今週の解答
[個別銘柄に関する問題]
あなたが保有している銘柄は、購入直後に大きく値を下げました。そのまま損切りラインを抜けていましたが、売りそびれている内にいったん上昇し、再度前回の安値付近まで下落してしまいました。このような場合、どうするのが最もよいでしょうか。
(3)しばらくは様子を見て、さらに下がれば手仕舞い、反転すれば買い増す
テクニカル指標は、相場の「今の状態」を、指標が表したい売られ過ぎや買いサインなどといった指示に応じて提示します。つまり、今日買われ過ぎと出ていても、明日も買われ過ぎかどうかは分かりせん。あなたの銘柄は、いったんサポートとなっていた損切りラインを抜けたものの、反発したので、今の損切りラインは直近の安値に変わっています。直近の安値を抜けていないのに、ここで中途半端に損切りすることはありません。正解は(3)の「しばらくは様子を見て、さらに下がれば手仕舞い、反転すれば買い増す」となります。
仮に、読者の中で「正解なし」とした人がいれば、その人も正解です。何故だか分かりますか?私は、「いかなる理由があるにせよ、ナンピン買いは駄目だ」と教えているからです。(3)で反転し買い増せば、ナンピンとなりますので、教科書通りに言えば、この問題に正解はありません。
(1)の「『二番底は黙って買え』の格言もある通り、ここから大きく上昇する可能性が高いので、利を伸ばすため買い増す」のは、反転の確認もできていないのに、ナンピンするわけですから、不正解です。
(2)の「二番底からの反転を期待するよりも、目の前の値動きに素直に反応すべきなので、手仕舞う」のでは、サポートの手前で損切ってしまうことになりますので、これも不正解です。
教科書通りでは正解はないのですが、相場は生きています。生きているものを相手に、原則論を振りかざすことはできません。私たちが相場に関わるのは、儲けたいからです。リスク管理は長い目で見て、最終的な利益を目指すために行います。損切りは次の戦いのための戦力を温存するための、苦渋の選択なのです。損切りは必要だと説いている私も、「次」のない人生最後の戦いならば、全資産を注ぎ込んで、死ぬか生きるか、決して損切りません。
株式に限らず、トレーディングで投資物件を買った時は、ここまで下げたら損切るというレベルをあらかじめ決めておき、守ることが肝要です。とはいえ、実際の相場では、今回の問題のように躊躇しているうちに反発してしまったり、また、その下の重要なサポートまで下げて止まったりすることがあります。それだけでなく、買い手がまったくいなかったり、機械の故障やその他の事情で売ることができないこともあります。
安値でサポートされるなどして、少なくとも当面は下値不安が減少している時に、当初の損切りレベルを下回っているからと、わざわざ損失を確定することはありません。また、速やかな損切りがうまく行かなかったために、当初の想定をはるかに超える損失を確定してしてしまうと、次の戦いが思うようにできなくなってしまいます。もちろん、何がなんでも損切りしたり、他の方法でヘッジするなどする必要がある場合もありますが、静観を決め込んだ方が良い場合もしばしばあります。この辺りは、臨機応変に対処するしかないのです。
今回の場合は、当初の損切りラインでの損切りを守るべきでした。そうすれば反発を取れたかもしれないのです。とはいえ、今更、ああすれば良かったなどと言っても始まりません。ここは、新しい損切りラインである直近の安値が抜けたら損切ると、切り替えるしかありません。ここで、資金に余裕があるなら、一度だけのナンピンなら許容の範囲です。損切りラインに近いので、もしもの場合でも損失が大幅に増えるわけでもないからです。上げれば、損失を収益に変える可能性も高まります。もちろん、言うまでもないことですが、損切りラインを抜けた時には、何がなんでもすべて売り払うようにします。
そういったことを踏まえて、正解は(3)の「しばらくは様子を見て、さらに下がれば手仕舞い、反転すれば買い増す」になります。
書籍
プロフィール
- 【監修】矢口新(やぐち・あらた)
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1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。
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