「相場力ＵＰ」に役立つ矢口新の『トレードセンス養成講座』

利食いに迷った時は、自分のポジションによって判断が歪められるのを防ぐために、何も持っていなければ買うか、売るかと考えます。新しく投資を考えるとき、今回の問題の場所のように、下押し覚悟で抵抗線手前にある銘柄を買うか、あるいは抜けたのを確認してから買うか、それとも支持線でサポートされて反転の兆しのあるものを買うか、と考えると、答えは自ずから出てきます。抵抗線の手前は、買うところというより、売るべきところです。したがって、（３）の「確実に利益を上げるために、今のうちに利食いする」が正解です。

この選択肢の解答文を見る限り、（１）の「今は保有したまま、抵抗線を抜けたことを確認してから買い増す」では、上げることだけを想定していて、ここから下げた場合の用意がありません。株価は常に上下動を繰り返し、大小の「ゆらぎ」も伴いますので、株価が上げた場合だけでなく、下げた場合の対処の仕方も考えておく必要があります。そうしないと対処が遅れ、対処の遅れが思わぬ評価損の拡大につながり、大き過ぎる評価損が損切りをためらわせることにもなります。特に、前の高値安値、抵抗線や支持線の近くといったクリティカルな場所では、常に「備え」ておく必要があるのです。

（２）の「抵抗線付近での反落の兆しはよくあることなので、下げトレンドに
なれば損切ることを前提に、今のうちに買い増す」には、論理の矛盾というか、心理的な落し穴のようなものが感じられます。抵抗線付近に限らず、どの地点でも反落し始めることはあります。下げた場合の対処の仕方は常に考えておく必要がありますが、上げる確率の方が高いと思うから買うのです。下げるとは思うが、上げた場合に備えて買うという場合には、少量だけを買っておきます。

今回の問題では保有していますから、上への備えはすでにあります。一方で、ここで買い増して下げた場合には、ポジションが大きくなっているので、あっという間に評価益が減少します。そうなると、半ば想定している下げでもあり、なかなか小さな利益では確定できなくなるのです。起きがちなのは、結局損失を出して終わるか、また抵抗線付近にまで回復した時点で利食ってしまうことです。その後、今度は抵抗線を抜けて上がり続けるようなことも起ります。

同じような展開が（３）のように、いったん利食ってから起きたような場合には、押し目でもう一度買うことができ、再び抵抗線に回復した時点では、実現益を背景にもう一度利食っても良し、抜けるのを待って見ても良しという余裕ができています。

損切りは儲けるためのコストです。しかし、実際に儲けるためには、どこかで利食わねばなりません。キャピタル・ゲイン狙いのトレーディングでは、キャピタル・ゲインの値幅も重要ですが、要した時間も重要です。早く儲けることができれば、増えた資金を再投資に使えるからです。

戦いに例えると、道路を整備して、主力部隊が東西南北、電光石火の如く動き回れる軍が強いのです。長くポジションを持つことは、ある戦線に釘付けされ機動力を奪われることを意味します。買ったものを売れば、そこからの動きは自由です。利食いの場合には戦力が大きくなって帰ってきます。今回の問題では、あなた自身が「抵抗線付近では反落の兆しも見られ」ると言ってるのですから、素直に利食ってしまいましょう。