あなたの答えは、残念ながら 不正解 です

今週の解答

[資金管理に関する問題]

あなたは数年前から、中長期からデイトレードまで、様々なスタンスで投資をしています。損切りを徹底しているため、始めた当初に比べると、それなりの入れ替わりがありますが、中にはほとんど値動きがなく、値下がりしている訳ではないのでただ保有し続けている銘柄もあります。ここで自分のポートフォリオを見直す場合、こうした数年間、下がるわけではないが値動きのない銘柄はどうするのが良いでしょうか。

正解は・・・
(2)ただ保有し続けるのは非常にもったいないので、全て売って他の値上がりしそうな銘柄の購入資金にあてる

運用成績は通常年率で表します。銀行預金や債券の利率が年率で表わされているので、キャピタルゲインを加味した年率で揃えないと、運用成績の比較ができないからです。あなたの保有している銘柄が値下がりせず、仮に1%ほど値上がっていても、2年間そのままだと年率0.5%、5年もそのままだと年率0.2%(配当を除く)にしかなりません。これでは、世界で最も低利だと言われる日本国債にも負けてしまいます。投資にとって運用期間は重要なのです。正解は(2)の、「ただ保有し続けるのは非常にもったいないので、全て売って他の値上がりしそうな銘柄の購入資金にあてる」となります。


低利でも、国債の償還までの持ち切りや、定期預金に満期まで預けているのは、当初からの目的通りですからいいのです。とはいえ最近のように保険料や市民税、ガソリンや食料品の価格などが急騰してしまうと、低利で預けっ放しにしていると、預けていた資金の購買力が低下し実質的に損が出てしまいます。運用としては失敗を意味します。


株式の場合には、倒産するかも知れない信用リスクや、時価通りには売れない流動性リスク、値下がりする可能性の市場リスクなどを取っているのですから、仮に配当が国債の利率並にあったとしても、値上がり益を期待することになります。値上がりしない株式の投資物件としての価値は極めて低いのです。


株価が横這う保ち合い状態は、株価の上ではあまり変化がありませんが、出来高に応じて、その銘柄の所有者が変化しています。長期保有していた人たちの売りを、値上がり期待の買い手が受け止めている状態になると、株価はいずれ反落します。反対に、投機目的で買っていた人たちの売りを、長期保有目的の買い手が受けていると、株価はいずれ上伸します。誰がどのような目的で買っているのかが分かれば、将来の株価は概ね予測することができます。多くの場合には分らないので、株価が跳ねた方向につくことで、長期保有がつくるトレンドに乗ることができるのです。


値上がり期待で買った株式が、保ち合い状態のまま値動きを止めることはしばしば起こります。その時、値動きが煮詰まってきていたなら、上抜けすることを期待して待つことも重要です。急上昇が期待できるからです。もちろん、急降下することもあるわけで、その場合には速やかに損切る必要が出てきます。つまり、今まで値下がりしなかったからといって、(3)のように「値下がりしにくい銘柄」だと断定するわけにはいかないのです。ポートフォリオに値下がりしにくいものを組み込みたいのなら、国債を買うようにします。


また、相場のトレンドラインの1つ形である三角保ち合いでは、一定の期間の間に高値がどんどん切り下がり、安値は切り上がっていきます。つまり、値動きが一定幅内で収まって大きな値上がりも、値下がりもありません。そしてその保ち合いをバネとして、どちらかに勢いよく抜けた方に飛び出すのです。このような上抜けを待つのは、長くて3カ月から半年の間でしょう。それ以上保ち合いが続くのは注目度が低いだけの横這い状態で、冒頭でも述べたように、投資の失敗を意味します。したがって、(1)の数年間「値下がりしていないのであれば売る理由はないので、保有し続ける」ことも、正解にはできません。


運用利回りの最低基準は無リスク金利と呼ばれる短期国債などの金利です。それがインフレ率を上回っている間は、まがりなりにも実質的な運用資金が増えていきます。株式投資では、上記のような様々なリスクを取りますので、より大きなリターンを望むべきなのです。いつまでも値上がりしない銘柄は売り払い、上抜けし始めた銘柄に入れ替えましょう。

残念ながら不正解だったあなたは・・・

実際に運用をする前に、ほかの「資金管理に関する問題」で、さらに勉強しましょう。

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【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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