あなたの答えは、正解 です!

今週の解答

[資金管理に関する問題]

あなたが2年ほど前に余裕資金で購入した銘柄は、購入後から値を下げ続けて、今では30%ほどの含み損を抱えています。途中、損切りしなければと思いつつ、その決心が付かず塩漬けになってしまいました。しかし、直近のチャートを見てみると、下げ止まりの兆しも見られます。このような場合、どうするのがよいでしょうか。

正解は・・・
(2)2年も保有し、ここに来て下げ止まりの兆候が見られるのであれば急いで手放す必要はないので、様子を見て反転しないようなら手放す


最も効率的なリスク管理は損切りです。購入した投資物件が想定以上に値を下げ、上げると考えていた自分の思惑と違ってきたなら、それ以上の損失拡大の可能性を断ち切るには売り払うのが一番です。とはいえ、損切りには投下資金の減少という痛みが伴いますので、機械的に行えばいいというものではありません。下げ止まっているのに損切ることはありません。正解は(2)の「2年も保有し、ここに来て下げ止まりの兆候が見られるのであれば急いで手放す必要はないので、様子を見て反転しないようなら手放す」となります。


損失を確定するために何故損切るのか?サブプライム関連商品という例にもあるように、これは投資家として相当のベテランでも、どこまで理解しているか疑問です。


株式など投資物件を購入するにはそれなりの投資基準があります。ファンダメンタルズを見ている人たちでは、成長株投資と割安株投資に大別されます。成長株投資とは優良企業が増収増益を続けると見込んでの順張り投資です。一方の割安株投資とは、売られたり安値で放置されている銘柄の価値を見出しての逆張り投資です。どちらも企業が発表する数値などのデータが正しいと信じるところから始まります。また企業を取り巻く環境が変われば、成長度に変化が現れたり、相対的な割安感に変化が生じますので、マクロ経済も分析します。こちらも政府などが発表するデータが正しいことが前提です。


データを自分勝手に操作するのはごく一部の企業や役所だけで、ほとんどのデータは信頼できるものだと仮定してみましょう。ところが、それらのデータは会計基準や統計に使うサンプルを変えるだけで、大幅に変化してしまいます。つまり、あなたがファンダメンタルズの数値として信頼しているものは、仮定の積み重ねによって築き上げられた砂上の楼閣のようなものです。加えて、どんなにファンダメンタルズの分析が正確かつ適切でも、それと株価とには直接の関係はありません。企業のファンダメンタルズの良し悪しと株価が連動するとは言えないのです。


ファンダメンタルズ分析での投資とは、「AがBの状態のとき株価がCであるとすれば、状態がB’に変化すれば株価にはどのような変化が表れるか?」といった「投資問題」を解くようなもので、ほとんどの投資家はその設問自体に意味があるのか?使われる要因が適切か?数値に間違いがないか?などは考えないのです。すべてはこれまで概ね当たってきたという経験則に裏付けられているに過ぎません。そして、ファンダメンタルズ分析の経験則は数十年位の歴史しかないのです。


2008年の9月は投資環境に大変化が起きた月として、今後ずっと記憶されていいでしょう。日本の幕末の頃から、アメリカが世界に進出する上でのファイナンスを受け持ってきた投資銀行が壊滅したのです。ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーは組織としては生き残っていますが、商業銀行として当局の監査を受ける身となりました。このことでまず疑いがないのが、レバレッジが縮小しヘッジファンドを含む投機資金が減少するということです。これはポジション縮小の換金売りを意味しますので、世界の株価急落の原因の1つ、商品相場の暴落や円急騰の主因となっています。このことは、これまでの経験則がどこまで通用するか、今後試されることを意味します。


損切りが大切なのは、あなたが拠り所にしている投資の根拠があやふやだからです。あなたが勉強不足だからではなく、あなたが影響を受けてきた投資のプロたちの根拠があやふやだからです。そして万に一つ、その根拠がどんなに盤石でも、所詮、明日のことは誰にも分からないのです。上げると思って買ったものが値を下げたなら、素直に見込み違いを認めて損切りましょう。


さて、今回の選択肢を見てみましょう。


(1)の「含み損を抱えているのであれば、今からでも遅くないので急いで手放す」のでは、何で今更という疑問に対する合理的な答えに窮します。本来なら30%も下げ続ける前に損切るべきでありました。下げ止まった今では、もう遅いのです。もっとも、更に下げそうになれば、損切るしかありません。


(3)の「塩漬けの状態が続く可能性も、ここから反転する可能性もあるので、半分は手放し、半分は保有し続ける」では、ポジションが半分になっただけで、損失が拡大するリスクに対して無防備です。また、反転した場合にでも、当初の資金を回復するのが困難になります。


(2)の「2年も保有し、ここに来て下げ止まりの兆候が見られるのであれば急いで手放す必要はないので、様子を見て反転しないようなら手放す」のが正解です。これ以上下げなくても手放すのは、上がらないものを保有していると資金を寝かせることになるので、目減りしてしまったとはいえ、投下資金を回収した方がいいからです。

見事正解だったあなたは・・・

油断は禁物、ほかのカテゴリの問題にも挑戦してさらにセンスを磨く努力を怠らないようにしましょう。

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プロフィール

【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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