あなたの答えは、残念ながら 不正解 です

今週の解答

[資金管理に関する問題]

あなたは老後のことを考え、余裕資金で株式投資を始めました。どうせ投資をするなら大きなリターンを得たいと、自分なりに調べて大きく値上がりしそうだと思う銘柄を購入しましたが、一向に儲けが出ず損切りが続いています。そんな時、機関投資家の間では大きなリターンを狙わず、TOPIXや日経平均などの指数(インデックス)と連動した収益を目指すパッシブ運用が主流を占めていると聞きました。あなたはどのようなスタンスを取るべきでしょうか?

正解は・・・
(2)個人投資家であれば、損切りでリスクを管理しつつ大きなリターンを目指すアクティブ運用が望ましい


これは考え方の問題ですから、あなたが尋ねる人によって答えは様々だと思います。ここは、「矢口新のトレードセンス養成講座」ですから、トレーダーを肉食獣に例える私の相場に対する姿勢を反映して、正解は(2)の「個人投資家であれば、損切りでリスクを管理しつつ大きなリターンを目指すアクティブ運用が望ましい」となります。


投資運用を農業に例える人もいれば、狩猟に例える人もいます。私はトレーダーを肉食獣に例えるのですから、狩猟のようなものと見なしていることになります。


農業であれば、種まきの時期、手入れの時期、収穫の時期と、丹念に時間をかけて種銭を育成することになります。ここで、自然相手の農業ではどうしても気温や天候など、自然環境の変化のリスクを背負うことになります。これはいわばパッシブ運用で、市場全体が下げてしまえば、リターンはマイナスとなってしまうことを意味します。


また、自然環境に恵まれて豊作であっても、それだけの需要がなければ価格が下がります。更には価格が上げているのに、インフレなどで他の生活物資の方が上げていたり増税などがあれば、実質的な可処分所得は減少します。パッシブ運用で名目リターンがプラスでも、高インフレにより実質リターンがマイナスということがあるのと同じです。


もちろん農業でも、先を読んで売れ筋の作物を育てれば市場変化の影響を最小限にする、あるいは環境に抗ってポジティブなリターンにつなげることも可能でしょう。これはアクティブ運用です。ここでのリスクは読み間違いです。


狩猟でも、アクティブとパッシブに分けられるかもしれません。例えば、草食獣の通り道や水飲み場に待ち構える肉食獣は、パッシブな狩猟です。例年通りの学習や経験をもとに、草食獣が現れそうなところで待ち構えます。パッシブな狩猟のリスクも、農業と同じく環境の変化です。どんなにたくさんの獲物がいても、気温や天候の変化で草食獣の通り道や水飲み場が変わっていれば、いつまで待っても獲物はやってきません。つまり、パッシブ運用のリスクは市場環境の変化にあります。ここでの救いは、市場環境の変化は同じパッシブ運用している者には平等に訪れるということです。自分だけが苦しいという辛さからは逃れることができるのです。


アクティブな狩猟とは、草食獣を求めてさまよい歩くことを意味します。獲物がどこかにいる限り、探し当てればいいのです。リスクは狩猟者自身の能力の低下です。嗅覚、視覚、聴覚など五感や六感だけでなく、気力の衰えもリスクとなります。獲物がまったくいなくなるリスクもありますが、おそらくパッシブより先にそのリスクに気付くので、より長く生き残ることができるでしょう。ここで救われないのは、自分自身に狩猟の能力がないと、自分だけが飢えてしまうことです。


市場全体が下げていても上げる銘柄があるというのは、銘柄選別の力さえあれば、安定したリターンを望めることを意味します。また、前年比で何パーセント上げたなどというトレンドの上げ幅より、上げ下げの価格波動の方が常に大きいので、タイミングを捉える力さえあれば、安定したリターンが望めることになります。つまり、アクティブ運用の方がパッシブ運用より、常に格段に大きなリターンを望める可能性があるのです。もちろんこれは可能性だけで、リスク管理を疎かにすれば、大きなロスにつながります。


老後に備えてより安全に資金を運用したいのなら、確定利付き商品での運用がいいのです。慣れないうちは資金の大半を国債などノーリスクとみなされる金融商品で運用し、少額で株式のアクティブ運用を行います。銘柄選択やタイミングの取り方に慣れるに従い、資金を増やしたりレバレッジをかけるようにしていきます。


株式でのパッシブ運用がアクティブ運用よりリスクが少ないと思うのは誤解です。市場任せでリスクを管理しないパッシブ運用では、下げトレンドに入ると損失がどんどん膨らみます。「損切りでリスクを管理しつつ大きなリターンを目指すアクティブ運用」の方が、実はリスクが小さいのです。アクティブ運用を支える相場力のアップについては、拙著やこの養成講座がお役に立てることと思います。

残念ながら不正解だったあなたは・・・

実際に運用をする前に、ほかの「資金管理に関する問題」で、さらに勉強しましょう。

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プロフィール

【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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