あなたの答えは、残念ながら 不正解 です

今週の解答

[ニュースに関する問題]

ある企業が前期比で大幅な増収増益の決算を発表しました。しかし、アナリストらの事前予想を下回っていたため売りが先行し、株価は5%程度下落しました。このような場合、どうするのが最も良いでしょうか。

正解は・・・
(2)押し目なのか、事前予想を下回ったため下げトレンドに入ったのか見極めが難しいので、様子を見て株価が上昇するようであれば買う


株式投資は本来、ビジネスに対する投資です。増収増益はその企業がビジネスを拡大しながら収益を伸ばしているという好材料です。とはいえ、株価がその材料をあらかじめ織り込んでいたなら、好材料の発表がそのまま「材料出尽くし」となり、売られてしまいます。それが単なる「押し目なのか、事前予想を下回ったため下げトレンドに入ったのか見極めが難しいので、様子を見て株価が上昇するようであれば買う」ようにします。したがって、正解は(2)となります。


株式投資の原点は企業業績です。事業家は株式市場などで調達した資金を事業で運用し、利益を計上します。投資家の側から見れば、自分で事業を行う代わりに、事業家に資金を預けて運用を任せます。その成果が業績です。


ですから、例えば利益が出せず赤字などということになると、「俺の大事な資金を使っていながら、経営者はいったい何をやっているんだ」となります。経営に携わる者が不正な運用などで会社に損害を与えた場合などは、株主訴訟ということもあるわけです。


「業績」といっても、さまざまな要素、見方があります。まずは、業績を見るために必要な主な指標と、それぞれの注意点をみておきましょう。


・売上(注:業態によっては、営業収入、経常収益、営業収益、正味保険料などと明記)
通常1年間の売上高。
売上を超える営業利益はないので、売上が伸びるのは好材料。


・営業利益(注:銀行は業務純益、損保は保険引受利益)
売上から売上原価、販売・管理費用等を差引いたもの。事業本来の収益で、会社の実態を見るうえでの基本指標。
増益は好材料。売上増と合わせて、増収増益はもちろん好材料。


・経常利益
本業の利益(営業利益)に営業外損益(金融収支など)を加減した基本的な利益。
経常益増はもちろん好材料なのですが。営業外損益は水ものともいえますので、中身を十分に吟味する必要があります。


・税引後利益(当期利益)
経常利益に特別損益(土地の売買損益など)を加減して、法人税、住民税、法人事業税を差引いたもの。
増益はもちろん好材料なのですが、特別損益は一時的なものが多いので、はやしすぎで買われているような場合は、売り材料にされることもあります。


・1株(当たり利)益
税引後利益(当期利益)を発行済株式数で割ったもの。規模のメリットに惑わされず、1株当たりのリターンを比較できるため、業績を比較するのに最も便利な指標。
増益は好材料。注意点は経常利益、税引後利益(当期利益)に同じ。


・1株配(当)
1株当たりの現金配当金額。増配は好材料といえるものの、高配当は評価の分かれるところです。配当が多いことは喜ばしいことには違いありませんが、利益を新たな設備投資に当てたり、内部留保として置いたりすることは、事業に対する前向きな姿勢とも言えます。株主に対する利益の還元は、配当だけによるものではなく、さらなる成長、すなわち株価の上昇でも行えます。


・ROE(Return On Equity)
株主資本利益率。当期利益を期末株主資本で割ったもの。株主資本を使ってどれだけの利益をあげているかを見る比率です。この比率が高いのは好材料。最も的確に経営者の優劣を判断できる指標との見方もあります。


・CFPS(Cash Flow Per Share)
1株当たりのキャッシュ・フロー。企業が保有する現金、預金を発行済株式数で割ったもの。この数値が高いのは好材料。資金繰りがつかないために黒字倒産などという例もあることから、近年ことに重要視されだした指標です。
高すぎるCFPSは、資金の有効利用ができていないとして、LBOの標的になる場合もありますので、その側面からも株価には好材料です。


これらの数値が良いと株価は基本的には買われます。ところが今回の問題のように、アナリストが更に良い数値を予測し、株価がその良い数値に見合って買われていると、発表された実際の数値は見劣りしてしまいます。良い数値でも失望売りを誘うことになるのです。


また、アナリストの予測通りの数値であっても売られることがしばしばあります。たとえば、増収増益という夢を買っていた人たちにとっては、発表という夢の実現は、いったんの夢の消滅を意味します。「うわさを買って、事実を売れ(Buy the rumour, sell the fact/news)」というのは、うわさという夢の段階で買っていても、夢が現実となって消滅すれば売られることを表しています。


とはいえ、好決算の数値で新たな夢を見る人が出てくれば、売られたところは買われますので、(3)の「決算内容をどう評価するにしろ、発表後に購入を検討するのは遅すぎるので、いったんこの銘柄のことは忘れる」を正解とはできません。


一方、決算発表の数値がアナリストの予測を下回ったことで、その数値が夢の続きを見せてくれるものでなければ、増収増益とはいえ株価がそのまま低迷してしまうこともあります。したがって、(1)の「事前予想を下回ったとはいえ増収増益は好材料に違いないので、株価が下がった今を絶好の押し目と捉えて買う」と決め付けるのは危険です。


したがって、(2)の「押し目なのか、事前予想を下回ったため下げトレンドに入ったのか見極めが難しいので、様子を見て株価が上昇するようであれば買う」ように、値動きに反応するのがよいのです。

残念ながら不正解だったあなたは・・・

実際に運用をする前に、ほかの「ニュースに関する問題」で、さらに勉強しましょう。

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【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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