あなたの答えは、残念ながら 不正解 です

今週の解答

[ニュースに関する問題]

ある日、中国の中央銀行である中国人民銀行が人民元を対米ドルで約3%切り上げると突然の発表をしました。このニュースを材料に日本株を買うとすると、どのような業種がよいでしょうか。

正解は・・・
(3)内需依存型の電力関連


中国人民元高/米ドル安の影響は、元高による元高/円安と、ドル安によるドル安/円高につながります。ドル安/円高は燃料の輸入を中東などの海外に頼っている電力関連のコスト押し下げ要因です。正解は(3)の「内需依存型の電力関連」となります。


元が切り上げられると、中国からの輸出が割高となり、中国の輸出企業の価格競争力が減少します。一方で中国から見た海外の製品が安くなり、中国人による海外旅行のコストなども下がります。これらは中国の経常収支の悪化要因であり、景気の後退要因となります。


日本の自動車関連企業にとっては、中国の自動車関連企業に対しての価格競争力を得る反面、中国市場の魅力そのものが減退するというジレンマを抱えます。一方、ドル安/円高によりアメリカの自動車関連企業に対しての価格競争力を失うことになりますので、トータルでは収益の悪化要因となります。したがって、(1)の「北米、欧州、中国を含む各国に輸出している自動車関連」は正解とはなりません。


また、元高/円安は中国から製品を輸入する企業のコストを押し上げます。中国から衣料品などを輸入することの魅力の大半はその価格競争力にあるのですから、仕入れ価格の上昇は収益の圧迫要因です。(2)の「中国から大量に輸入している衣料品などの繊維関連」も不正解です。


中国元の動向が日本の内需に与える影響は大きくないでしょう。とはいえ、外為市場は様々な通貨がそれぞれに連動して動く通貨の交換市場ですから、1つの通貨がある通貨だけに対して動くことはできません。元が対ドルで上がれば、程度の差こそあれ対円でも上がり、ドルが対元で下がれば、程度の差こそあれ対円でも下がるのです。結果としてのドル安/円高は、燃料を海外から輸入する日本の電力会社にとってコストダウンになりますので、収益のプラス要因となります。


ここで、元の切り上げにより世界経済のけん引役である中国経済が予想以上にダメージを受けた場合には、日本を含む世界の経済にネガティブな影響を与えます。問題文の3択の中では、その影響をもっとも受け易いのが自動車関連などの輸出企業です。


また、製造業が落ち込めば電力需要も減りますので、ひいては電力関連の収益も圧迫し始めます。一方、中国からの輸入品を日本国内で販売する繊維関連企業に与える影響は軽微です。もしかすると、中国国内での労働コストが下がり輸入品が安くなるメリットが出てくるかもしれません。したがって、中国経済のダメージが予想以上に長引けば、電力関連から繊維関連への入れ替えも視野に入ってきます。以上が、問題文から展開する連想ゲームです。


しかし、連想ゲームは連想ゲームでしかありません。人民元の切り上げによって元高/米ドル安は間違いないとしても、ドル円相場や株式相場の変動要因はそれだけではありません。相場は実需(事情)と仮需(意欲)とが複雑に絡み合って動くのです。したがって、連想ゲームでドル安/円高だと判断しても、たとえばその日に石油会社が原油購入の支払いをし、また原油高による原油輸入金額が大きければ、ドル高/円安に振れてしまいます。そうなれば、電力会社のコストが上がり、自動車関連が価格競争力を得るというような別の連想ゲームが始まるのです。


この問題のケースでどれかを買うなら、(3)の「内需依存型の電力関連」です。とはいえ、この材料だけで電力を買うのはこころもとないでしょう。いずれにせよ、材料はどんなに説得力のあるものでも材料でしかありません。どのような場合にでも、最も効率的な運用は価格の動きに反応することなのです。

残念ながら不正解だったあなたは・・・

実際に運用をする前に、ほかの「ニュースに関する問題」で、さらに勉強しましょう。

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【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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