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あなたは余裕資金で株式投資をしてみようと考えていますが、日中は会社勤めのためなかなか時間が取れません。しかし、証券会社が値動きのあるオークション形式の夜間市場を開設していることを知りました。初心者がこうした夜間取引に挑戦してもよいでしょうか。

正解は・・・
(1)オークション形式の夜間取引はまだまだ参加者も少なく、初心者には難しいことも多いので、株式投資に慣れるまでは避けておいた方がよい

投資で最も留意しなければならないにも関わらず、しばしば軽く扱われているのが流動性です。サブプライム関連商品にも十分な流動性があったなら、大手の金融機関が傾くほどの損失には至りませんでした。十分な流動性とは、買ったものを次の瞬間に売りに出しても、ほとんど損失が出ないほど、売り手も買い手も揃っている厚い市場、商品を意味します。


いかに余裕資金だといっても、株式投資で損をしない為には、できるだけ良い条件を整えるべきです。夜間取引市場は流動性に欠けますので、正解は(1)の「オークション形式の夜間取引はまだまだ参加者も少なく、初心者には難しいことも多いので、株式投資に慣れるまでは避けておいた方がよい」となります。


売り手や買い手が揃っている厚い市場や商品でも、流動性が不足することがあります。参加者の多くが均一的で、同じような資金を扱い、同じような発想をしている場合です。サブプライム関連商品では、商品そのものに流動性が欠如していた上に、同じような金融機関がすべて買い手にまわっていました。このような場合には、自分が売りたい時は、皆が売りたい時になりますので、いままであるように思えた流動性が、潮が引くようになくなってしまいます。


経済指標や決算の発表があった直後も同じです。多くの人が同じ方向に売買しようとしますので、一時的に流動性が欠如します。その時、様々な参加者がいると違う発想で参入する人が出てきますので、相場の極度な行き過ぎを抑えることができるのです。また、発表直後には数値だけを見て、パニック的な動きをしたり、あえてそれを誘導しようとする人も出ますので、国によっては主な経済指標の発表を市場が開く前に行ったり、市場の引け後に決算の発表を行ったりして、数値がより正しく消化される時間を与えることも行っています。


これが夜間取引市場だと、大手の機関投資家などは参加せず、日中は他の仕事をしているサラリーマン投資家と、そういった人をカモにしようとする人が大半を占めるようになります。そこで証券取引所大引け後の午後4時頃に決算発表などがあった銘柄は、誰も何もできないままに夜間取引市場にさらされますので、多くの参加者がいればあり得ないような価格で売買されることになります。


また、夜間取引市場が開いている時間には、ヨーロッパ市場やアメリカ市場が開いています。外為市場も東京時間より値動きの激しいロンドン時間と重なります。つまり、日本株のトレンドとはあまり関係のない、海外市場の揺らぎに巻き込まれる可能性が高まるのです。仮にそういった市場でうまく立ち回ることができても、多くの参加者がいる市場で通用する技術とは別物ですので、あまり汎用性がありません。


夜間取引市場のうたい文句は、サラリーマン投資家のように日中の相場が見られない人に取引機会を提供することと、大引け後から翌日の寄りまでの間に取引機会を提供することで、その時間帯の価格変動に対するヘッジができることです。しかし、日中の相場が見られないような人に流動性のない市場を提供することは、まともな業者として無責任だと言えますし、余計な揺らぎに惑わされていてはトレンドを取ることはできません。ましてやその揺らぎが、参加者やデータが少なく雑音だけが多いために、通常の市場ではあり得ないほどの揺らぎであっては、金融市場というより、純粋なギャンブルに近いでしょう。


私は、東京市場では日本株だけでなく、米国債などの外債取引を、ニューヨーク市場では米国債やアメリカ株取引を、外為取引はロンドンを含む3市場で経験しましたが、24時間市場を追いかけることは、人間できません。また、追いかけたところで、リスクが減りリターンが増えるとも言えません。それどころか、騙しや揺らぎに振り回されないためには、主要市場で集中力を高めることが一番だと思っています。


今回の問題では、(1)の「株式投資に慣れるまでは避けておいた方がよい」だけが正解とはなりますが、株式投資に慣れても、流動性がなく雑音の多い夜間取引に参入する積極的な理由が見いだせません。


会社勤めのために、日中に株式投資の時間が取れない人は、夜間にチャートなどをチェックしておき、寄り前に指値注文を入れて出社するのがいいと思います。夜間取引市場で売買していれば儲かったのにと思うこともあるかと思いますが、均せば、つまらない価格で売買しなくて良かったと思える方が多いと思います。どうしても、日中の動きを見たければ、1日ぐらい有給休暇を取って、株価と睨めっこしてみてはどうですか?

見事正解だったあなたは・・・

油断は禁物、ほかのカテゴリの問題にも挑戦してさらにセンスを磨く努力を怠らないようにしましょう。

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プロフィール

【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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