あなたの答えは、残念ながら 不正解 です

今週の解答

[ニュースに関する問題]

あなたが保有している銘柄が、予想外ともいえる好業績を発表しました。これまでほぼ横ばいだった株価も大きく値上がり、その日はストップ高で張り付いたまま取引を終え、あなたの含み益は20%を超えています。あなたほかの保有銘柄で多少損を抱えており、この銘柄はこの辺りで利食いしようと考えています。しかし、翌日は仕事の都合などもあり、トレードができそうにありません。このような場合、どうするのがよいでしょうか。

正解は・・・
(1)確実に利食いするために、成行で売り注文を出しておく


今回の問題の答えはすでにあなたが下しています。あなたが「この銘柄はこの辺りで利食いしようと考えて」いるのなら、正解は(1)の、「確実に利食いするために、成行で売り注文を出しておく」となります。


長期にわたってトレーディングで利益を残していくには、損失を小さく、利益を大きくすることに尽きます。ところがこうした試みが、損切りポイントには近く利食いポイントには遠い結果となり、損切りは簡単につくが、なかなか利食えないということになりがちです。そこで、私が自分を戒めるためにも考えた解決策が、「簡単に利食うな、確実に利食え」ということなのです。拙著『実践・生き残りのディーリング』から、その部分を引用します。


92.利食い千人力―簡単に利食うな、確実に利食え―


利食いこそが勝負を決めると信じる私にとって「利食い千人力」という言葉の響きはいかにも安易で、長らく受けつけない言葉でした。


この言葉を嫌うあまり、利食いそのものが遅くなり、何度利食い損ねたことでしょうか。そこで、考えに考えたあげく、右のサブタイトルを付け加えました。そのとたん、この言葉が生きてきたのです。


けっして忘れてはならない言葉「損は切るもの」とともに、相場で最も重要な言葉が「簡単に利食うな、確実に利食え」です。


思えば千人力などという、いかにも簡単に利食わせようとする姿勢が、私は嫌いだったのです。利食いそのものを嫌いなわけがありません。辛抱して大きく育て上げた利益を確定する瞬間は、気持ちの良いものです。そこが相場の転換点であれば、なおのこと快感です。至福の瞬間とも言えます。だからこそ、利食いを安易に取り扱ってはならないのです。真剣勝負なのです。


相場に入るにはコストがかかります。人件費や設備などの諸々の費用はもちろんのこと、ポジションを取って逆にいった場合の損切りコストも頭に入れておかないと、ネットで収益を上げることは困難です。単純に考えると、相場の上げ下げは5分5分の確率、勝ち負けは5割の確率です。勝ち負け半々で収益を残すには、大きく勝って小さく負けること以外にありません。そこで、私たちは利食いと損切りのレベル、リスクリバーサルの値幅を2対1、ないしはそれ以上に設けることによって、より大きく勝とうと試みます。


ところが、その試み自体が負ける確率を高めてしまいます。すなわち、値幅が小さくレベルが近い損切りオーダーのほうが先につく可能性が高まるのです。したがって、勝率5割でも、実は望み過ぎだとも言えるのです。つまり、損小利大のディーリングを行い、少ない勝率でも、確実に残せるようにしなければなりません。


損切りとは、どこまでやられるか分からないから実行するのです。ずるずると引きずっても、結果が良くなるとは言えません。損切りの場所は、通常の価格のブレをどれほどと見るかだけで決めるべきです。損切りオーダーは機械的に入れてもよいでしょう。それによって、損の総額は限定されるのです。


反対に利食いは限定してはなりません。損切り幅の2倍で利食うというのは、あくまで最低限の目安です。利食えるからと千人力を発揮していては、コストをカバーして儲けを残すことはできません。利食いは、反転の兆しが見えるまで引っ張る気持ちが必要です。どこまでやられるか分からないから、損切りオーダーを入れるのと同様の発想で、どれだけ儲かるか分からないのに、利益を限定してしまうことはないのです。


とはいえ、忘れてはならないのは、評価益は絵に描いた餅にすぎないことです。確定してこその利益です。せめて一部だけでも確実に利食うことを勧めます。


また、為替や主要国債など流動性の高いものはまだしも、流動性に欠ける商品の評価益と実現益とは、似て否なるものと考えていたほうが無難です。私はそういった商品は、強い営業力が背景にあって初めて扱える商品だと思っています。高いオファーで買わせ、安いビッドで買い取るという強い営業力さえあれば、流動性のないものはむしろ高収益が約束される商品でもあるのです。個人投資家が扱うときは、まだ上がりそうなときに売り逃げるのが賢明です。


利食いは永遠のテーマです。確かに、ストップ高が何日が続くようなこともあるので、もう何日かは様子を見たくなってしまいます。とはいえ、ストップ高の翌日にはストップ安などということもあるのです。この問題のように、翌日に相場を見ることができないのなら、(1)のように「確実に利食いするために、成行で売り注文を出しておく」のが上策です。


他の選択肢も見てみましょう。


ストップ高が何日が続くようなこともあるので、(2)の「ストップ高ぎりぎりの指値で売り注文を出しておき、それで成立しなければ、翌日以降に売る」という選択をしたくなる気持は分かります。とはいえ、この銘柄のボラティリティは高まっていますので、これまでの利益をすべて吹き飛ばす覚悟がいります。あまり相場を楽しみ過ぎると、高くついてしまうものです。


また、相場はタイミングです。これだけ動いている時に、(3)のように「急いで注文を出す必要はないので、翌日以降、値動きを見ながら値下がりの兆しが見えたら売る」ようなことをしていると、いつまでもその「兆し」を見る目は育たないと思います。

残念ながら不正解だったあなたは・・・

実際に運用をする前に、ほかの「ニュースに関する問題」で、さらに勉強しましょう。

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【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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