あなたの答えは、正解 です!

今週の解答

[個別銘柄に関する問題]

あなたは低位株投資に興味を持ち、株価が100円を割り込んでいるいくつかの銘柄に注目していました。その中でも特に、業界大手でありながら業績が悪く、長期間下落トレンドが続き株価が50円を下回る水準にまで下落している銘柄の購入を検討していました。ある日、その企業が、巨額債務の株式化を発表しました。この場合、どうすれば儲けにつながりやすいでしょうか。

正解は・・・
(1)バランスシートが改善し、株価が上昇すると予想されるので買う

巨額債務が株式化されたということは、簡単にいえば、銀行などの債権者が株主になるということです。金利を受け取りながら企業に貸し付けていた銀行が、株主としてより大きなリスクを取ることに同意したわけですから、それなりの好材料です。長期間の下落トレンドが終止符を打つ目処がでてきました。もともとその銘柄の購入を検討していたのなら、その時期が来たといえます。正解は(1)の「バランスシートが改善し、株価が上昇すると予想されるので買う」になります。


債務の株式化は、企業再生案の1つです。債務者である企業が債権者である銀行などと交渉し、債権者(銀行)に対する債務を企業の株式と等価交換することです。つまり、返済義務のある負債を返済しなくていい自社の株式と交換することですから、財務内容が改善することを意味します。有利子負債のコストであった金利負担も減少しますので、今後の収益にも貢献します。この問題での債務の株式化は巨額ということですから、この会社は巨額の有利子負債を一挙に圧縮できたことになります。


また、債権者(銀行)が「債務の株式化」に応じるということは、その会社の企業価値(少なくとも将来価値)が有利子負債の価値を上回っていると見なしているということです。そうでなければ、債権者(銀行)は自社の株主に対する説明がつきません。たとえば、事業は優良なのに負債コストが重過ぎて業績が悪かったなどと、債務の株式化による今後のメリットが目に見える必要があるのです。


あるいは、その企業の債務が銀行にとってすでに不良債権となっていた場合には、債権放棄をすることにより貸出金と供にその企業を見捨てる選択肢もありえます。にもかかわらず、より大きなリスクを取ることになる債務の株式化を選択したということは、企業再生とその結果としての株価上昇に賭けたと見ることもできるのです。


債務の株式化はまた、自己資本比率の大幅改善(資本増強+負債圧縮)を意味します。自己資本比率が改善すると資金調達が有利となり、残る有利子負債をより有利な条件で借り換えることも可能になります。さらに、新たな収益機会の追求も出来るようになるのです。


もちろん、巨額の有利子負債を一挙に圧縮し株式に交換するという離れ技は、株式の希薄化という負担を既存株主に強いることにもなります。(2)の「需給バランスが悪化し、株価が下落すると予想されるので空売りする」という選択肢も考えられなくはありません。とはいえ、株価50円以下の株式を空売りすることは、リスク・リターンの面から勧めることはできません。


選択肢(3)のように「株価が50円を下回るような低位株は、値動きが非常に荒い」のは事実です。また、低位株は値がさ株に比べて少ない資金で大量の売買が行えることから、仕手筋に好まれます。つまり、仕手筋の意向によって動かされやすい銘柄だともいえます。とはいえ、キャピタルゲイン狙いの投機には値動きが必要なので、それが「様子見で手を出さない」ことの理由にはなりません。


2008年8月4日の寄り前時点で東証、大証、マザーズ、ヘラクレス上場で、額面50円以下の日本株は78銘柄あります。うち株価が1桁のものを除いても、52銘柄あります。大きな資金を持つ仕手筋ならこれらを買い上げるのは簡単ですが、自分だけで買い上げてしまうと買いコスト以上で利食うのが困難となります。仕手筋といえどパワーだけで相場を動かし儲けるのは難しく、それなりの材料を必要とするのです。「債務の株式化」は、仕手筋などが注目すれば、材料があるだけに株価を急騰させやすいのです。


もちろん、仕手筋が「株式の希薄化」を材料に空売りを仕掛けてくることも考えられます。しかし、すでに長期にわたって売り込まれてきた銘柄に、突如しっかりとした大株主が現れ、バランスシートも改善したとなっては、仕手筋の空売りはむしろ絶好の買い場を提供するだけです。ここは買い向かっていいでしょう。50円の株なら1万株買っても50万円です。潰れれば50万円失うことになりますが、債権者(銀行)が梃入れを表明した銘柄なのですから、しばらくは潰れないと見て、攻めの姿勢をキープしたいところです。

見事正解だったあなたは・・・

油断は禁物、ほかのカテゴリの問題にも挑戦してさらにセンスを磨く努力を怠らないようにしましょう。

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【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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