなかなか株価は下がりません。空売りには貸株料というコストがかかっていますので、株価が下がってくれないと、どこかで買い戻す必要が出てきます。こうなると今までの買い手に加えて、これまでの売りの主役であった自分が買い手に回るのですから、株価はこれまで以上に跳ね上がることになります。ストップ高にでもなってしまえば、その日のうちにすべてを買い戻すことができません。大損してしまうのです。


これが買いの場合だと、売り手を待たずにどんどん買い上げることができます。また、大きな売り物がある時は買い向かう必要はなく、それをやり過ごして株価が安くなったところで、下げ止まったと確認できてから買えばいいのです。もっとも更に下げることもありますが、いったん下げ止まったところには買いも出てくるもので、そこからストップ安などということはまず起こりません。


大量でなくても、アップティック・ルールと貸株料の支払い、買い手は動かなくても配当収入があるなどの点で、空売りは買いに比べて不利なのです。したがって株式運用に慣れるまでは、(1)の「下げ相場でも儲けられる空売りに挑戦する」のは不適当です。


初心者でなくても、個別株の空売りは多くの銘柄のロング・ショートとして、ヘッジ効果、レバレッジ効果を期待する程度が実際のところでしょう。空売りで大儲けできることもありますが、長期間での売り買いをならすと、株式ではロングの方が儲かります。


株式運用の醍醐味は個別株運用です。好転どころか何倍にも値上がりしている銘柄があるにも関わらず、(3)「市場全体が好転するまでは手を出さない」のでは、投資家としていささか怠慢といえるでしょう。

見事正解だったあなたは・・・

油断は禁物、ほかのカテゴリの問題にも挑戦してさらにセンスを磨く努力を怠らないようにしましょう。

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プロフィール

【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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