あなたの答えは、残念ながら 不正解 です

今週の解答

[投資心理に関する問題]

米国発の金融不安のあおりを受け、日本株も全面的に大きく値を下げています。あなたは既にポジションを整理しており、大きなダメージを受けておらず、資金に余裕があります。このような場合、どのようなスタンスで投資に臨めばよいでしょうか?

正解は・・・
(3)全体が下げているといっても、すべての銘柄が下げ続けるわけではない。この状況下でも値を上げそうな銘柄を探して購入する


テレビなどで株式市場のニュースを聞いていると、市場全体の上げ下げだけでなく、上昇銘柄数、下落銘柄数にも触れています。市場全体が下げトレンドに入っていても、根気よく探せば上げトレンドにいる銘柄が見つかるものです。正解は(3)の「全体が下げているといっても、すべての銘柄が下げ続けるわけではない。この状況下でも値を上げそうな銘柄を探して購入する」となります。


国や勤めている会社が上り調子の時に、すべての人が個人的にも上り調子ということはないでしょう。読者の方々のなかにも、自分だけが取り残されていると感じた経験を持つ人がいることかと思います。また、周りが下り調子の時に、自分は何とか上り調子を維持できていることもあろうかと思います。オリンピックなどで国としては惨敗の時でも、誰かが金メダルを取っていたりもします。株式市場も同じで、全体がどんなに下げている時にでも、上げる銘柄があるのです。


2008年9月末からの急落で、絶好の買い場がきたとばかりに買う人や、新しく証券会社に口座を開く人が多いと聞きます。バリュー投資(割安株投資)で有名なプロの投資家たちも、ここぞとばかりに買いを入れたり、買い推奨しています。確かに、長期投資家が買われた後に買うのは愚の骨頂で、売られて割安になったところを買うのが王道です。


とはいえ、果たして今回の下げ相場が、売られたから割安だと言いきっていいものかどうかは疑問です。今回の相場では、アメリカの投資銀行がすべてなくなるという、数十年、百年単位の大変化が起きています。ここ10年以上にわたって、OTCオプションの最終値付け役となってきたゴールドマン・サックスが銀行持ち株会社の傘下に入りました。また、ある程度の規模以上のアメリカの銀行には押しなべて公的資金が導入されています。こういったことで予想されるのは、金融取引に対する当局の規制が大幅に強化されるだろうということです。レバレッジが縮小され、投機資金が減少します。


新興国の株式ブームをつくったのも、不動産リートを買い上げたのも、商品相場を空前の高値に持ち上げたのも、主役は投機資金です。欧米の不動産市場のバブルを演出し、サブプライム問題に大きく関わってきたのも投機資金です。その投機資金がこれから縮小していくのですが、どこで再び拡大するのかが今はまだ見えません。たとえば、リーマン・ブラザーズ破たんによって凍結されているポジションはこれから換金されて、目減りしたローンや出資金の一部が債権者や出資者に返されますが、保有商品がどんなに安くなっても、リーマン自身が買い戻すことはありません。つまり、今後出てくる投機資金の膨大な換金売りは、より規模の小さな投資資金で買い止めるしかないのです。こういった見方が正しければ、大きく売られたところを目先の反発期待の短期資金で買うのはいいが、長期保有するのは慎重であるべきだとなります。


とはいえ、日本株市場は幸か不幸か、他の市場と比べて著しくパフォーマンスが低かったので、あまり投機資金が入っていない可能性があります。現に2003年4月の大底水準まで売り込まれているのですから、ここからの下げ余地はあまりないとの見方もできます。私自身そういった見方をしていますが、何しろ数十年、百年単位の大変化ですので、確信できるものはありません。ここでの長期保有は博打に近いと思っています。


他の選択肢を見てみましょう。


(2)の「『資産家は恐慌時に生まれる』、資金に余裕があれば、全体相場に引きずられ、下げすぎている銘柄を購入する」のは、いささか冒険かもしれません。ゴールドマンや他の投資銀行、ヘッジファンドなどが抱えていた膨大なポジションを受け止めることになるからです。また、これから企業収益が悪化すれば、今の割安感は消えてしまいます。恐慌時に生まれる資産家の数はひと握りでしょう。あなたがその選ばれたひと握りに入れる確率は高くないと思います。


とはいえ、(1)の「『休むも相場』、無理して相場に参加する必要はない」と様子見を決め込んでしまうと、数十年、百年単位の大変化をぼんやりと横目で見てしまうことになります。


間違いなく出てくる大量の売り物に、下げたからという理由だけで買い向かうのは危険すぎます。自分の力で流れを止めるのはウォーレン・バフェットのような大物でも大変です。しかし、すでに十分に売り込まれていて自律的に反発しそうな銘柄や、独自の成長を維持している銘柄を狙えば、その勢いに乗ることができます。


ここは、(3)のように「この状況下でも値を上げそうな銘柄を探して購入する」こととし、思惑とは違って下げるようなことがあれば損切るなど、リスク管理を徹底するのが乱世を生き残るコツなのです。

残念ながら不正解だったあなたは・・・

実際に運用をする前に、ほかの「投資心理に関する問題」で、さらに勉強しましょう。

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【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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