今週の解答
[投資心理に関する問題]
ある日の日経平均は前場、1,000円近い暴落を見せ、あなたの保有する銘柄も値下がりしました。しかし、ファンダメンタルズをはじめ悪材料が特に見当たらないためか、下げ幅は限定的で損切りラインには達していません。しかし、このまま市場全体の下げに押され、後場にかけてさらに大きく下がるのではないかと不安です。このような場合、どうすればよいでしょうか?
(2)狼狽売りはよくないので、損切りラインに達するまでは保有する
個別株の動きは必ずしも市場全体の動きとは一致しません。あなたの保有株の下げ幅が当初に想定した範囲内であるならば、損切らない方がいいでしょう。損切った後に反発されたなら、すべてはあなたの想定通りの動きでいながら、損失を出してしまいます。正解は(2)の「狼狽売りはよくないので、損切りラインに達するまでは保有する」となります。
株式市場の勢いを推し量る指標に当落比率というのがあります。株式市場は固有の企業の株式の集まりですから、多くの企業に影響を与え得る景気指標の悪化だとか、円高などといういわゆる悪材料にすべての銘柄が売られるのは異常です。すべてとはいかずとも、8割以上の銘柄が売られるのはパニックの兆候とみなしていいでしょう。
パニックとは材料に対する過剰反応ですから、良いものも悪いものも一緒くたになって売られます。悪材料に反応すべきものは仕方がないとしても、そうでないものも売られてしまうのは、単に連れられているだけです。売られてしかるべきものでも短期的な行き過ぎには反発が期待できるものですが、そうでないものは反発してしかるべきとなります。
そんななかで、あなたの保有株は下げ渋っているようです。日経平均での1,000円近い暴落だと、多くの銘柄がテクニカル的なサポートラインを下抜けていることと思います。あなたの保有株も下抜けているのなら、あなたの損切りポイントはおおらか過ぎると思います。テクニカル指標は少なくとも数百年は生き残ってきた指標ですから、それなりの敬意を払う価値のあるものです。保有株がテクニカル的なサポートラインを下抜けているなら、損切るべきです。
一方で、この大幅安の中でもサポートラインを下回っていないのなら、逆に買いサインとなるのです。サポートサインは上下にはじく力を持っていますので、近付いても保っている間は反発が期待でき、抜けてしまえば一段下げの可能性が出てきます。
今回の選択肢を見てみましょう。
(1)の「市場全体がパニック状態に陥っていると考えられるので、早めに手仕舞いしておく」では、自分もパニックになって売り払うことに参加することになります。火事だという叫びに、小さな出口に殺到して被害を大きくするようなものです。火事でない場合すらあるのですから。市場全体がパニック状態に陥っていると判断できるなら、あなた自身は冷静でいましょう。
(3)の「パニック状態でもよく持ちこたえており、落ち着けば上昇の可能性も高いので、パニックが落ち着くまでは保有する」では、あなたの保有株もパニックに巻き込まれて、どこまでも下げ続けることのリスク管理ができていません。下げ相場の中で保有している根拠は、パニック中だからではなく、損切りラインに達していないからなのです。
損切りすると投下資金が減少します。したがって、損切りは出来る限り避けたいものです。しかし相場が下げ続けると、投下資金はもっと減少します。下げ続ける危険性がある時、損失の拡大を未然に防ぐには売り払うしかないのです。正解は、(2)の「狼狽売りはよくないので、損切りラインに達するまでは保有する」なのです。
書籍
プロフィール
- 【監修】矢口新(やぐち・あらた)
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1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。
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