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あなたはテクニカル分析による買いサイン・売りサインを元に株を売買しています。しかし、絶好の買いサインが出たと思い買ってみても、それが「だまし」で、損をするというようなことが多くありました。だましをどう捉え、どのようにトレードすべきでしょうか。

正解は・・・
(2)テクニカル分析にだましは付き物だが、時間をかけて見極めていては絶好のチャンスを逃してしまうこともあるので、だましだった場合の素早い損切りを前提に、サインに従って売買する


テクニカル指標での売り買いのサインは、一定期間の過去から現在までの値動きをベースに、未来の値動きを大胆に予測して出すものです。とはいえ、未来に何が起きるかは誰にも分かりません。したがって正解は、(2)の「テクニカル分析にだましは付き物だが、時間をかけて見極めていては絶好のチャンスを逃してしまうこともあるので、だましだった場合の素早い損切りを前提に、サインに従って売買する」となります。


テクニカル指標での売り買いのサインを大別すると、相場の行き過ぎを押さえるものと、方向に付くものとに大別されます。


相場の行き過ぎを押さえる代表的なものには、RSIやボリンジャーバンドなどがあります。これらは短期間のうちに価格が動き過ぎると、逆張りをすすめるシグナルを出します。


RSIは短期間に大きく上昇、または下落すると、それぞれ買われ過ぎ、売られ過ぎのサインを出すようになります。RSIそのものは売り買いのサインにつなげるものではありませんが、買われ過ぎを表す数値が下げ始めてから、売り始めろという人がいます。つまり、買われ過ぎになったからといってすぐに売るのは危険なのです。


ボリンジャーバンドは、ヒストリカル・ボラティリティを目で見えるようにしたものとお考えください。たとえば、過去の実際の値動きを表わすヒストリカル・ボラティリティが16%の株があったとします。ボラティリティの表示は年率でなされるので、まず1日当りのボラティリティになおすことにします。


ここで「ある期間でのボラティリティが1%である場合、その期間を2倍にすると、ボラティリティは1.41421356%になる」という事実があります。つまり、√2になるのです。土日休日を除いた1年の立会日が約256日だとすると、√256は16ですから、年率のボラティリティを16で割ると1日分が出ます。すなわち、この株の場合だと、1日のボラティリティは1%になります。


この場合、オプションの理論に用いられている正規分布の確率論では、この株価は68.3%の確率で引け値が前日の引け値の上下1%ずつの変動幅に収まることになります。また、95.4%の確率で上下2%ずつの変動幅に収まり、そして99.7%の確率で上3%下3%の幅に収まることになります。


これがヒストリカル・ボラティリティが32%の株だと、1日のボラティリティは2%になるので、68.3%の確率で引け値が前日の引け値の上下2%ずつの変動幅に収まります。また、95.4%の確率で上下4%ずつの変動幅に収まり、そして99.7%の確率で上下6%ずつの変動幅に収まることになります。このことは、ヒストリカル・ボラティリティが32%の株が1日で6%以上下落したなら、ほぼ100%の確率で引け値では6%の内側に戻っていることを表わしています。大きく売られたなら、買って良いのです。


これらのテクニカル指標が伝えてくれるのは、短期的に相場が行き過ぎると「逆張れ」ということです。短期的な大動きの背景には、投機資金の存在が暗示されます。投機資金はレバレッジにより、ある日突然大量の資金を動かします。ところが、こういった借入金は返済の義務がありますし、ヘッジファンドなどに預けた人も短期的なリターンを欲しています。つまり、買われたものは早晩売り戻されますので、逆張っていいのです。典型的な投機資金は日計りで、買ったものはその日のうちに売り戻します。


ところが、標準偏差の両端の極端に確率の低いゾーンでは、極端に例外が多いとも指摘されています。つまり、株価の急落急騰時に確率を頼みに逆張ると、あり得ないほどの確率が頻発してやられてしまうのが相場でもあるのです。


一方、相場の方向に付くもので代表的なものは移動平均線です。移動平均線は価格の動きを短期線、中期線、長期線の順番に追いかけます。相場が転換し、価格がいままでとは逆に進み始めると、短期線、中期線、長期線の順に転換を始めます。そして、価格を追って真っ先に転換を始めた短期線が、まだ転換には至っていない中期線を横切ることを、下から上ならゴールデンクロス、上から下ならデットクロスと呼び、それぞれ、買い、売りのサインとされます。価格が転換してからサインを出すまでの両端をフィルターと呼びます。


フィルターが小さ過ぎて、ささいな戻しでもサインにつなげてしまうと、いわゆる「だまし」が多くなり、売り買いが忙しくなってしまいます。一方、フィルターが大き過ぎて、確認に時間をかけ過ぎると、サインを出した頃には、上げ下げサイクルのほとんどが終わっているようなことになります。売り買いの指示を出すテクニカル指標は、つまるところ、このフィルターの大きさをどうとるかが決め手となります。


投資資金は手持ちの資金、預かった資金の運用ですから、急激に資金が膨張することはまずありません。投資資金の動きはゆっくりとしたものです。したがって、移動平均のようにトレンドの転換を確認してから「順張り」していいのです。とはいえ、移動平均からの大きなかい離には「逆張る」ようにすすめるテクニカル指標が多くあります。


つまり、テクニカル指標での売り買いのサインは、指示に従って行動すれば必ず儲かるというようなものではありません。一般にサインが機能しないことを「だまし」とは言いますが、「だまし」は相当の確率で起きることが予め前提となっているのです。何故なら、テクニカル指標でのサインとは、一定期間の過去から現在までの値動きをベースに、未来の値動きを大胆に予測して出すものだからです。つまり、相場の現在の状況を映し出しているだけで、未来に何が起きるかは誰にも分からないのです。


他の選択肢をみてみましょう。


(1)の「テクニカル分析にだましは付き物なので、サイン後の値動きを見てだましでないかを確かめてから売買する」では、多くの場合、売買のタイミングを逃してしまいます。移動平均線によるテクニカル分析を例にとると、いわゆるフィルターを大きくすることになりますので、最悪の場合には確認できたと思ったら反転が始まるようなことにもなってしまいます。


(3)の「複数の指標を組み合わせ、テクニカル分析の精度を高めればだましは回避できるので、そうなるまではサインを元に売買はしない」は、ないものねだりになります。相場の行き過ぎを押さえるテクニカル指標と、方向に付くテクニカル指標はしばしば正反対のサインを出します。また、同じ指標でもデータに含める過去の期間の違いにより正反対のサインを出すことがあります。つまり多くの指標を見れば見るほど、様々な指示が飛び交うことになり、結局は何も見ないのと同じになってしまうのです。加えて、どんなテクニカル指標のデータもすべて過去から現在の値動きに過ぎず、未来に責任を持たない点では同じです。


テクニカル分析による売りサイン・買いサインは、売り買いの動機付けに過ぎません。とはいえ、テクニカル指標は相場の現況を正確に伝えてくれますので、慣れてくれば最も頼りになる売買の手掛かりとなります。したがって、正解は(2)の「だましだった場合の素早い損切りを前提に、サインに従って売買する」となるのです。

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プロフィール

【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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